本当のワタシ

猫の集会

第1話

 この春、無事中学校を卒業した。

 

 中学生だった頃の私は、眼鏡に一本しばり

 で、目立たない地味な女の子だった。

 

 しかーし‼︎

 

 私は、決めた‼︎

 

 この春休み中にイメチェンをして、高校デ

 ビューするのだ。

 えーと、まず髪型から。

 色んな雑誌を読みあさって、サラサラヘア

 ーに、決定した。

 

 お化粧も猛勉強。

 

 テスト前もこれくらい集中できてたら良か 

 ったな…

 

 あとは、体型とか?

 

 食事、運動、たっぷりの睡眠。 

 規則正しい生活って意外と大変。

 

 でも、数週間頑張ったかいがあって、見事

 大変身しました!

 

 ありがとう私。おめでとう私。

 

 そしてついに入学式。

 

 式が始まる前にトイレトイレー。

 

「ねぇ、あの子髪サラサラ。しかもかわいく

 ていけてる。彼氏とかいるんだろうね。」

 ヒソヒソ私の話をしている女の子達。

 きこえてますよー。私彼氏いませーん。

 しかもかわいくていけてるなんて。

 なんか心がくすぐったい。

 

 少し調子に乗っていた私。

 

 今日は、ばっちりにしてきたつもりだった

 んだけど、ハンカチ忘れたー…

 女子力だだ落ち…

 濡れた手をどうしようか迷っていたら、 

「あのぅ、ハンカチどうぞ。」って

 優しそうな眼鏡をかけた女の子が私にハン 

 カチを差し出してくれた。

 

「ありがとう。私一年一組山川理菜、あなた 

 は?」

「私も…一組なんです。よかったら友達にな

 りませんか?」

 

 急に入学早々にお友達。 

「もちろん!」

「よかった。私は、佐藤広美っていいま 

 す。」

 

 広美ちゃんは、にっこり笑った。

 これが、私と広美ちゃんとのはじめての出

 会いだった。

 

 友達って、ささいな事から仲良くなったり

 する。

 

 休み時間は、だいたい外を見ながらベラン 

 ダで二人して、おしゃべりするのが日課に 

 なっていた。

「ねぇ、今グランドで遊んでるボール投げた 

 人いるでしょ。」 

 広美ちゃんが背の高い男の人を指差した。 

「うん。カッコイイね。」 

「あの人、学校いちのNo.ワンイケメンなん

 だって。」

「へぇ、こんなイケメンが同じ学校で生活し

 てるなんて、それだけで幸せぇ。三年生か 

 ね?」 

「うーん、かもね。」

 それから二人でボーッと先輩にみとれてし

 まった。

 それから一週間が過ぎた頃のある日、いつ

 もは、広美ちゃんと下校してるんだけど今

 日は、用事があるみたいで急いで先に帰っ

 ちゃったんだ。

 

 一人でトボトボ校庭を歩いていたら、後ろ 

 から

「きっれーな髪してんねぇ、一年生?」って。


 声をかけられて振り向くと、あのグランド

 でみたNo.ワンイケメンが私に、この私には

 なしかけてくれた。

 あーっ、イメチェンしたかいがあったぁ。

 おっといけない。

 我に返り

「はい、一年です。」

 そう答えると、

「かわいいじゃん、オレと付き合おうよ。

 じゃ、また明日ここで。」

 そう言って行ってしまった。

 

 ………。

 

 えーと?……

 

 つき合う?今つきあおうよって言ったよう

 な気が…。

 まさか。ドッキリ⁈いたずら?

 とりあえず落ち着いて…明日を待とう。

 次の日の休み時間、広美ちゃんに昨日の出

 来事を伝えた。

 広美ちゃんは、それ本当に大丈夫かな?

 何かあったらすぐに連絡して!

 駆けつけるからって。

 でも、本当に運命的な出会いなら、心から

 応援させてと言ってくれた。

 

 広美ちゃんは、心配性なのかなって思って

 た。

 

 あの話を聞くまでは。

 

 そして放課後…

「とりあえず行ってみる。」

「うん。頑張って!」

 広美ちゃんが応援してくれた。

 あー、ドキドキだ。

 本当に来るのかなぁ?

