第8話 西と東の宝②
数時間前。
使者として到着して二日。初日こそ謁見で慌ただしかったが今日は旅の疲れを癒し寛いで下されと提案され、城内を見学させてもらった。
東の王国からの和平の提案にこの西の小国は驚いているようだったが、断ることはできない筈だ。東と西の間には幾つかの小国が存在するが徐々に東の王国に制圧され呑み込まれている現状だ。西のこの国にも戦火が舞うのは時間の問題だ。
但しこちらに非常に有利な条件を幾つも呑まなければならない。西にとって殆ど降伏みたいなものだ。
この国が我が国の手中に収まれば間(あいだ)の小国も抵抗を止めるだろう。無駄に未来の領土を焼きたくないからな。大人しくなってくれればこちらもやり易い。
それにこの国を手に入れればメリットが大きい。先日、古代文明の秘宝がこの城内の『開かずの間』から発見されたらしい。けど、これはトップシークレットだ。この国でも数人のみしか知らされていないであろう情報を何故オレが知っているかというと、こちらも大概秘密にしているがまぁ、大陸一大きな国の情報網、諜報活動はその報告を聞いているオレでもちょっと怖いくらいなものなのだ。
ただ……話を戻すが少し気になるところがある。いや、オレとしては本当は一番気になっているんだが……。
和平の提案に更にもう一つ条件が追加されていた。
東の国が西の小国の足元を見て出してきた条件なのは分かる。今のこの国では逆立ちしたって東の王国に敵いはしない。それこそ古代文明の兵器でも手に入れたりしなければ。一応、諜報員に確認したが発見されたのは兵器ではないようだとのこと。使い途(みち)に気づいてないだけかもしれないので油断はできないが。
秘宝はこの国を手中に収めればいずれ我が国のものとなる。だから条件はそれではない。
条件は西の至宝を東へ差し出せ、というものだった。
西のこの国は小さいが歴史は古い。東の王国が建国されるよりも前からこの地に在る。
この大陸には代々詩歌にも謳われる西の至宝、東の至宝の言い伝えが残っている。西には人々を癒す女神の御業の一族が存在し、東には呪われた剣(つるぎ)に魂を吸われた狂戦士が苦しみに囚われている、そんな話。
西の至宝も東の至宝も、実在する。それは血によって受け継がれ、それぞれの国に秘匿され守られている。切り札として。
西の至宝は誰なのか分かった。
他にそれらしき人物も見当たらないし。
東の至宝はオレで間違いない。
極秘事項だが。
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