第18話 出会いと旅の終わり3
「その......いきなりで、もし違ったら申し訳ないんですけど............。あなた、ナナくんだったり......しない?」
「..................え?」
「あ、急にごめんなさい。なんだかあなたの雰囲気が昔の知り合いに似ていたものだったから......。でも......よく考えたらこんなところにいるわけなかったわ......。彼はもっと都会の人に
頭を金槌で殴られたような衝撃を受ける。
相変わらず星迎さんという名前に覚えはない。
だけど、『都会にいるはず』ということと、『引き取られた』という表現から、出身の児童養護施設の関係者の可能性は高い。
数秒間呆然としたあと、なんとか思考を凍土からサルベージして、混乱冷めやらぬ頭で『ナナくん』なる呼び方を検索する。
やはり『星迎さん』は記憶にない。
ただあの孤児院の関係者ってことは、その家の子として養子に引き取られて、当時と違う名前になっている可能性は少なくない。
出身施設の事例で言えば、どっちかと言えば、僕みたいに昔の名前をそのまま使っていることの方が珍しいくらい。
だから苗字で検索するのは諦めて、下の名前、『真霜』で思い出そうとしてみる。
真霜......真霜......ましも......。
うーん、思い出せない......。
呆然としたりうんうんと悩んだりしている僕を見かねてか、星迎さんが質問の補足を投げかけてくれる。
「あ、えっと、『ナナくん』じゃわかりませんかね......。えっと確か......『夏凪晴』くん......だっけ?」
今度はなんの疑いの余地もない。
僕はこれまで同じ男で「ななは」っていう同じ名前の人に出会ったことがない。
珍しい名前を言い当てられて、自分じゃない可能性の方が低いだろう。
施設の関係者なら、僕が彩咲と出会うより前の知り合いのはずだから、やっぱり多分彩咲とは関係ないだろうし、ごまかす必要もないかな?
「あ、えっと、はい、そうです。僕は夏凪晴です。
「やっぱり! えー、すっごくおっきくなったね〜! それに昔以上にとっても男前になってる〜!」
僕の肯定の言葉を聞くやいなや、満面の笑顔になって元気よくなり、バシバシと僕の背中を軽く叩きながら何やらお褒めの言葉を唱えてくださる星迎さん。
「あ、ありがとうございます......?」
「なんで疑問形?」
コテンと小さく可愛く首をかしげる星迎さん。
「えっと、すみません。星迎さん(?)は僕のことご存知みたいですけど、申し訳ないですが、僕はちょっと星迎さんのことを思い出せていなくてですね......。あの施設の関係者......ですよね?」
「あぁ、そっかそっか、そりゃあ突然馴れ馴れしくされたらびっくりしちゃうよね! 名前も当時とは違うし、私も大きくなったからわからなくてもしかたないねっ」
星迎さんは、得心いった、とでもいうようにうんうんと頷いて続ける。
やっぱり名前が変わっていたのか。
「私は星迎真霜。昔、あの施設に居た頃は
「桃郷......。もしかして......モモ姉ちゃん!?」
「はいっ! モモ姉ちゃんですっ。覚えててくれて嬉しいわ!」
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