2020年4月10日(金)-2

 準備が終わる頃にはちらほらと外にいた保護者たちも中に入ってきた。補助の先生もそちらに行ってしまったので、娘とほがらかにおしゃべり。


「入学式が楽しみだね~。知っているお友達が多いクラスだといいね? 担任の先生も優しそうな先生でよかったね」

「うん」


 娘は笑顔を浮かべつつも緊張気味。式の前にトイレを済ませておいてとも黒板に書いてあったので、混み出す前に行ってこようとトイレに二人で向かったのだが。


「ママ~……ここすごい寒いよぉ」

「本当だ、北側の窓が全開になってら。これもコロナ対策だよなぁ……」


 とは思うのだが本当に寒い。春でこれなら冬は? もっと寒いよね? 用を足しながらお腹が冷えちゃって今度は下痢に見舞われるとか普通にありそう……。

 おまけにトイレは個室4個のうち1個が和式! 和式トイレの練習もしておいてって一日入学で言われた気がするが、結局コロナになっちゃって、和式トイレが置いてあるようなネオンやアビタに行くことができなかったのだ。公園のトイレももちろん寒い・暗い・汚いと言っていやがるし。


 だが小学校、洋式トイレにしてもめちゃくちゃ古いし、流すときの音がゴォオオオオって感じで、めちゃくちゃ怖い。

 むぅ、開校100年くらいだからな。校舎の建て直しが最後にあったのも何十年も前だろうし、トイレだけきれいってわけにもいかなかったか。


「流すのすごい怖いぃいい! やだああああ!」

「そうは言っても、これから一年はこのトイレのお世話になる感じなのよ……」


 まさかトイレが怖いという新たな不安要素が出てくるとは。

 ……そういえば○子は幼稚園に入園してすぐのときも、トイレが怖くて使えないと排尿を我慢した結果、膀胱炎になって医者に行く羽目になったんだっけ。入園前に取れていたおむつをまたしていくことになったと、ありありと思い出されてしまう。


(外出先でも、音が大きいトイレや勝手に流れるトイレはめっちゃ怖がるし、音姫もすごくいやがるし。こういうのにすごく過敏な体質なんだろうなぁ。昔から繊細さはピカイチだし)


 なんとも生活しづらそうな過敏さだ。大きい音とかさわがしいのもきらいだし。

 ……あれ? 学校生活って基本的にそういう毎日の連続じゃね?


(はじまっちゃえばなんとか慣れると思うけど、今日が終わったら普通にしばらく休校だし)


 いったいいつになったら、その『慣れた』と言える時期がやってくるのか。

 前途多難すぎる。

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