離したのは

 私たちはいつだって、一緒にいた。「幼馴染」なんて三文字で言い表せる関係じゃない。だって産まれた病院から大学までずっと同じで、ずっとふたり手を繋いでいたんだから。ふたりで約束もしたし、離れることなんてないんだから。

 ――そう思っていたのは、私だけだったらしい。

 目の前には純白のウェディングドレスを身にまとった彼女。隣には嬉しそうに穏やかに微笑む私の知らない男。

 いつ出会ったの、いつから付き合ってたの、どうして彼を選んだの。どうして――どうして私の手を離したの。

 信じられなかった。私がこぼれ落ちる。この教会で手を繋ぐのは私じゃなかったんだ。それが苦しい。彼女には喜びの涙だと、勘違いしてもらわなくちゃ。


お題「手」298文字

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