 

「おっまたせーっ。」

 来た…本当に来た…

「あ…」

「じゃ、帰ろっか。」

 

 門を出るとイケメン先輩は、私の肩に手を

 回した。

 えーっ。男の人にこんな事されるのはじめ

 て。

 

 緊張のあまり、歩くのがやっとって感じ。

 そもそも、私まだつきあうって返事してな

 いような。

 でも、一緒に帰ってるって事はつきあって

 るのかな?

 なんだかよくわからなくなってきてしまっ

 た…

 

「あ、名前聞いてなかったね。なんて名前?

 オレは、片瀬ヒカル。」

「私は、山川理菜です。」

「理菜ちゃんか。よろしくね。」 

「あ、よろしくお願いします。」

 何がよろしくなのかすらわからない。

 それから、たわいのない会話をして時は過

 ぎた。

 

「私、電車なのでここで大丈夫です。」

「そっか。じゃ気をつけね。」

「はい。」

「あ、待って。」

 手をぐいって引っ張られた。

 ?

 

 チュッ

 

「じゃまたね。」

 

 え?なに?どういうこと⁉︎

 こ、これは、まさかキスってやつですか?

 ファーストキス!

 まさか、こんな日が来るなんて。

 中学の頃は、彼氏すらいなかった私に、こ

 んなイケメン彼氏ができてしかも。しかも

 キスまで。

 こんな上手くいってしまっていいものか…

 これが高校デビューってものなのでしょう 

 か?

 

 次の日、広美ちゃんにドッキリじゃなかっ

 た事をはなした。

 ルンルン

 二人で体育館に向かって歩いていたら、

 

「また浮気したでしょ?」

「してないよ。」

「うそ、友達が年下の女の子と歩いてるのみ

 たって言ってた。」 

「そんな事ない。オレには、お前しかいない

 よ。」 

「本当?」 

「うん。」

 チュッ

 

 体育館の近くてまカップルが仲直りしてる

 みたい。

 女の人とっても綺麗。男の人は、顔が見え

 なかったけど…

 でも、何か聞き覚えがある声だったような

 気が…

 

「おい、ヒカル。何してるんだ。もう授業は 

 じまるぞ。早く二人共教室戻りなさい。」

「はーい。」

 ヒカル?

 

 私と広美ちゃんが振り返ると、あのイケメ

 ン!

 イケメンヒカルさんは、私と目が合った。

 ヤッベェって顔をした。 

 二股だったんだ。

 何か軽いとは、思ってたけど。

 私の初彼氏は、女たらしだった。

 そして、一日で終わりを迎えた。

 

 ちょっと待ってよー‼︎

 私のファーストキス返せー‼︎

 なんなんだー‼︎

 人生そんなに甘くないと実感した。

 気を取り直して、バイトでも始めよう。

 色々悩んで駅のアイス屋さんでバイトする

 事になった。

 以外とアイスをコーンに乗せるの難しい。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。」 

 優しく声をかけてくれたのは、同じバイト

 仲間。

 鈴木君。

 鈴木君は、私の一つ年上。とても頼りにな

 る。

 

 数ヶ月が経ち、バイトも学校も慣れた。

 たまに、告白してくれる人がいたのだけ 

 ど、不信感がつのって前に進めない。

 せっかくイメチェンしたのに、毎日学校と

 アイス屋の往復。

 

 そうこうしている間に、街はすっかりクリ

 スマスモード。

 彼なし。お一人様。つまんなーい。

 でも、よくわからない人とつきあってまた

 二股されたら、怖い。

 

 クリスマスがなんだ。よし、一人でも楽し 

 く過ごしてみせる。 

 クリスマスのパンフレットをみながら、一

 人でぶつぶつ言いながら、バイトをしてい

 たら、

「そんなに一人が嫌なら、オレがつきあおう

 か?」

 

 鈴木君…

 つきあう?また曖昧。

 どっちのつきあうなんだろう。

 恋人の?それとも、その日つきあってあげ

 るのつきあう?

