第49話 マンイーター。



「さて。ある意味で今日が初日とも言える」

「…………きのぅ、よる、だった、から?」

「そうそう。いや到着は昼過ぎだったけどさ、寝て起きて飯食って寝て、それで一日終わりって言うのはちょっとね」


 つまり昨日はゼロ日目とでも呼ぼうか。

 僕とネマがシャムの中で寝起きして、サーベイル二日目、いや一日目の朝、調整剤のお陰で二人とも時間ピッタリに、ほぼ同時に起床した。

 うん。昨日はゼロ日なので、今日が一日目なのだ。異論は認めん。


「いや『滞在初めて一日目』って表現なら間違っても無い? 昨日は現地入りした日だからノーカンで、アレは準備期間的な?」

「………………ねぇ、それ、って、じゅー、よぅ?」


 ネマに言われてしまった。全然重要じゃ無い。確かにクソ程どうでも良いね。

 ともあれ朝である。僕は最近ずっと一緒に寝たがるネマを連れて、シャワーと着替えを済ませる。シリアスの許しも出たのでもはや拒否する理由も無く、むしろネマを宥める時間が無駄だと分かったので最初から一緒にシャワーを浴びるのだ。

 ネマ的には甘え放題でずっと機嫌が良い。基本的に鼻歌フンフンさんだ。

 そうしてリビングに行くと、擬人化した神話級美少女メイドのシリアスが出迎えてくれる。これがホログラムじゃ無かったら朝の抱擁だって可能なのに…………!


『おはよう。良い目覚め』

「うん、おはようシリアス。今日もとびっきり可愛いね」

『世辞では無いと理解しているので、その言葉をそのまま受け取る。ネマもおはよう』

「………………おはょ、ござまふ」

「やっぱ何故かシリアスには敬語なんだよな…………」


 なんなんだよコイツ。

 僕らがシャワーを出るのに合わせて、シリアスが朝食を準備してくれて居た。メニューは、焼き魚、だと?


『海洋都市サーベイルは一部、漁業関する職業の朝が早い。この時間でも注文すれば鮮魚が届いた』

「…………つ、つまり、これはシリアスの手料理?」

『肯定。シリアスは一応、ラディアの婚約者だから。それっぽい行動をしてみた結果』


 幸せか?

 赤い切り身が乗った柄付きの皿に、ソイスープとライス、そして薬味が乗ったトーフなる意味不明な食べ物。

 これを『純ワフウ』と呼ぶらしい。そして魚はシャケって種類で、サーモンの仲間らしい。


『昨日ラディアが摂取したサーモンと、広義的には同種。しかし、スシやサシミに使われる生食用のサーモンは基本的にトラウトと呼ばれる淡水に住む種類で有る場合が殆ど。一般的、狭義的にはサーモンとシャケは別種である。サーモンはシャケの事を指す言葉だが、一般で使われるサーモンの呼称は殆どの場合はサーモントラウトの事である。ちなみにこの見た目でサーモンは赤身魚では無く白身魚に分類される。赤いのは白身がアスタキサンチンの作用で色付いてる為』

「凄い。シリアスがメイドさんに成った一発目の朝から飯食うだけで賢くなる」

「…………ものしり、さん」


 常時ネットに繋いで情報を取得してるシリアスは、確かにある意味最強の物知りさんである。

 さて、僕は最愛の恋人が作ってくれた手料理を食べよう。天に祈りながら。


「シリアスの料理に文句を言うつもりは砂漠の砂粒程も無いけどさ、このトーフってなんなの? 豆類を手間暇掛けてペーストにした後、ほぼ味の無いブロックに固めるって何か意味が有るの?」

『世の中には風味こそが味の骨子であるとする向きも有る。トーフはその手の食物で、更に風味が豊かである薬味とソイソースを使って食べるのはその為だと思われる』

「…………なるほど。自分でトーフの風味をカスタマイズして楽しめって食べ物なのか。妙に奥深い食べ物だね」

「……おぃひぃ、よ?」

「あ、ネマは気に入ったんだ? 僕も嫌いじゃないけど、この良さを真に理解するのはもうちょっと先かなぁ。シリアスが用意してくれたってだけで神の食べ物なんだけどさ」


 焼きジャケ定食をモグモグした。美味しかった。

 はぁ、最高か? 世界で一番素敵なバイオマシンに乗れる幸運を手にしたのに、その世界一可愛い最高のシリアスが朝食まで準備してくれる? は? 大丈夫か? 僕の不幸の先払い足りてる? ちゃんと吊り合ってる?


