2020年3月12日(木)-2

 とにかく駐車場に入ってネオンの中へ。

 入り口に消毒液が設置されるのもデフォになってきたなぁと思いつつ、子供たちは足踏みペダル式の消毒が上手くできないので、一人一人前に立たせてわたしがペダルを踏んで液を出すという方式だ。

 たまに消毒液が子供たちの手と別方向に飛んで、袖に飛んだり顔に跳ねたりするのが難点である。


「ぎゃー、ママ、顔にかかったぁ!」

「ごめん、ごめん。これ大人の高さに設置してあるから子供は危険よねぇ。なるべく目を閉じていなね」


 文句を言う娘に謝りつつ中に入る。たまに入ってくる客はみんな一階奥のスーパーのほうに流れていくので、エスカレーターを使って二階へ行くひとはほとんどいない。

 そのせいか二階の閑散とした感じがあまりに寒々しくて、ゴーストタウン感が半端なかった。


「客どころか店員さんすら行き交っていないんだけど……」

「わたしもここのネオンはスーパーしか行かないから、二階にきたの久しぶりよ。でもここまでひとがいないとはねぇ」


 地元民の母も「うわぁ」という顔をしている。


 田舎によくある、田んぼのど真ん中に立つでかでかとしたネオンモールと違って、ジャスk時代からあるこの建物は狭いのだ。

 二階建ての、昔の百貨店もどきという感じの規模なので、この辺の住民も専門店に行きたいなと思ったら、ここではなく隣の市の新しいネオンに行くほど。

 そのせいかあまりにひとがいなくて、ジャスkからネオンへと移り変わったここもいよいよ潰れるんじゃないかという不安が否応なく胸をよぎった。


「うわ、ゲーセンやってないじゃん」


 子供服売り場に到達する前に見えたゲームセンターは遊具はもちろん天井の電気も落とされ、入り口にネットが張られて入れないようにされていた。ネットには所々『新型ウイルス感染予防のため休園します』という張り紙が掲げられている。

 200円で動くチョコパンマンの遊具も、小さい子が遊べるボールプールも、すべてがネットに覆われて、店員すら配置されていなかった。


「ゴーストタウンだわぁ……」


 怖々しながらその場を離れ、子供服売り場へ。

 こうも人がいなくて静かで、背後に電源が落とされたゲーセンがあると思うと、『新一年生おめでとう!』と掲げられた看板まで寒々しく思えるから恐ろしいことである。

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