何もない、今の自分 2
昔からゲームが好きで、「楽しい」「勝ちたい」その思いだけで、ゲームをやってきた。
俺がやっていることを、親は理解してくれてはいたが、時々心配の声をかけられていた。
だから、それだけに没頭するという訳にはいかなかったのだ。せっかく親からしたら、あまり良い印象ではないゲームを受け入れてくれるのだから、せめて他のことで心配はかけたくなかったからだ。
PVPのゲームは、いくら時間があっても足りなかった。そこそこうまい自身はあったが上には上がいる世界だったから、そこを目指すのは本当に楽しかった。
俺がプロゲーマーごっこしているときは、eスポーツって言葉が使われ前のことだった。
規定なんてものもは、合ってないようなものだったし、皆がアマチュアだった。
だから、自身でプロを名乗るだけで、プロになれる、そんな訳のわからない現状だった。
それにあやかった人間が俺だ。
そんなプロフェッショナルを、名乗れるほどでない人間ですら、プロを名乗るようになっている現状を無法地帯と呼ぶ人もいた。
まさにその通りで、その時業界のことを考えていた人間なんて一人もいなかった。
そして、そんな馬鹿なやつを騙して稼ごうとする、悪い大人の、標的にされるのなんて、当たり前のことだった。
何事も5年もたてばだいぶ変わるもので、何とかeスポーツも消費仕切られず、盛り上がりを魅せている。
ただ、ここが頭打ちだろうなと思う。
どうしても長年しみ込んだ概念というものはそうそう、消えるものでは無いらしい。
ゲームは遊び。子どもがやるもので、いい大人が本気で取り組むなんて、馬鹿らしいし、子どもがゲームばかりやっていたら馬鹿になる。まだまだ、そういうものの言われ方を、されて当たり前の世の中だ。
様々なゲームがあるなかで、どれも戦略性も、個人技もあって、個の力もチームの力も試されるゲームというものは、かなり競技制の高いものだと思っている。
でもいまだに地位は低い。
だから、ゲームなんて頑張ったって意味がない、という声が出てきてしまうのだ。ほとんどの物に対して言えることなのに。
どんなスポーツだって、それで食べていける人や、学生時代に結果を出せる人なんて、氷山の一角に過ぎない。だけど、それは尊いもので、努力の大切さや、頑張った経験はいつか役に立つとか、そんな前向きな捉えられ方をする。おかしな話じゃないだろうか。
同じ努力や苦悩を味わいながらも、その対象が違うだけで、こうも周りの目が違うのだから。
だが、それは仕方がないことだと思う。
だって、その競技をやっている人だって、ゲームのことを馬鹿にしているのだから。
たかがゲーム。ゲームでマジになるなよ。所詮遊び。僕が本気で取り組んでいた時にチームメイトから言われたセリフだった。これを聞いたときの一生ゲームは遊びの域を出られないことを痛感した。周りには仕事だ、とカッコつけて言う割にはと、いつも思っていた。それに対して苦言を呈していたが、そんなことをしても、何にも意味もないことは分かり切っていた。だけど、文句を言わなければ、収まりきらなかったのだ。
ただこれだけは思う。そんな馬鹿にされているゲームでも、好きという武器で戦っている人には絶対に勝てない。
なんでもそうだ。
努力することは簡単なことではない。多くの物を、時間を犠牲にしてその世界のトップに立っている。
俺は努力とは釜戸だと思っている。努力は有限で何かを燃やし続けないと、火は消えてしまう。それが金や名声目当てだとすぐに燃え尽きるし、そこまでの大きな火をたくことはできない。しかし楽しい、好きという燃料を持っている人間は、どこまでも大きく、熱い火になる。
それが、苦しい世界で、好きを武器に戦っている人に勝てない理由だ。
毎日毎日誰に強制させられるわけでもなく、モニターと向かい合う。AIM練習、戦略、チームワーク、反省会などをひたすら繰り返す。完璧な正解が存在しない世界で完璧を追い求めて戦っている。
そういう世界なのだ。
勝負事の世界において1位と2位の差は計り知れないほど大きい。自分自身でその1位以外の順位に価値をつけるのであれば話は違うが、1位以外に実質的な価値は無い。
皆にはわかるだろうか?
何よりも好きだったものが、嫌いになることの恐怖。一番そばにあってほしいと思っていた物を、、無意識に遠ざけていたことに気付いた絶望を。なにが悪いか分からないのに、自分への嫌悪感はどんどん増えていく。いつしか、それが全部自分の責任に変わっていくことを。
大好きだったものから逃げるために、大嫌いなものを言い訳にして逃げるあの苦しみを。
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