あのスープ

 目が覚めると見知らぬ部屋にいた。心当たりなんてひとつもない。だって昨日はベッドで寝たはずなのに。

 立ち上がって辺りを見る。部屋の中央には大きな鍋があった。人ひとり入れるくらいの大きさ。近くには小さな皿と銀製のスプーンがひとつずつ。それが、どうぞ私を食べてください、とでも言っているようで何だか嫌な予感がする。

 それ以外は灰色の壁が続くだけで、何もない。つまり本当にこの鍋以外手がかりがない。

 怪しみながらも蓋をどかせば、上から声が降ってくる。

「それは毒のスープです、お食べになったならこの部屋から出しましょう」

 確かめるためにもスプーンを液体につっこむ。少し待てば変色した。確かに毒らしい。

 それなら私は――。


お題「謎」 300字

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