 どっち?

 ってか、私の独り言ダダ漏れだったのね…

 恥ずかしい。

「鈴木君、私の独り言どこから漏れてました

 か?」

「クリスマスがなんだって所から。」

 やってしまった。馬鹿みたいじゃん。気ま

 ずい。シーン…

 あ、お客さん。

 助かった。

 

「いらっしゃいませー。」 

「かしこまりました。」

「ありがとうございます。」

 シーン… 

 お客さん帰ってしまったよ。残りの一時間

 どうやってやり過ごせばいいのか… 

「ねぇ、山川さん。」

「はい。」 

「この際、いいチャンスだから言わせて。実

 は、オレ山川さんの事気になってて。だか 

 ら、よかったらつきあいませんか?」

 つきあうって、そっちのつきあうだったの

 か。 

 いきなり言われてもな。でも鈴木君、知ら

 ない人じゃないし、優しいし… 

 頼りになる…

 しかも、そしたらクリスマスぼっちじゃな

 くなる。

 

 ここは、思い切って

「はい。よろしくお願いします。」

「え、本当?言ってみるもんだな。」 

 鈴木君は、びっくりしながらも喜んでる様

 子だった。 

 早く来い来いクリスマス!

 そしてついにクリスマス

 キラキライルミネーションの前で待ち合わ

 せ。

 

「お待たせ。」

 鈴木君が来た。 

 一緒にご飯を食べて、お買い物して、イル 

 ミネーションをみた。

 あの電球どれくらい使ってるんだろう。

 コンセントどこから繋いでる?

 電気代いくらかかるんだろ…

 彼とデートなんだって事を忘れてそんな事 

 を考えてしまった。

 

「そろそろ寒くなってきたし、帰ろうか?」

「うん。」

 そして、あっけなくデート終了。

 みんなクリスマスデートってこんな事して

 たんだなと納得。

 でも、やっぱり冬はこたつにみかんでしょ。

 私は、そっちの方がやっぱり合ってるのか

 も。

 はー、こたつ幸せ〜。

 

 冬休み広美ちゃんと遊ぶ予定だったんだけ

 ど、家の都合とかバイトとかで予定があわ

 なくて遊べなかった。

 広美ちゃんと、冬休み明けの久々の再会。

 会うなり広美ちゃんから、いきなりびっく 

 り発言。

「あのね、理菜ちゃん。私この冬恋をしまし 

 た。」

「え?恋⁉︎すごいじゃん‼︎彼氏できたの?」

「ううん。片想いなんだけどね。」

 広美ちゃんは、少しはずかしそうに言った。

 そして、運命的な出会いの話を詳しく教え

 てくれた。

 

 どうやら、出会いは駅で広美ちゃんが気分

 を悪くした時に介抱してくれたそうな。

 たまにそれから駅で会うらしいんだけど、

 会釈すると返してくれるんだって。

 直接お礼をしたいんだけど、恥ずかしいか

 ら、一緒に来て欲しいって言われたから何

 も考えなしについて来た。

 

「あの、黒いリュックの人だよ。」

 広美ちゃんが、ポッと赤くなった。

 その横で私は、真っ青になった。

 

 中学の同級生…

 右田つとむ君。

 中学の時、優しくて人気のある男の子だっ

 た。

 

 私とは、無縁の男の子。

 

 ま、私には気がつかないだろう。

 こんなに、かわったのだから。

 その前に、私の存在すら覚えてないかもし

 れない。

 

「広美ちゃん、私となりにいるし何かあった

 ら、フォローするから頑張って!」

「う、うん。ありがとう。」

 ゆっくり広美ちゃんが右田君に近づいた。

 トントン

 

 右田君が振り向いた。

 広美ちゃんは、この間のお礼を言ってクッ

 キーを渡した。

 よかった。

 

 無事任務完了。

 

 一緒こっちをみたけど、私って気がつかれ

  なかったみたい。

 

 セーフ。

 

 さぁ、帰ろう‼︎って思ったら…

「もしかして山川さん?」 

 あー。バレた… 

「中学の時とだいぶ印象違うからはじめわか 

 らなかった。」

 

