第32話 北風系ヤンデレと重い想い3

なぁくんとお付き合いするようになってから、彩咲たちは急速に愛を育んでいったんだ。


「なぁくんなぁくん、だぁい好き! いつも彩咲のこと大事にしてくれてありがとうね♡」


「あはは! もいつも助けてくれる彩咲のこと、大好きだよ! これからもよろしくね!」



あぁ、そういえばお付き合いしだした当時のなぁくんは、自分のことを今みたいに「僕」って呼ぶんじゃなく、「俺」って呼んでたなぁ。


彩咲の愛情・・いっぱいのいちゃいちゃを受けて、自信とか自尊心みたいなのがなくなっていったのかな。

そういう変化が、なぁくんが彩咲専用になっていく感じがして嬉しかったんだよね。




なぁくんは、ご両親をなくされていたから自立心や苦しい立場の人の心に共感できるのか、施設育ちだから年下で弱い立場の子を守ってきたとか、そういうのが原因なんだろうか、もともとすごく面倒見が良かった。


誰にでも自分の身を削ってまで尽くすのが当たり前みたいに振る舞うんだ。


その片鱗は彩咲を暴漢から助けてくれたことにも見えていて、刃物を持って狂っている明らかに危険な相手に対して、ただのクラスメイトでしかなかった彩咲のために、なんの躊躇もなく前に出て助けてくれた。


さすがに身体が害されるような人助けは他に見たことなかったけど、誰かが困ってたらすぐに手を貸すの。

自分がどれだけ損をするような状況でも、人に尽くしてた。


それはもう、見る人が見れば、いい人過ぎていっそ狂っていると言っても過言でないものだった。


そんななぁくんはもちろん彩咲にも格別あまあまに接してくれた。

彩咲がなにもお願いしなくてもちょっと困ったなぁって思ってたら、それを察して先回りして助けてくれる。

そんなふうにたくさん甘やかしてくれたし、キスもたくさんしてくれた。


彩咲の家はそれなりにお金持ちだったから、いろいろ買ってあげたりお金をあげたりしたかったのに、なぁくんは全然物欲がなくて、逆に彩咲がいろいろもらってしまったり。


なぁくんは器用でなんでも卒なくこなすような人だったから、他の人を助けるのと、彩咲にいっぱい尽くしてくれるのを難なく両立してくれてたんだけど......。

そんなことができるなぁくんがかっこよくて、素敵で、いつも見とれてたんだけど......。




..................ただ、えっちだけは頑なにシてくれなかった。

責任が取れるまでシない、なんて言って。


将来のことを考えてくれてるのは嬉しかったけど、彩咲としては身体で繋がりを感じられないことにモヤモヤを感じてた。

彩咲はそれじゃ満足できなかったの。



彩咲のなぁくんが、彩咲以外の女の子を助けてる。

彩咲のなぁくんが、彩咲以外の女の子に笑顔を向けてる。

彩咲のなぁくんが、彩咲以外の女の子から好意を寄せられてる。

彩咲のなぁくんが、彩咲以外の女の子から告白されている。


なぁくんとはほとんどの時間一緒にいたし、彼は浮気とかするような人じゃないから、そこに不安はなかったんだけど。

そういう風景を見るたびに、彩咲の心は強く締め付けられるように痛んだ。





なぁくんは彩咲のものなんだ。





そんな思いは高校進学を期に、彩咲の中で爆発した。


だけど、そのときはまだ、なぁくんの意思を無視して無理矢理既成事実を作るっていうことはしたくなかった。

彩咲のこと以外考えられないようにして、なぁくんから彩咲の身体を激しく求められるようにあげたい。




最初はご飯にちょっとだけ媚薬を混ぜたり、キスの時間を長くしたりするくらいだった。

パパにお願いして、なぁくんの一人暮らしのお家を壊して、彩咲となぁくんに同棲を始めさせてもらって、四六時中一緒にいられるようにした上で。



だけどなぁくんは、ムラムラはしてるみたいだったけど、鋼みたいに硬い決意で頑としてえっちしようとしなかったの。


......許せないと思った。

彩咲の愛情はこんなに結ばれることを望んでるのに、なぁくんの愛情はソレを我慢できる程度でしかないってことを。



それから彩咲の愛情表現はちょっとずつ過激になっていった。


まずは学校の時間以外はなぁくんを監禁することにした。

ベッドに鎖をつけて、部屋から出られないように。

彩咲と一緒の時間がもっと増えれば、さすがのなぁくんも我慢の限界が来てくれるだろうって思って。


......それでも全然ダメだった。


いい加減しびれを切らして彩咲のお股をナメさせてあげた。


......気持ちよかったけどなぁくんは舐めるだけで終わった。


ムカついたのと、もしかしたらなぁくんは特殊な性癖の持ち主かもしれないって思って、うんちやおしっこを食べさせてあげた。

泣きながら美味しそうに食べてたから、それから定期的にご褒美兼お仕置きとしてあげるようにした。


......でも、お尻の穴まで舐めてるのに、それでも本番だけはしてくれなかった。







そんな状況でいつの間にか高校も3年生の半ば。

受験がもう佳境に差し掛かってきた頃。


なぁくんの将来は彩咲の専業お婿さんしかなかったわけだけど、周りの子達は彩咲たちの仲を侮っていたらしい。

まさかと思ったけど、1人の女の子がなぁくんに告白するなんて暴挙にでてきた。


..................さすがに我慢できなかった。


あれだけ愛情を注いであげてきたのに、告白されるなんて、ふざけすぎてる。



彩咲のお婿さんになってもらおうと思ってたけど、もうやめた。

彩咲を不安にするなぁくんなんて、彩咲のペットにしてあげることにした。






そう思ってベッドに繋いで、さぁあともうちょっとでとうとうなぁくんと結ばれる、ってところでパパから連絡が入って。

なぁくんをペットにするならってことで、すっごく効く脳をとろけさせるおクスリをもらってきたのに............。




部屋に帰ったらなぁくんは居なくなってて。




さすがにどうしようもないだろうと思ってた耳たぶに打ち込んだGPSを追いかけた先にあったのは、荷物を載せたトラックの中に彼の耳たぶの端っこだけ。


この時点で彩咲はなぁくんに繋がる手がかりをすべて失った。


パパの力を使ってもらって、近所のところまでは防犯カメラになぁくんが映ってたりしたのを見つけたけど、その後は全然見当たらない。

状況は絶望的。


だけど。




「待っててね。すぐに見つけてあげるから」








懸命に捜索を続ける彩咲の元になぁくんらしき情報が入ってきたのは、なぁくんが逃げ出してから2ヶ月くらいが過ぎたころだった。

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