「…………メイドのシリアスも可愛いし。ガレージに降りたらカッコ良くて可愛いシリアス本体も居るし。幸せが過ぎて怖くなる」

『沢山褒められて、シリアスは愉悦。ちなみに、メイドブリムからヘッドドレスバージョンへの換装も可能。髪型もゆるふわウェーブからツーサイドアップ、ツインテール、ショートボブ等など、ラディアが好みそうなラインナップを準備中』


 な、何故、僕がツーサイドアップとかが好きだとバレてる?


『第一回のオスシ会にて、タクトグループの女児達をモデルケースに、当該のヘアースタイルを見るラディアの視線の動きや回数を計測した結果である』

「これ世の中のカップルだったらシリアスの行動がヤンデレ過ぎるって評されるだろうけど此処まで見てくれてたと思うとひたすら嬉しい僕の頭は何処かオカシイのかな?」

『正直、ラディアはシリアスに関する事だと割と頭がオカシクなる。否定出来ない。申し訳ない』


 シリアスからもそう思われてた事実に笑いそう。正直が過ぎる。

 さて、シリアスの愛情たっぷりモーニングを食べ終わって食器を片付ける。…………それもシリアスがササッとやってくれたのだけど。マジでシリアスがメイドさんになってる。


「…………シリアス、楽しい?」

『肯定。割と』


 割とメイドさんやるの楽しいらしい。なら良いや。


『祖国を始め、古代文明の技術利用は少し、殺伐として居た。なので、現代人が成すこの様な技術利用を、シリアスは楽しいと感じる。兵器として産まれ、兵器として生き、そして人の真似事まで叶う今が、シリアスは気に入って居る』

「もうホント朝から可愛いの止めてよシリアス。僕が死んじゃうからさ。尊くて死ぬ」

『ラディアの当該発言はかなりの確率で真実へ至るので、シリアスこそ止めて欲しい。安心してメイドが出来ない。心臓が止まると発言して、比喩では無く本当に止まりそうになるラディアが、シリアスはちょっと怖い』


 可愛くて死ぬから止めてVSメイド楽しいから死ぬな。……ファイ!

 でもシリアスが可愛いのが原因なんだから仕方なく無い? これ僕悪いの?


「じゃぁ、もうむしろ、もっと可愛いシリアスを大量に見せて飽和させてよ。慣れたら平気かも知れないし」

『シリアスはラディアを無条件で信頼したいと思って居る。実際に信頼して居る。そして、ラディアの当該発言が当てに成らないと言うダメな方向への信頼も厚い。よって、実行非推奨。ラディアはきっと、「本望」等と発言しながら瀕死になる』


 僕の事を僕よりご存知だ。

 しかし、こうやって女の子シリアスとイチャイチャするのクッソ楽しいな。メカのシリアスも当然最高だけど、やっぱり同じ生物規格に成ってくれると親近感も持てて良い。まったく、シリアスは一粒で何度美味しいのか。良い加減にしてくれ僕が死んじゃうだろ。


「さて、まぁ真実に近い茶番は置いといて。今日はどうする? ロコロックルさんからは連絡無いし、剣闘士でもやる? それとも昨日の子達と早速遊ぶ? 地元民が居たら都市観光も楽そうだし」


 子供目線の観光も中々乙かも知れない。大人目線では気が付かないポイントとか知ってそうだし。

 ネマはこう言う時、意見があると眠そうでも積極的に発言するけど、無い時はインテリアの人形みたいに大人しくなる。つまり今だ。

 コイツ、美少女としての完成度は神話級だから人形っぽさも凄い。喋らないと『揺れる機能付き実寸大愛玩ドール』に間違われそう。


『提案。ウェポンガレージ機兵武装店へ行きたいと思う。シリアスはマンイーターの早急な購入を推奨する』


 …………なんて?

