第4話 彷徨う者④
体から溢れた光はやがて収まり、胸の熱さも和らいできた。
……さっきまで慣れない道を歩いて来た疲れを少なからず感じていたが、体を纏う輝きが消えるのとほぼ同時に疲れも取れたように思った。
頭に響いた言葉を反芻する。
「エナジー……チャージ……した?」
考えていた事が言葉として漏れ、独り言になった。
赤茶髪の青年がこちらを向いて相変わらず無表情で、
「はい」
私の疑問に答えを与えた。
私は自分の両手をまじまじと見た。私の、と言ってもとても自分の体とは思えない。ありえない。
十六年生きてきたけど体から光を発した事など一度もない。
私、本当にどうしちゃったの?
知らない世界(?)で知らない別人になっちゃってて、訳の分からない現象が起こって。夢なら良かったのに。
あんな体でも……顔もスタイルも身長も、何も自信のあるところはなかったけど嫌いじゃなかった私の元の体。
今なら思う。
どんなに美しくてもスタイル抜群でも違う。
今まで一緒に生きてきた……戦友。
私だけの。
……こんなに自分の体に愛着があったなんて知らなかった。
「……あなたは何者なの?」
尋ねたい事は色々ある筈だが目の前の青年が一番不可解で、この質問の答えが核心な気がして彼を見つめた。
一度瞬きし、彼の薄い唇が動いた。
「秘匿事項です。管理者キーが必要です」
やっぱりロボなのか……?
眉を寄せてじっと表情に目を凝らしていたが、照れる事もなく彼もじっと見つめ返してくる。
私の方が負けて、ため息と共に目を伏せて視線を外した。
でも不幸中の幸いとは、きっとこの事だ。
一人でこんな世界、耐えられなかった。
彼に背を向け歩き出す。
大きな岩を渡る時に振り返って呼んだ。
「これからよろしくね。あなたが誰なのか知らないけど絶対私から離れないで!」
ロボでもいい。一人でいるより、ずっといい。
青年はこくんと頷き後を追って来た。
そして数分後。私はさっきの言葉を後悔する事になる。
色々ありすぎてすっかり忘れていた尿意が蘇ったのだ。
「おぅぅ……」
漏らすよりは岩場の陰でした方がいいかと身を隠すと青年もやって来た。
「ちょ……トイレだから来ないで!」
「複数の言葉に矛盾を検知しました。優先度を解析します」
……わざとやってるわけじゃないよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます