第3話 生き返り

「ゆうちゃん、ご飯できたよ。そろそろ起きなさい」

炊きたてのご飯の匂いが心地よい。うっすら目を開けた。

(生きてるのか?)

「ほら、ゆうちゃん!」

大きな声にビックリし、布団から飛び起きる。体の隅々まで確認する。

(生きてる)

「ほーら、お食べ」

80代は超えていると思われる老婆が顔をしわくちゃにしてニカーッと笑う。歯は入れ歯だろうか、やけにきれいに揃っている。

目の前に炊きたてのご飯と味噌汁、理想的な朝食と言わんばかりの卵焼きに焼き鮭。目の前に運ばれてきた。

「よく寝てたね。さあ食べよう」

老婆はもりもりと食べ始めた。


しばらく状況が掴めずにいた。僕は確かに飛び降りた。確かに、最後に遺書など残せばよかったと後悔はあったことには間違いない。もしかして、生き返ったのか?それにしては無傷だ。

「どうしたんだい、狐につままれたような顔して」

がははと老婆は高笑いした。

「それ、よう似合う」

そう言われ、ハッとした。着ていた服が…よく見ると青のシャツに、エンジのチェクのズボン。

「何で!」

あまりの趣味の悪さに、僕は後ろに倒れ込んだ。

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