2020年3月12日(木)-3
とにもかくにも娘のフォーマルを買わなければ。
閑散としている売り場だが、ちゃんとランドセルが並んだ箇所や、子供用のスーツやワンピースが並ぶ売り場は確保されていた。
学用品などの棚を子供たちが物色しているあいだ、わたしは母と「このあたりのワンピースがいいかなぁ」とそれらしい娘の服を探す。
そしていくつか候補が挙がったところで娘に見せに行った。
「○子ちゃん、卒園式と入学式に着る服なんだけどさ。こういうチェックのスカートのワンピースはどう? 上は黒のジャケットでカッコ可愛いんだけど」
「やだ」
「こっちのアイドルみたいなプリーツスカートのやつは?」
「やだ」
「制服っぽい、こういう感じのリボンが襟につくのは?」
「絶っ対やだ」
――チィッ! こだわりが多い娘め。どれも可愛いし値段もそこそこのやつ(3000円くらい)なんだから、これで妥協しろや。
とはいえことごとく玉砕したので、お値段的にワンランクアップのところを再び物色。
すると、娘がこの頃はまっている、ピンク色がかった薄紫のワンピースがあった。スカート部分が小花柄で可愛いし、同じ色のボレロがつく。
「○子ちゃん、コレめっちゃ似合うと思うよ。ほら、○子ちゃんの好きな薄紫の色だし」
おもちゃ売り場で弟と遊んでいた○子は「薄紫色」の言葉に反応して振り返った。そして。
「うん、これならいいよ」
と一目見ただけで決定した。いざ決めるとなるとめちゃくちゃ早いし迷いがない、それが我が娘○子。
ということで無事にレジに持って行ってお会計。靴下も買おうか悩んだが、当日が寒いことを考え、12月の発表会で使った白タイツを履かせることにして見送った。
靴も、当日は園まで歩いて行く予定なので、無理せずいつもの運動靴で行かせることにする。ということで買うのは服のみだ。
「お姉ちゃん、背が大きいねぇ。今度入学なの? あらぁ、もう三年生くらいかと思っちゃったわ!」
レジにはちゃんと店員さんがいた。母と同じか少し年下くらいの年代の二人の女性店員だ。持って行った品物を見て「ご卒園ですか?」とにこにこ声をかけられた。
「おめでとうございます。卒園式はできるんですか?」
「今のところできるようになっていて。親はマスク必須で、窓も開けっぱなしでやるみたいですけど」
「そうですか~。大変ですね。当日はせめてお天気がいいといいですね」
店員さんたちは終始にこにこしながら、ワンピースを丁寧にたたんで袋詰めし、わざわざレジ外に出て見送ってくれた。
あいかわらずゴーストタウンのネオンを歩き(もうすぐお昼なのにフードコートも閑散としている)、家に帰る前にハンバーガーでお昼にした。
世の中はコロナでなんとなく暗くなっちゃっているけど、とにかく卒園の用意は調った。
あとは感染者など出ずに、無事に式ができることを祈るばかりである。
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