イリュージョン

「殺せって言われたか?」


 脚で弾き飛ばす。


「そういう任務」


「俺にもう」


 価値はない。というよりも。


「俺にもう仕事はない。ここへは公安の仕事で来てるわけじゃない」


「信じろと?」


「そうかよ」


 辞めても、結局。仕事からは逃れられない。


「俺に突っ込んで死ぬのが、おまえの任務か」


「道連れがだめでも、せめてきずひとつぐらいは」


「無理だよ」


 弾き飛ばして、下腹部の辺りを脚で踏みつける。


「無理だって」


 ちょっと押す。たぶん、動けないはず。舌を出した。


「あ?」


 呼吸はできるはずだろうに。


「そのまま。そのままで」


 脚をどけようとしたら、拒否された。

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