決別後の再開 2

「おい! なに仕事中に寝てんだ!」


 働き始めてからは、疲労感がないことなんて一度も無かった。それでも、今まで仕事中にボーとすることはあっても、本当に、首が下に下がることなんて一度も無かった。


「あ、すみません」

 

 いくらデスク作業だといっても、仕事中に寝るなんて自分でも驚きだ。


「お前、仕事舐めてんと給料減らすぞ!」


 俺の上司が怒っているなんて、いつものことだ。しかし、例え自分が対象になっていなくても、その怒鳴り声を聞くことは恐怖だった。

 だけど、それが自分に向けられているにも関わらず、今は全く気にもならない。そう、俺の頭の中には昨日やった、ゲームのことで頭がいっぱいなのだ。

 早く帰ってまた、やりたい。

 何かをやるために、もっと時間が欲しいと思ったのはいつぶりだろうか?

 人生の、やりがいなんていうほど、大層なものでは無いが、毎日の楽しみが出来たことが自体がとても嬉しい。それだけで、心が軽くなった気分だ。


 やっぱり俺はゲームが好きなんだな。


 昨日はアタッカーしか使わなかったから、今日は違うジョブも使いたいな。他の武器はどんなのがあるんだろうか? こんな戦略も使えるかも。


 そんなことを考えているだけで、もう就業時間だ。今日は、ほとんど仕事に手が付かなかったと、いっても語弊が無いほど進捗がなかった。

 本来だったら、少なくとも後2.3時間は残業するのが、今日は意を決して、帰ることにする。

 荷物をまとめ、立ち上がる。


「お疲れ様でした。お先に失礼します」


 そう言って、席を後にするが、思いのほか何も言われず会社を出ることが出来た。

 きっと、呼び止められるだろうと思っていたのだが、予想外だった。下手をすれば、怒鳴られるくらいの覚悟はしていた。

 駅に着くといつもより人が多く、帰りの電車で満員は久しぶりに体験した。

 ぎゅうぎゅうの電車に乗り込み、吊り革に捕まりながら、動画投稿サイトで、あのゲームを検索してみた。話題のゲームだけあって、色んな人が動画を上げている。さらにライブ配信をしている人も多くて、改めて人気の高さを実感した。

 いくつかの、動画や配信を覗いてみて分かったが、これはPC限定ではなく各プラットフォームでできるようで、それも人気の高さを後押ししているのだと分かった。

 そうこう、するうちに最寄り駅まで着いた。

 早く帰ってゲームをやりたいと、急ぎ足で家に向う。

 その最中にふと、夕飯のことが頭によぎった。いつもなら、残業の途中に、ビルの下の階に入っているコンビニでおにぎりを買うのだが、今日は、何も食べていない。

 そこで、来た道を少し戻り、一回通り過ぎたカレー屋に入る。大盛りを一つ注文すると1分少々で品物出てきた。持ち帰りで並んでいる人は、いなかったが、店内には多くのお客さんがいた。それにも関わらず、こんなにも早く出てくるなんて、改めてチェーン店の凄さを知る。

 カレーが入ったビニールを下げ、また急ぎ足で家に向かう。とにかく時間が惜しい、今の俺にはぴったりな店だ。






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