第8話

 状況が変わったのはその翌週のこと。

 昼休み、何か改まった様子の絢に呼び出されたのだ。俺と絢はクラスが違うのもあって、昼は一緒になることは少ない。放課後になれば毎日のように顔を合わせるのに、わざわざ呼び出すあたり何かあるんだろうとは思ったが。

「あの…………さ」

「何だよ?」


 何事か言いにくそうにしている絢に先を促すが、それでもみのるは中々口を開かない。

 なんだか、絢が初めてキャンセラーを使おうと言い出した時と似た雰囲気だ。

「もうやめない?キャンセラー使うの」

 ぽつりと呟いた。

 唐突な言葉ではあったが、心のどこかでそう言われるのを予期していたような気もする。


 彼女が何故この結論に至ったのか、確かなことはわからない。でも、想像することは出来る。

 俺と同じように、自分の感覚の変化に翻弄されているのだろう。

 俺と同じように見た目が原因で心変わりをしそうになって、そんな自分に驚き戸惑っているか、あるいは俺がそうなることを心配している。そんなところだろう。

「…………わかった、そうしよう」

 俺は絢の目を正面から見据え、そう答えた。俺の返事に彼女はほっとした顔をする。

「ほんとゴメンね、私の方が言い出したのに。なんか怖くなっちゃって」

「いいよ。同意したのは俺だし、怖くなったって気持ちも分かるから」

 その後もずっと恐縮した様子だった絢を宥めた後、俺は絢と別れた。

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