 マンイーター? 人喰い? いや、知らない物だ。

 僕も色々調べて勉強は続けてるけど、その言葉はまだ知らない。

 それを察してくれたシリアスは追加で説明してくれたのは、つまりはバイオマシンに装備する対人兵器の事だ。

 この対人兵器って言うのは、『人が乗ったバイオマシン』を相手にする意味の『対人』では無く、サーベイルまでの旅路で殺しまくったバンザイアタック大好きなクレイジー達の様な生身の人間を殺す為の『対人』だ。


「あー、そうだね。ロコロックルさんの商売が何時終わるか分からないんだし、それは必要だよね。生身の人間をプラズマブラスターとかで殺すのコスパ悪すぎる…………」

『肯定。生身の盗賊を殺害する場合は、現在のシリアスに搭載された武装類では逆に不適切。オーバーキルは自身の財布もオーバーキルしてしまう模様』


 おっとぉ、シリアスが面白い事言ってるぞあははははちくしょう!

 生身でライフル撃つの下手でごめんねぇぇえ!?


『盗賊に対応するならば、低価格な炸薬式の連筒機関砲ガトリングで充分。弾薬費も安く済む。人間の携行規格弾薬ならば四桁単位で装弾可能』

「そうだねぇ。て言うか、人を撃つだけの炸薬銃の弾薬なら、そう特殊な金属も使ってないし、弾薬生成用レプリケーターと弾薬用のマテリアルカートリッジを買えば良いもんね。その分ちょっと高くなるけど、その後は補充も容易になるし、マテリアルの状態で積めば積載量的にも助かるし」

『機体への装備はシリアスがセルフで行える』


 と言う訳で、シリアスの提案通りにマンイーターを買いに行く事になった。

 武装の購入なんて最後で良い、とか思ってたらロコロックルさんが仕事を終えて明日にでも「さぁ帰るぞ!」ってなるかも知れない。

 流石に前日の知らせで翌日帰るとかは無いけども。でもそうなってから買いに走っても間に合わ無い可能性も有るのだ。拘束費を貰ってる立場でロコロックルさんに待ってもらう訳にも行かない。

 だから、今の内に用意して置くのがベターだ。そうしてロコロックルさんが仕事を終えたら僕もササッと帰れる様にして置くのが、拘束費を貰って過ごしてる傭兵の正しい姿だ。


「じゃ、人喰い武装マンイーターを買いに行こうか。予定は炸薬式の安い奴だけど、良い物があったら他のでも買おうね」

『肯定。極小型なら逆に、プラズマ兵器も視野に入る。大きさ故にエネルギー消費も少なく、弾薬費が掛からず、装填作業も必要無い。プラズマ弾は多少弱くても人間には致命的』

「なるほど。…………いや、聞けばそっちの方が良さそうにも思えるね」

『しかし、やはり炸薬兵器と比べて高額。輸送任務でしか使わない様な武器に資金を投じる理由が薄い』

「…………ああ、そうか。この仕事終わったら最悪はもう使わない可能性もあるのか」


 ふむ、悩みどころだな、

 取り敢えずネマにお願いしてシャムを出してもらう。目的地はシリアスが調べてくれた場所で、ギルドのお兄さんから貰った情報にもその店が有ったから優良店では有るのだろう。

 駐機場を出てすぐメインストリートへ。朝に見るサーベイルも中々綺麗だ。


「……わりと、ちかぃ」


 ネマの言う通り、目的の店舗は近かった。メインストリートに出て五分で到着だ。

 サーベイルの特徴の一つとして、僕らが寝泊まりしてる契約駐機場の様な特殊な建物で無ければ、どのビルも見た目がそこまで変わらない事が挙げられる。しかし、あくまでも『そこまで』であって、完全にコピービルが建ち並んでる訳でも無い。

 ネマが駆るシャムで辿り着いたのは、そんなちょっとした差が逆に目立っている場所で、濃い鈍色が目立つビル群に於いてソレはまさかのボーダーカラー。

 ハッキリと色を変えてる訳じゃないけど、薄い鈍色と濃い鈍色が交互に重なったカラーリングの極太ビル。


「目的の店はその中の…………、十四階だね」

「…………わかた」


 驚く事に、ビルの中にバイオマシンそのままで入って行ける作りに成ってるらしく、駐機場に停める事も無くシャムでビルの中に入って行く。

 ああ、なんだ。ビルに入ってる店が軒並みバイオマシン関連なのか。そもそも徒歩では入れないビルなのか。

 端末で少しビルの情報を調べてると、ネマがペダルを踏んで進む先に超巨大エレベーターが見える。

 マジか。目的の階までバイオマシンごと運ぼうって事? 効率って言葉をご存知ですか?

