子供の幻覚

「まだ、夢に見るのか」


「見るよ。最近は、起きていても見るようになった」


 死んでいった仲間が、寄り添ってくる。話し相手になってくれる。


「そのうちお前も死ぬぞ?」


「それは、なさそうだ」


 いま、生きている。だから、死ぬことはない。


「子供は?」


「置いていくしかないだろう。いちおうある程度の学はつけたし、役所の中には数年間困らないぐらいの物資もある」


「それでも」


「ああ。死ぬだろうな。そもそも役所の中にある物資が狙われる」


「部隊を出すか?」


「目衛の隊だろ。国内の鎮圧に出すべきではない」


「それでも親族扱いにはなる」


「いまは、国内どこもこんな感じだ。あの子供だけが、いい思いをするべきじゃない」


「お前に育てられた時点で、いいもなにもないと思うがな」


「それは、まあ、そうだ」


「よし。行くぞ。新たなる首長の誕生だ」


「よろしく頼むぞ、幕僚監殿」


「なんだそれ」


「幕僚長は罷免だから、別な名前がいいかなって。どっちみちひとりだけだから、幕僚っていうだけの話だけど」


「まぁ、なんでもいいか」


 殺し合いの日々が、はじまる。死んだ仲間との夜が、増えそうだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る