 広美ちゃんは、キョトンと私をみた。

 右田君とさよならした後、広美ちゃんにす 

 べてを話した。 

 ガッツリイメチェンした事を。 

 それで、今から家でアルバム見ようって事

 になった。

 二人で改札に向かってたら、


「えっ、広美⁉︎」

 綺麗な女の人二人が近づいてきた。 

 年上かなぁ。

「どうしたの⁉︎広美!ずいぶんとまたかわっ  

 たねぇ。」

「うん。色々あったじゃん。だからさ…でも 

 これはこれで気に入ってるの。」

「そっか。色々あったもんね。でもそっちの

 広美も似合ってる。」 

「ありがとう。」 

 私は、キョトンだった。 

 とりあえず、挨拶してさよならしたけど、 

 話の内容がついていけなかった。

 でも、あんまり詮索するのもよくないから

 聞かないでおこう。

 

 家に着いてアルバムを見始めた。

「つとむ君カッコイイ。」

 広美ちゃんがハートの目になった。 

「理菜ちゃん、いないね。別のクラス?」 

 広美ちゃんが別のページをめくろうとした

 んだけど、私はすかさず

「これっ。」て指差した。

 広美ちゃんは、固まった。

 

 だよね。昔と今、全然違うんだもん。

 どう思ったんだろう。

 広美ちゃんは、少し黙った後何やら携帯を

 ゴソゴソ出して、私に写真を見せてくれた。

 そこに写っていたのは、とっても綺麗な女

 の子。 

 でも、この子誰なんだろ?

 

 ?  ?  ?

 

「実は、これ中学の時の私なの。」

「えええー。広美ちゃん?何でこんなにかわ

 いいのに。あ、変な言い方でごめんだけど

 今は、今でかわいいけど前の方がモテるよ、

 もったいなくない?」

 一人で盛り上がってしまった。

「確かによく告白されたんだけど、あんまり

 話した事ない人といきなりつきあえないし、

 断ってたりしたら、今度は調子乗りすぎっ 

 て言われてたり、痴漢とかストーカーにも

 あって怖くなっちゃってさ。」

 そっか。だからさっき、お友達と色々あっ

 たって… 

 私は、理由も知らないのに勝手な事ばっか

 り言ってしまったら事を広美ちゃんに謝っ

 た。

 美人って憧れてたし、楽しそうでいいなっ

 て思ってたけど、いい事ばっかりじゃない

 んだってわかった。

 

 程なくして、席替えが行われた。

 何と窓際。

 しかも、後ろの席に広美ちゃん。

 私は、暇さえあれば振り向いてはなしをい

 つもしていた。

 鈴木君と、自然消滅した事なんかも話した。

 数週間が過ぎて、いつものように後ろを向

 いて広美ちゃんと話してたんだけど、美術

 の時間。 

 青い絵の具があんまりなくて広美ちゃんに 

 借りようとした。 

 こころよくいいよって言ってくれたけど、

 広美ちゃんもあんまり青がなかった。

 やっぱりいいやって遠慮した。

 

 そしたら、突然広美ちゃんの隣の席の男の

 子が

「これ使っていいよ。」って話かけてきた。 

 びっくりした。

 今まで思いもしなかったけど、私達の話が

 隣の席の人に丸聞こえだったなんて。

 たしかに嫌でもきこえてしまうだろう…

 私が自然消滅した話なんかもきこえてたっ 

 て事だよね…

 恥ずかしい…なんて迷惑な私。

 とりあえず、広美ちゃんに促されて絵の具

 を借りた。

 すーっごく少しだけ使った。

 だから、めちゃくちゃ薄い水色になった。


 私は、今まで内側から振り向いていた。

 半分、隣の席の人に話していたようなもん

 じゃない? 

