孤立
あの時、逃げたことに後悔はしていない。
けれど少し失敗だったかもしれない。
私の横に腰掛けてきた少女___漆原芽衣はその容姿が可愛く、愛嬌があることからクラス、いや学年の中の有名人で、人気者だった。
彼女のことを知らない人はきっと学年にはいないだろう。
私が逃げた後、彼女は泣きながらクラスの生徒のもとへと帰っていったらしい。
「巫さんに怒られた。」
こんなことを言ったらしい。
ったく、なんで一緒に本を読もうと誘ってもないのに勝手に隣に座ってきて、挙句のはてに逃げられたら怒られただあ?
笑わせんじゃないよ。
でも現実問題、今私は職員室に1時間ほど正座で座らされている。
担任が聞いてきた。
「どうして漆原さんのことを怒ったの?彼女は何も悪いことはしてないわ。」
「怒ってません。」
「じゃあどうして漆原さんは怒られたと言ったの?本当に怒られていなければ怒ったなんて先生言わないと思うけど。」
「本当に怒ってません。彼女が勝手に突然私の隣に座ってきたんです。私は一人で本を読みたかったから逃げただけです。」
「彼女は一人で寂しそうだったあなたのために座っただけよ?なんで逃げるの?」
「私は寂しくもないし、一緒に読もうなんて誘ってません。勝手に隣に突然座られたら迷惑です。こっちは一人になりたいんです。彼女が勝手にしたことでなんで私は怒られないといけないんですか。」
この繰り返しだった。
「もう拉致が開かないから今日は帰りなさい。」
「もうとっくに拉致開いてるじゃないですか。彼女が余計な親切心を向けてきただけです。」
「...」
先生はきっと漆原を責めたくないのだろう。
「迷惑な子」が全て悪いことにすれば綺麗に話が終わるから。
「可愛い子」「いい子」の彼女を責めたくないのだろう。
「面倒くさいなあ」
ぼんやりと呟きながら私は帰路へと向かった。
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