母
「ただいま。」
「おかえり。」
「今日帰り遅かったね、なんかあった?」
「なんも。先生に残されただけー」
「ふうん。早く手洗ってちょうだい。もう少しで夕飯できるから。」
「あいよ。」
「迷惑な子」の私は先生に放課後残されることがよくあった。
「普通の母」なら自分の子供の帰りが通常の時間より1時間も遅く帰ってきたらきっと心配するだろう。学校に連絡する親も少なくはないだろう。
蛙の子は蛙。これは本当だと思う。
「普通じゃない私」の母もまた、「普通」とはかけ離れた人だった。
多少のことは「まあいっか」で済ませる。
結構大ごとな事件があったり、悲しいことがあっても大体のことは風呂に入って寝れば忘れる。
よく言えば楽天的、悪く言えば無頓着な人だった。
何事に対しても基本的に「まあいっか」な母。
私に対しても「まあいっか」だった。
小学4年生ぐらいの子は母親に話を聞いてもらえなかったり、話に対してどうでも良さげな態度をされたら寂しがるのだろうか。
でも私にとっては母の「まあいっか」がありがたかった。
私が人と外れたことをしても、
「人と交わらないことは、決して悪いことではないの。第一変なことに巻き込まれないし、人と関係が拗れてこっちの情緒が不安定になって無駄に一喜一憂する必要もないのよ。全然悪いことじゃないわ。」
犯罪さえしなければなんでもいいのよー。
これが母の決まり文句だった。
こんな母のおかげで、いやこんな母だからこそ私は初志貫徹な自分を貫き通せている気がする。自分がやりたいと言った事はなんでもやらせてくれる。
周りの人がそんなに私を毛嫌いしても、なんと言おうと、母は私のことをわかってくれる。理解してくれる。無駄な詮索をしてこない。
私は親に恵まれたな、とつくづく思う。
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