 普通に生身の人間が入って、買った物を外に運ぶ方が楽だと思うんだけどなぁ。


「………………おも、しろぃ」

「発想は確かに面白いね」


 四基程が稼働してるバイオマシン用エレベーターの内の大型用に、他の利用客の乗機と共に乗って上階へ。行く階の設定は機体からコンソールで操作するみたいだ。ネマがコックピット脇のコンソールパネルを引っ張り出してポチポチしてる。

 一度に四機まで乗せられるっぽくて、機体同士の幅はある程度保つのがマナーみたいだ。まるで普通の人間が乗ったスカスカのエレベーターみたいな利用方法だ。


「…………けっこぅ、むずか、し」


 比較的上手いとは言えまだ初心者のネマは、エレベーターに同乗した他の大型とバランス良く距離を保つのに苦慮してる。ダングシャムはスライド出来ないから、こう言うのに乗る時は一発勝負するか、入ってから中でこまめに前進と後進を刻むしかない。

 そんな微妙な下手を打って恥ずかしそうにするネマを見守りながら、ズワッとエレベーターが動いて目的地まで上昇していく。流石にバイオマシンくらいの質量が有ると速度が出せないのか、二○秒ほど掛かった。

 エレベーターには入口と出口でゲートが二つ有って、内部で回頭しなくても良かった。入口から入って、止まって、到着したらそのまま真っ直ぐ直進して出口から出る形だ。

 このエレベーターに同乗したのは一機だが、その一機も目的地が同じだったのか一緒にエレベーターから出る。


「なんか、店に行くだけでも大変だな」

「…………ぅん。たぃへん」


 そうしてやっと辿り着いたのは、超大型ビルの中にある、超大型ガレージ店舗『武器屋レッセル』だ。分かり易い名前いいゾ〜。

 レッセルはエレベーターから出た時点でもう既に店内って形の店で、僕らが降りたエレベーターには買い物を終えただろう大型戦闘機がのっしのっしと入って行く。

 店内はバイオマシンが人間の様に店内を歩き回って買い物を楽しめるコンセプトらしく、今すれ違った大型戦闘機もそうやって買い物をしたんだろう。

 なんと言うか、イメージで言うと人間用雑貨店舗をそのままバイオマシンサイズにした感じ。

 これ、操縦が下手な人はそもそも利用出来ない気がする。他の客の機体にぶつかったりしたら大変だし。


「………………ちょっ、と、こぁぃ」

「がんばれぇ〜」

『指摘。応援が雑』


 コックピット内には流石に多目的ボット君は入れないけど、それなら別途ホロ装置をコンソールソケットに挿しとけば良いので、メイドシリアスは依然として一緒だ。


「そも、武器屋だもんね。此処を利用する戦闘機免許持ちなら、これくらい余裕やろって事なのかな」

『恐らくはそう』


 ネマが慎重にシャムを進めて店内へ。

 店舗の端には機体を停めて降機し、その上で見て回る人間用のスペースも有った。僕らが探してる武器の規格を思えば、多分目的地はあそこだ。

 気の所為じゃなければ周囲から微笑ましい視線と邪魔に思われてる視線が半々くらいの中でやっと辿り着いた人間用スペースにシャムを停めて、全員で降りる。

 この『全員』にはシリアスも含まれてる。それも機体本体じゃ無くて多目的ボット君を率いるメイドシリアスだ。

 なんとシリアス、都市回線が利用出来る場所で有れば多目的ボット君が入れる場所って制限はある物の、何処でも行けるらしい。最高かよ。これからずっと一緒だからね!

