2022年4月14日(火)

 検査に出かけた夫は十五分後には帰ってきた。


「どどどど、どうだったよ、痛かったのかよ、どうなんだよ」

「鼻の奥に長い綿棒をぶっ差すだけだよ~。インフルエンザと変わらないよ」


 とケロッとした顔で言う夫。マジかよ、わたしあのインフルの検査、毎度引き攣った声が出るほど痛くて苦手なんだが……。

 とにかく結果が出るまで外出もできないし、家族四人、狭い家の中でひたすら過ごす。

 翌日もそんな感じでぐだぐだだ。大型連休四日目くらいのだるさを再現している感じになってきた。


 そして運命の14日の14時。

 夫のスマホが鳴り、検査結果が伝えられた。


「陰性でした」

「ぃやった――!! よかったよかった! 中傷のビラ入れも、幼稚園と小学校からの非難の目も、挙げ句の引っ越しも全部回避できたぞ――!!」

「どこまで最悪の妄想してたの?」


 軽く引き気味の夫は「陰性出たから会社行くわ~」と、その時間から出社した。

 わたしも子供たちを連れてウメキヨとスーパーへ。

 先週の土曜日以来の買い物だ。夫が熱を出したので念のためわたしたちも自宅に籠もっていたのだが、おかげで食料がやばやばの状態だったので、本当に助かった。


「これでもし陽性だったら買い物もできないから、ひたすらネットスーパーの宅配を待つしか道がなかったのか……そう考えると怖いな」


 買い占めする気持ちはないけれど、日持ちするパスタとかうどんとか、缶詰とか、心なしかいつもより多めに買ってしまう。


「げっ。ハンドソープもかなりの値上げになってない?」


 手洗いをしっかりするようになったおかげでハンドソープが切れるのが早いのだが、詰め替え用の値段が、記憶にあるより明らかに値上がりしている。

 売り切れのマスクと消毒液に続いて、石けんにまで値上がりの波が押し寄せてきたか。


 とにかく久々にシャバの空気を吸って(マスク越しとは言え)少しすっきりした。

 おかげで脳がピツァーンと起動したらしく、まぁ~プロットが進む、進む。


「そして書き終わった――! やったぁああああ! レンタルさんありがとおおおおおおおおお!」


 感謝する相手が陰性だった夫でも、適当に過ごしていた子供たちでも、PCR検査に早々と繋げてくれた会社でも保健所でもなく、レンタルなんもしない人って。


「こまけぇことはいいんだよっ。とはいえ休校・休園が20日までなわけだから、原稿は休み明けを待って一気にがんばる感じになるかなぁ。まぁわたしなら余裕っしょ♪」


 ――いにしえより、ひとはこれを『フラグ』と呼びならわすのである。

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