2月の青写真

「それが、2月の青写真、か」


「それにしても。拉致とは」


「誰かに喋ってるのか?」


「いや。お前達二人にしか」


「そうか」


「重いな」


「ああ。重い。これから俺達ふたりは、お互いに監視し合わなければならん」


「なぜだ」


「お前の秘密だからだよ」


「意味のある秘密ではない」


「だが、2月の青写真の存在理由そのものでもある。ここは、お前の集めた、お前の目的のための私兵集団だからな」


「そうか」


「まあ、これからのこともある。まずはこの事実を聞いたってことだけで、とりあえず今日は終わらせておこう。各々準備もある」


「そうだな」


 長が、出ていく。


「大変なことになったなあ」


「まさか戦争のための私兵だとは思わなかった」


「生きてる可能性。あるのかな」


「無いな。あいつ自身が骨でもいいからと言ったんだ。たぶんもう骨だろう」


「骨すら残ってない可能性は?」


「ある。というか、そのほうが高い。私的感情による一方的復讐だな」


「失望したか?」


「いや。長も人間なんだなって思った。ちょっと身近になったかな」


「俺はちょっと残念だよ。長にはずっと」


「ずっと?」


「いや、おれの希望か。2月の青写真でずっと、このまま目的もなく戦い続けていたかった」


「それは、まあ、俺も思わないでもない」


「それでも」


「戦いは必ず始まって、そして、いつか終わる」

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