 そうやって僕、ネマ、シリアスの三人は人間用スペースに降りて、品物を見て回る。


「人間サイズの場所とは言え、そもそもバイオマシンに積む武器を並べてるから、どれもコレも大きいね」

『ビークルのディーラーガレージがイメージとしては近い』

「あー、なるほど。サイズ感で言うとそうかな。でも陳列形態が全然違うけど」


 武装が詰め込まれたコンテナがデデンと口を開けて中を見せてたり、専用の什器に乗ってたりして、色々とある。

 僕達が探してるマンイーターだけじゃなくて、通信機能を補助する為のアンテナとか、ゼロカスのデザリアに着いてる様な精密作業用マニピュレータとか、色々と置いてある。

 良く見れば人間用の武装も申し訳程度に置いてあるけど、見てる者は少ない。


「ああ、この辺がマンイーターかな」

『中々種類が豊富』

「…………しゅごぃ」


 マシンガン、ガトリング、ミサイル、ロケット、グレネード、果てにはチェーンにくっ付いたハンマーとか有るぞコレ。

 …………いやアリだな? ハンマーはアリだな? 僕はシリアスの体でゴミクズを直接潰すのが嫌だったから避けたけど、対人用の格闘質量兵器は充分にアリだな?


『否定。それなら、グラディエラのシザーアームにプラズマエッジ加工を施し、格闘攻撃で消し飛ばす方が良い。対バイオマシン戦闘でも使用出来る武器の方が費用対効果が見込める。何より今回の依頼を終えて腐らせる事も無い』

「………………それもそうか」


 いくら弾薬費も無くクレイジーを殺せるハンマーだと言っても、それなら対バイオマシン戦闘にも使える武装で、対クレイジーにも有効な武器を探した方が有意義だ。

 ふむ、判断基準が複雑化して来たな。


「取り敢えず、当初の目的通りにガトリング系を探そうか。もしかしたら、マンイーター規格でもバイオマシンにまで使える何かが見つかるかもだし」


 見て回ると、長方形の箱っぽい武器がバコッと開いて可変し、ガトリングに成るカッコイイ武器とか、最初からガトリングの形してるけど造形が無骨でカッコイイ奴とか、箱型冷却装置の中にガトリングを入れちゃってて砲門しか見えない奴とか、色々ある。


「なんか、こう、ワクワクするね?」

『微笑。ラディアも男の子』


 そりゃそうだよ。僕は女装少年じゃなくて男の子なんですよ。お分かり頂けて何よりです。

 無骨でメタリックな武器の数々を見てると、なんか心がムズムズして楽しく成る。


「お、シリアス、これ良くない? 有効射程が三○○メートルしか無いけど、燃費の割に威力が高いプラズマガトリング」

『…………試算。このスペックであれば、格闘攻撃が可能な距離に於いてはバイオマシンに対しても微量のダメージが期待出来る。戦闘用の装甲であれば難しいが、ゼロカスタムが相手ならば充分に有用。そして、パルスシールドに対しては燃費以上に効果が望める』

「ああ、エネルギー干渉させて消費させるんだね。うん、可変式なのもカッコイイし、コレにしようか?」

『苦笑。ラディアの可変武装に対する憧れは何処から来るのか』


 だってカッコイイよね? 『ガシャッ』て言う展開音だけでもライスが食べれる。

 僕は気になったガトリングを買う事に決め、そのままシリアスの何処に装備するのかを本人と相談する。

 シリアス的には少しだけコンシールド部分を弄ってそこに追加するのが良いと言う。

 同じプラズマ兵器なのだから、コンシールドブラスターに供給するエネルギーをバイパスする形で流用するのが一番楽であり、普段はコンシールド格納スペースに仕舞って置けるのも非常にグッドだそうだ。

 コンシールドブラスターみたいに展開して使用する関係上、それ用のフレキシブルアームとかを別途購入して色々と調整する必要は有るが、手間と言えばそれくらいらしい。


「ふむ。コンシールド周りは繊細だって聞いたけど」

『否定。繊細なのはプラズマ兵器であり、コンシールドウェポンに纏わる色々に着いては「複雑」と呼ぶのが正解。しかし、ゼロからコンシールドに移行するのと、コンシールドのベースが完成している場合とでは難易度も話しも変わってくる。要するに、マンイーターを追加する程度であれば問題無い。四○分も使えば仕上がる』


