2020年3月16日(月)-7
「うお~……外、寒っ」
「風がちょっと出てきた感じだね……」
卒園児たちがそれぞれの教室で最後のホームルーム的なことをしている中、保護者は微妙に冷たい風吹く園庭で、大荷物を持たされ待たされる……なんて拷問だ。
一方の息子はようやく外に出られたので、勝手に園庭の遊具で遊んでいた。
「でもまぁ感動的な式ではあったね。寒かったけど」
「本当に寒かった。窓を開けっぱなしでやるとああなっちゃうんだね」
感動的な式が進行するあいだも、背後の扉が開いていたせいで風がひゅ~っと足下を抜けていきめちゃくちゃ寒かったのだ。
くぅ、なぜ三年前の入園式に際し、わたしはワンピースタイプのフォーマルを買ってしまったのだろう。次に買うときは絶対にパンツタイプにしてやる。
(せめて入学式はこの格好でも寒くない気温でありますように……)※フラグ
そうこうしているうちに園児と先生が教室からぞろぞろ出てきた。そうしてクラスごとに分かれて並び、役員さんの誘導で、担任の先生との家族写真を順番に取っていくことになった。
「では並んだ順で記念撮影お願いします。お渡しした荷物の中に、星のついた杖みたいなのがありますので、それを持ってお写真を取る感じでお願いします」
(このステッキ、なんのアイテムだろうと思っていたがそういう仕様のものだったのか)
こういったものまで用意しないといけないとは。役員さんには本当に頭が下がる。
そうして我が家の順番になり、カメラマン役の先生にスマホを渡して、家族でパシャッと一枚取ってもらった。
「○子ちゃんおめでとう~! また幼稚園に遊びにきて~! ランドセル背負った姿を先生すっごく見たいからさ、絶対に見せにきてね!」
と言ってくる先生に微妙な笑顔でうなずく娘。なんとなく先生の勢いに飲まれている感あるな。感動が少ないのは母親譲りか。
そしてほぼ全員が撮り終わったあと、娘の担任ではないほうの年長クラスの先生にも声をかけて、一緒に写真を撮ってもらった。
そちらの先生は今年度で結婚のため退職されるということで、合間に涙を拭いつつという感じだ。
この幼稚園は年長時の秋にマーチングの発表会があって、カラーガード(いわゆる旗)を担当した娘は、この先生のもとで旗振りを教えてもらった。
「○子ちゃん、卒園おめでとう。マーチングのときはビシバシ言っちゃってごめんね。でも○子ちゃんがたくさん大きな声を出してくれたから先生嬉しかったよ」
と言われ、まんざらでもなさそうな娘。マーチングのときは本当にがんばっていたもんね。
ということでほのぼのと卒園式は終わり、三々五々それぞれ帰って行った。我々もそろそろ帰ろう。
……というところで、風がびゅごおおおおおおっと横から吹き付けてきた。
「なにこれ、北風じゃん。三月じゃないじゃん。体感二月の風じゃん」
子供たちがきゃっきゃっとはしゃぎながら小走りで行く中、めちゃくちゃ寒い強風に打たれ、慣れないヒールや革靴に足を痛め、ずっしりした大荷物を稼ぐ親のほうは、モアイ像みたいな顔でずしんずしんと帰路についたのだった……。
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