3 彷徨う者<2>(※視点【結芽】)
※視点【結芽】
「はぁ」
小さなため息は、この状況に新たに考慮しなければならない事案を見つけてしまった為だ。
目に映った、金色の何か。視界の端で揺れたのでビビって少し跳び上がったけど。何とそれは自らの髪の毛だった。「何で金髪? しかも長いし」って頭の中で『?』マークがいっぱい出てくる。
ずっとここにいても仕方ない気がしてきて移動してみようと決意した。瓦礫を慎重に躱して出口のような扉のない戸口に向かう。
考えを巡らせている内に朝になっていたようで、外の廊下みたいな場所から明るい淡い光が差している。
サクサク歩くのは無理そうでじりじり進んで行くしかない。
ちらりと……近くの台座に横たわる骸骨の履き物を見た。でも借りる勇気はなかった。
体感時間一時間くらいかけてやっと戸口まで到着した。足は無事だ。
戸口の外は石造りの通路になっている。さっきの部屋ほど瓦礫はない。
光の差す左の方へ進むと程なくして外へ出た。
かつて石畳だったのだろうその場所は広く、石の隙間から雑草が盛りまくっている。放置されて荒れ果てた広場のように思えた。緩やかな傾斜がついていて中央に行くほど凹んでいる。
どうやらこの場所は山の上の方だったらしく見晴らしがいい。眼下には森。更に奥には水色の輝きが広がっている。
「わ……海?」
呟いた後で首を傾げた。だけど海にしては色が鮮やかなような。くっきりした水色……碧? エメラルドグリーンに近いだろうか。
不意に違和感を覚えた。何だろう?
この環境に異質な……。引っかかって言葉にできない。暫く考えて思い至った。
「止まってる」
世界には音がなかった。
こんな自然の多い場所なら当然、鳥の鳴き声とか木々が葉を揺らす音とか……静かな場所だったとしても何か聞こえるのでは?
私が歩く際に出る地面を踏む音、衣の裾に草が当たる音。
ただそれだけ。
眼前の海のような場所からの音もない。
「死んでるみたい」
足元の雑草に触れてみる。ただの雑草だ。手に収まったそれは、でも普通の雑草に見える。生きているように見える。
景色から目線を上げた。空は雲一つない。
ぐるり空を見渡した。太陽もないだろう事に気付いた。
「ははっ」
思わず笑ってしまった。いよいよ私の置かれている状況は大混迷に陥った。
この昼間のような明るさはどこから来るというのだろう。
今の私に……途方に暮れる以外に何ができる?
頭を抱えて泣き出しそうになった時。
がさ。
物音に身体がびくんと震えた。
こんな状況で……ものすごく怖いのに。確かめる。
ゆっくり振り返った。
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