第14話 分家の女
草原でブリジット一行を襲撃してきた
ボルドは
それはダニアの女戦士そのものだったからだ。
その姿を見たブリジットは
「おいテメー。見ねえツラだな。どこの隊の所属だ? 何をトチ狂っていやがる」
そう言って槍を構えるベラの後ろで、落馬させられたソニアが
そしてベラを押し
「このクソ野郎!」
だがその音をもかき消すほどの、
「静まれぇぇぇぇぇっ!」
それは大気を震わせるような大きな声ながら、美しい響きを
その声にソニアのみならず相手の女戦士も動きを止める。
ブリジットは女戦士を
「貴様。分家の者だな?」
分家。
唐突にブリジットの口から出たその言葉の意味が分からずボルドは内心で首を
だが、彼以外のその場にいる人間には腑に落ちたようだった。
ボルドの
「初代ブリジットの時代に我らと
初めて聞く話にボルドはあらためてソニアと
顔つきや体格はダニアの女戦士そのものだ。
ベラは槍を肩に
「なるほどな。王国の子飼いになった奴らか」
それを聞いた相手の女はその顔を
「クックック。分家? 王国の子飼い? 笑わせるな。
そう言うと女戦士は再びソニアに槍を向けて突進し、ソニアもこれを迎え撃つ。
だがその瞬間、2人の間に一陣の風が吹き渡った。
ブリジットが2人の間を駆け抜けたのだ。
次の瞬間、敵の女戦士は苦しげな声を発して武器を落とした。
その両
ブリジットによって一瞬で
「あうううっ……」
「今さら本家だの分家だのとどうでもいい話だ。なぜ貴様らが我らに刃を向ける? 答えよ」
そう言うとブリジットは敵の首に剣の切っ先を向ける。
その
女戦士は武器の握れなくなった手を震わせて、
「き、貴様が
「なに?」
「覚えておくことだ。我らが女王クローディアこそが正当なるダニアの血統だということをな」
そう言うと女戦士はベラやソニア、
「
そう言いながら女戦士は最後にボルドに目を止めた。
赤毛でも、
「そこにいる黒髪の小僧は情夫か。面白い。その情夫をブリジットの前で犯し、
鬼気迫る視線を向けられたボルドは思わず恐怖におののき、ベラとソニアは目に殺意を宿して武器を強く握った。
だが、女戦士の挑発にもブリジットはまるで
「ベラ、ソニア。こいつは
だがその瞬間、ヒュンッと空気を切り裂く音が
太い矢の
女戦士はすでに絶命していた。
即死だった。
ベラとソニアは即座に低い姿勢を取り、
だが、周囲を見回してもどこにも人影らしきものはない。
「どこから矢が……」
困惑する一行の中でブリジットだけはその眼力で見抜いていた。
だが、そこまでの距離は軽く500メートルは超えるだろう。
とても人の手で矢を届かせることが出来る距離ではなかった。
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