 だ、そうなので購入確定。

 何やら少しだけパルス技術を使ってプラズマ弾の保持をする事でエネルギー効率を上げたらしい新型のマンイータープラズマガトリング砲らしい。


 商品名・M9942ハイスキュラ。


 形状は分厚く細い板を三枚、トライポッドの様にくっ付けた見た目である。

 これが射撃時に板同士が離れる形でジャキッと展開して、スリーバレルのガトリング砲になる。砲口も武装展開時に少し可変して、コンシールドブラスターのプラズマ砲の砲口と同じ様な形状に変化する。横から見ると『櫛』っぽく見えて、正面から見るとエアコンの送風口っぽいアレだ。

 価格は一○万。対人間用の兵器にしては破格の値段だ。流石プラズマ兵器、クソ高い。

 しかし腐らせてもコンシールド格納部に死蔵しちゃえば邪魔に成らないのは非常によろしい。


「シリアス、ハイスキュラをシリアスに繋ぐのに良さそうなアームの選定は任せて良い?」

『肯定。と言うか、もう決まっている』


 サクサク決まってお会計。

 ハイスキュラ二門とフレキシブルアーム二つに、それらへ使うコード類やら何やらを合計で、約四二万シギルで御座います。結構するなぁ。赤字に成らないと良いな。

 さて、お店の中にはその場で装備を付けてくれるサービスも有るが、シリアスを預けたくないので断った。

 でも、あのスタッフ側っぽいアレ、装備を換装する為に居るだろう工作機は気になった。


 大型中級衛生工作機、キツネ型・ナインテールナット。


 うん、超珍しい機体だ。流石にミラージュウルフ程じゃないけど。

 白銀の大きなキツネさんで、九本ある尻尾が全部高性能な作業用マニピュレータになってる大型の工作機。戦場で怪我したバイオマシンをその場であっと言う間に整備したりする、衛生兵的なバイオマシンだ。

 国内に生産される古代遺跡が無くて、二つか三つくらい遠くの国から輸入しないと手に入らない機体だった気がするんだけど。

 あれ、ラビータ帝国で買うと幾らになるんだ…………?


『…………質問。浮気?』

「--はぁぇっ!? え、なんでっ!?」

『工作機に対して熱い視線を感知。シリアスは元工作機。現在も心は工作機』

「いや待って違うよッ!? 浮気違うッ! この世にシリアス以上の工作機とか居る訳ないじゃんッ!?」

『………………そ、それは過大評価』


 いや僕の贔屓目を除いても適正評価だと思うよ? だって技師無しで自己整備とかしちゃう工作機が他に居るのかって話しだし。

 シリアスへ誤解を解いたら、さっさとこの武器屋レッセルで買った品々をシャムに積んでもらう。シリアスも早速、ボットを操作して武装増設作業だ。


「さーて、買った物は試したく成るよね?」

「………………なぅ」


 ネマのおっかなビックリ操縦にて巨大ビルを出た僕らは、次の予定を考える。


「……取り敢えず、都市を軽く見て回りながら時間潰して、昼にはアクアパッツァを食べに行こうか」

「…………えへっ♪︎」

「それで、午後はギルドでオススメされたお店でも冷やかして、今日は終わり。で、明日にスキュラの試し撃ちへ行こうか」


 シャムの最高速は時速三○○キロ。

 来る時はシリアスの巡航速に合わせて来たけど、シリアスを格納してシャムだけで走るなら、盗賊が出るだろうエリアまで半日で行ける。

 流石に今からじゃ微妙だけど、今日は適当に観光してから、明日の朝イチで都市を出て、昼頃には盗賊ぶっ殺して、夜には帰って来る予定で行けば強行軍も可能だろう。

 ギルドで盗賊討伐の依頼でも探してから行けば、まぁ赤字には成らないでしょ。その為にマンイーター規格のスキュラ買ったんだし。


「さてさて、じゃぁ明日の予定は人狩りマンハントで決まり!」


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