 なぜ、外側の窓の方から振り向いて、話し 

 かけなかったのだろう。

 なんだか、次から話す時隣の人にも聞かれ

 てるって思うと意識してしまう… 

 話しづらい。

 

 どーしよー‼︎

 

 それからは、あんまり聞かれても大丈夫な

 話をするようになった。

 でも、広美ちゃんに話しかけるだけなのに、 

 絵の具を借りて以来、なんだか私が私じゃ 

 ないみたい。

 そうそう。私、広美ちゃんのあの話きいて

 から、あんまりおしゃれにこだわらなくな  

 っていた。

 

 広美ちゃんは、右田君とつきあいはじめた

 んだって。 

 うやらましい! 

 上手くいってよかった。

 私は、相変わらずだ。

 

 広美ちゃんの隣の席の男の子

 熊井空君って言うんだけど、最近気になっ 

 て、仕方ない。

 私が挙動不審だからすぐに広美ちゃんに感 

 づかれた。

 これが、恋⁉︎

 でも、話すきっかけがない。

 そうこうしている間に、クラス替え。

 広美ちゃんと、別々のクラスになってしま 

 った。

 

 熊井君も、別のクラス…

 でも、一つ救いは、広美ちゃんと熊井君が 

 同じクラスだって言う事。 

 広美ちゃんにあいに行くんだけど。どうし

 ても、熊井君を探してしまう私…

 絵の具を借りて以来一言も話していない。

 でも、よく目があう。

 

 それは、私がいつもみているからだろう。

 夏休み前、広美ちゃんが大ニュースを持っ 

 て来てくれた。

 夏祭り、広美ちゃんと右田君と熊井君と私

 四人で花火に行くことになったの。

 なぜ、そんな事になったかと言うと、右田 

 君と熊井君は、塾が同じで友達だったそう

 な。

 

 ふふふ

 

 広美ちゃんがあやしい笑いをした。

 その笑いは、いったい… 

 花火当日。

 

 私達は、張り切っておしゃれした。

 広美ちゃんは、いつもおしゃれをしないの

 だけどたまにテンションを上げたい時に、

 おしゃれをするそうだ。でも、これからは、

 右田君の前でだけおしゃれするんだって。

 彼氏いれば、変な人が寄ってくる心配もな

 いから。

 

 私も、久々に頑張った!

 広美ちゃんは、眼鏡を外して、かわいい髪 

 方にお化粧。 

 右田君は、広美ちゃんをみてすっごくびっ

 くりしていた。

 

 あの顔は、本当におもしろかった。

 

 誰ですか?みたいな。 

 右田君は、どっちの広美ちゃんも広美ちゃ 

 んだ。中身は、おんなじ。僕の広美ちゃん 

 って言っていた。 

 私達がいる事、忘れていませんか? 

 丸聞こえだし。

 こっちまでなんだか恥ずかしくなる… 

 しばらく、四人で行動してたんだけど、右

 田君が広美ちゃんと行きたい場所があるか 

 らって、二人にしてって言われた。 

 そしたら。私達、二人⁉︎  

 広美ちゃんがまた、ふふふって

 あやしく笑った。

 

 私達は、二人きりになった。

 

 どうしよう…

 困っていたら、熊井君が話かけてくれた。

「一年生の時、絵の具無理矢理貸してごめん  

 ねっ」て。 

 今更?しかも借りたの私なのに。

 なんか、二人の話に勝手に入ってしまった

 事を後悔していたらしい。

「そんな事ないよ。むしろ優しいと思ったよ。

 ありがとう。」

 

 私は、にっこり笑った。

 

 そしたら、いきなり抱き寄せられた。

 え?

 抱きしめられたまま、熊井君が話をはじめ

 た。 

「ずっと、一年生のはじめから好きだった。

 もう、限界だ。」 

 って。 

 えーっ、私を⁉︎ 

 突然の事にびっくり。

 

 でも、うれしくて何でかわからないけど、

 涙が溢れた。 

「ありがとう。私も好きです。」

 そう答えた。

 

 それから、少しして手を繋いだまま、広美 

 ちゃん達と合流した。 

 まだ何も言ってないのに、広美ちゃんは、

 おめでとうって言った。

 

 もしかして、何か知ってたのかも!

 だから、あのあやしいふふふ。


 私は、これから外見ばっかり重視じゃなく

 て、熊井君にもっと好きになってもらえる 

 ように中身を磨こうと心に誓った。

 

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