第61日目 「覚えてろよぉぉぉ!」

体育祭が終わった翌週から、担任の深井先生以外の先生たちから嫌われ始めた。

何かっていうと、


「あー、このクラスは、本当に出来ない生徒ばかりですね。人の言う通りにしか動けない人間は、将来仕事のできない社会人になりますよ。あなたたち、脳ミソあるんですか? 」



と古典の先生が言ったかと思えば、英語Gの先生からは、


「発音だけ良くても、外国でしか通用しないよ。日本では、受験英語の文法ができないとどこの大学にも合格しないんだ。それが、現実」



と発音が良かったとしても貶され、音楽の先生に関しては、



「あー、もー。このクラスったら性格が悪いから、歌声まで悪くなっちゃってるわ! もう、聞いてらんない」



と耳を塞ぎたくなる始末。音楽の先生、別名“オネエ”先生は、男女問わず優しいから人気あったのにな。こっちが、耳を塞ぎたくなるよ。

ここまであからさまに嫌われだすと、クラスのみんながザワついてくる。さすがにこの状況に気づいた生徒が、ボソッと呟いた。



「俺たちさ、他の先生たちに嫌われてね? これって、体育祭が……あっ! 」



その時、みんなが息を飲んだ。その生徒の後ろに、深井先生が静かに立っていた。



「体育祭が、どうしました? どうして他の先生たちに、嫌われているんですか? 」



首を振るしかできなかった生徒は、机をジッと

見つめている。

クラスが、水をうったように静まりかえった。そりゃ、そうか。原因の本人がいるんだもんね。

廊下をコツコツと早足で歩いてくる音が聞こえたかと思うと、突然教室の扉がガラッと開いた。そこに立っていたのは、隣のクラスの“正田先生”だ。




「おい! お前ら! 体育祭でダントツ優勝したからって、いい気になるなよ! 次は、正々堂々と勝ってみろ!

来年、 覚えてろよぉぉぉ! 」



呆然としているクラスのみんなと深井先生を後に、正田先生は扉をビシャと閉めて足早に去って行った。今日の日記には、




「今日、正田先生が私のクラスへ来ました。びっくりしました。来年はクラスのメンバーが変わるので、正田先生のクラスが体育祭で優勝するかもしれませんね。」



『そうですね。でも、僕のクラスは負けませんよ。』




2人とも、負けず嫌いだな。なんだか、子どものケンカみたいだ。子どものわたしが言うのもなんだけど。



「体育祭、優勝したんだろ? 秘密練習の甲斐あって、良かったよな。先生たちは、そんなに優勝したいもんなのか? 俺なんか、別に負けてもどーでもいーけどなぁ」


「負けてもいいとか、子どもに言わないでよね! 」



と、お母さんから一喝。 お父さんは、いつも負けっぱなしだな。











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