2020年4月13日(月)-2
「なんで濃厚接触者は四人いるのに、検査するのは二人だけなんだよぉおお」
「うーん、その陽性になった取引先のひとと会話したのが、おれとそのもう一人だからじゃないかなぁ。知らんけど」
「マスクつけてたよね!? 会話のときにちゃんとマスクつけてたよね!?」
「つけてたし、距離もあったから大丈夫だと思うけど~」
まったくの無症状でここまできたら、わたしもそこまで心配しない。問題は土曜の夜から夫の体調が悪くて、微熱も続いたということだ。
夫自身は「先月まで出張とかもあって忙しかったから疲れが出ただけだと思うけど」というスタンスだが、こっちは『もし陽性だったら』という最悪の事態を考えて冷や汗が止まらない。
「家庭内ではまずは隔離になるけど、そうなると寝室は隔離部屋になるから寝るところとかも居間に作らなきゃいけないよね? 買い物できないか……ネット宅配の登録、今のうちにしておかないと……。げっ、この辺だと隣の市のネオンしか対応してねぇ」
あそこまでは直線距離でも三十分以上かかるっていうのに。
「消毒液はもちろんだけどマスクもないよぉ。お義母さんが送ってくれたのは布マスクだから……あああもう、せめて夫氏だけでも不織布のマスクしてほしいのにっ。女性用はまだ一箱あるけど男性用は一つもない!」
「おれ普段マスクしない派だもんね~」
そうなんだよ。花粉症の鼻炎なんか、わたしよりもひどいくせに、かたくなに薬も飲もうとしないし、マスクもつけようともしない。それが我が夫の通年スタイル。アホめ。
「それに感染してたら一家隔離はもちろんだけど、小学校と幼稚園にも連絡しなきゃいけないじゃん……! 我が家がコロナ陽性者第一号になっちゃうわけじゃんっ。針のむしろだよ。感染者への風当たりが今マジで強すぎてやばいのに」
感染した人間の家にいやがらせの投書がされたり、落書きされたり、あげくの果てに村八分に遭って、引っ越しせざるを得ない状況も出てきているとか……。
「かといって学校や園に連絡せずに乗り切ろうなんて恐ろしいこと、もっとできないし……! あああああ、もう、どうすればいいのよぉ~! 怖いよぉおお!」
「あ、会社から電話きたわ。もしもし?」
嘆く妻を尻目に、さっさと電話に出て会社から指示を受ける夫。
ちっ、冷静かよ。きらいじゃない。
「PCR検査の用意ができたから、11時に行ってくれってさ~」
「ああ、それはよかった、今日中に検査できるのはありがたい。検査の場所は?」
「日赤~」
市内にあって良かった赤十字病院。やがて病院のほうからも連絡があって、夫は車の車種と色、ナンバーを伝えていた。
「看護師さんが駐車場にやってきて、患者は車に乗ったままの状態で検査してくれるみたい」
「ドライブスルー方式……じゃないけど、そういう感じのやつか。確かにそのほうが病院に持ち込む可能性が減っていいよね。病院クラスターも叩かれるもんなぁ……」
ということで夫は11時前に車をぶいーんと飛ばして出かけていった。どうか陽性ではありませんように……!
とりあえず今のうちのドアノブとか噴いておくか。気休めにしかならないけど、なにかしていないと落ち着かない。
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