第7話 西と東の宝
聞こえる。
「……七つの島国だ」
遠い昔、誰かが口ずさんでいた民謡。
薄く目を開けると、木々が揺れ光が踊る中で子供たちと一緒に楽しそうに輪を作りくるくる回りながら歌う人物に視線を奪われた。
一際目を引く黄金(きん)の髪を後ろで一つに束ねた十代後半くらいの年齢と思われる少女は遠目からでも美しい容姿をしていることが分かった。
腰を起こして丘の上からじっと彼女を見ていると少女はこちらの様子に気づいて慌てたようだった。
「使者様、起こしてしまいましたか? 申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ。こんな所で寝ていたオレが悪い。続けてくれ」
オレは片手を挙げて気にしなくていいと言うように彼女たちの遊びの続きを促した。
彼女は子供たちに何事か話かけ、こちらの方へ駆けて来た。子供たちは子供たちだけでまた手を繋いで回り出した。
丘の上まで走って彼女は息を切らした。
「大丈夫か? どうした?」
まだはぁはぁ言っていたのでちょっと心配になり(このくらいでこんなに息切れするってことは、相当な運動不足なのでは?)尋ねてみると、顔を上げた瞳と目が合った。頬が少し上気している。
いきなりオレの右手を彼女が両手でぎゅっと握った。
「使者様……」
「……なっ……」
キラキラした瞳(め)で見つめてくるので戸惑った。その微笑の破壊力は凄まじい。こんなに女性を近づけたり触れたりといった事があまりになかったので硬直していると、彼女は掴んだ手を引っ張り出した。
「さあ、使者様も一緒に踊りましょう! 大丈夫です。この国では宴会とかで大人も踊る曲なので、全然恥ずかしくないですよ」
……オレが遠目に眺めていたのを一緒に混ざって踊りたいのだと解釈したらしい。
ぐいぐい引っ張って行く彼女の笑顔は眩しくてつい、己の宿命も忘れて呟いた。
「平和だな」
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