焚き火

「いいのか、これで」


「いいと思う」


 無理してないのか。言おうとして、やめた。


「あれ」


「先生だよ」


「へぇ」


「今はもう、恋人もいる」


 隣にいるのが、そう。


「何才差?」


「5だっけか。おまえと同じような」


 失言か。


「いや、ごめん」


「何が?」


「いや」


「あれだけしといて、まだ言う?」


 大丈夫らしい。


「そんなやつとくっつくとか」


「意味分からないか?」


「まぁ、私から見たら。うん」


 複雑な表情。


「私もね。あなたに負い目があるから」


「俺に?」


「なんでもない」


 彼女が、立ち上がる。

 ぽたぽたと、水のまじった砂が落ちていく。

 何の、負い目、だろうか。分からない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る