揺れる

「もう乗れない」


 おっ。いい感じだ。


「大丈夫です。行ってください」


 隊員。それっぽいしぐさで、着ている特殊ベストを渡してくれる。

 SVTOLの扉が、閉まっていく。おそらく、この人数でも、かなり限界を越えているだろう。飛ぶのは至難の技になる。


「郊外に小高い丘があります。たぶん排除区域内だと思うので、緊着するならそこを」


「了解した。かけあってみる」


 よし。これでいい。


「あの」


 最後から二番目の、つまりわたしの前の、女。


「わたし。あなたのことが」


 そこまでで、扉が閉まった。

 音もなく、離陸していく。


 そしてまた、揺れた。

 そろそろか。

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