第28話 早過ぎる兆し。
VRバトラーデビューから数日、僕は二、三日をデザリア狩りに使い、次の日を休みとしてVRバトルで遊ぶ生活を始めた。
そして、セルクさんからショートメールを貰って、僕の目は死んだ。
『早速やってるねぇ〜♪︎ 応援するゾ〜♪︎』
セルクさんから送られて来たのは、とある動画サイトのアクセスコードで、そこには、なんと、僕が映っていた。
「なんでや。なんでこうなるんや…………」
動画は、僕のVRバトルで初めて対戦した長距離砲の使い手がアップしてるムービーで、タイトルは『初心者ボコろうとしたら、美少女ルーキーちゃんにボコられて新しい扉を開きかける件について』だった。開くな、閉じてろ。
あの対戦者さんは、VRバトルの配信ではそこそこ有名だった。野良バトルをメインに活動して、長距離砲によって相手をハメ殺すプレイスタイルでVRバトルを遊んでる。
その相手を選ばない嗜虐的なダーティプレイがそこそこの人気と、そこそこのアンチを集める配信者なのだけど、そこに登場したのが、僕だ。
シリアスが調整したボイスチェンジモジュールによってきゃるっきゃるになった声で可愛くはしゃぎながら、長距離砲を全弾捌きながら肉薄して初戦下克上を果たす美少女ルーキー。そう、僕だ。
対戦中のローカル通信は音声だけだったけど、配信時にはコックピットの様子も記録され、配信に乗せられるシステムとなってる。
勝手に相手の様子も映して良いのか疑問に思ったけど、シリアスによると、ゲーム規約で既に同意してるから仕方ないそうだ。それ同意したのはアカウント作ったシリアスであって僕じゃ無いけどね!?
まぁ良い。で、ダーティプレイをする強者を初心者が華麗にブチのめすムービーは、かなり再生されてて、なんと六○○万再生もされてた。
帝国の人口を考えるとまだまだ。でも中堅配信者のムービーだと思えば、かなりの再生数なのだと言う。と言うか下手したら国外にも…………。
確かに、彼がアップしてる他のムービーを確認すれば、そっちの再生数は僕の出演したムービーの半分以下だった。
クソがっ。僕にもロイヤリティ払えよ!
もう、何が嫌って、ムービーのコメント見ると物凄い人気なんだよ。
…………僕が。
そう、僕が。女装した僕が。動画の中できゃるっきゃるしてるディアラちゃんが、めっちゃ人気なのだ。
バトル終了後には、僕のキャラデータがリザルトで見れるらしく、ディアラの名前とゴシックシリアの機体名も既に知られてる。
あ、例の人型シリアスも映ってて、めっちゃ可愛かった。
それに関しては動画アップがナイス過ぎるので褒め讃えたい。
僕と双子コーデに見える女の子が複座に乗ってて、黒髪の僕と銀髪のシリアスが対比しててテンションブチ上がった。
リザルトには、同乗してる複座の子は『リアス』って名前のオペレーターになってた。シリアスの下三文字でリアスね。可愛い。
『ラディア、早くディアラになると良い』
「ちなみに、忘れてたけど週一女装の約束はどうなった?」
『VRバトルは別件だと主張したい』
「………………VRバトルにディアラで参加するのは譲るから、週一の女装は無しね?」
『………………………………グッ、了解した。シリアスは妥協する』
「凄い溜めたね?」
何とか生存権を獲得した僕は、今日もVRバトルに挑む。
まだランクマッチには参加せず、今はバトリーを稼いでパーツを吟味してるところだ。
「コメントからの圧が強い」
『公式戦参加を熱望されてる。早くランクマッチ入りして欲しいと、嘆願メッセージが
「あの人に言っても僕には届かないのに…………?」
『シリアスが、今届けた。えっへん』
シリアスのエッヘンが可愛い。
まぁ良い。装備を整えたら嫌でもランクマッチに行くさ。僕は対人戦の経験と、新装備の試運転がしたいんだ。
ちなみに、シリアスのホログラムダミーが僕にも見える様にするプロジェクターは、既に買ってある。めっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃ可愛かった。死ぬかと思った。思わずプロポーズして受け入れられちゃった。でへへ。
「当分はバトリー貯金だけどねぇ」
『シギルを使えばすぐ』
「いやいや、使わなくても貯められるんだから、普通に貯めようよ。現実で使う為の装備を模索してるのに、現実で買えなくなったら意味無いじゃん?」
イカンな。シリアスに課金癖が着きそうだ。
早いとこ着替えて、下に戻ろう。それでサッサとバトリー貯めて、装備を更新しよう。
暫くはこのゴスロリ衣装で通すらしく、今日も今日とてゴスロリディアラちゃんだ。シリアスはイメージ戦略がどうとか言ってた。
シャワーを浴びて、バスドライヤーでしっかりと水気を飛ばし、それからコネクテッド・ヘアコンタクトを使って髪をニュルニュル伸ばして、着替えて、オートメイク先輩にお化粧をして貰う。
僕もう、自分が何やってんだか分からない。
が、頑張れ僕。将来、シリアスに最高のカスタムをプレゼントする為に必要な行為なんだ。そう思わないと自分の個性にヒビが入る。
もうさ、なんだか自分がもしかして女の子なんじゃね? って思って来たけど、僕は頑張るよ。
そうやって着替えて、精神の保護もして、やっと僕が下に降りると、そこでは何やら、おじさんと話してるタクトが居た。
なんで居るんだよッッ……! ぶっ飛ばすぞ!?
理不尽極まりない内心を我慢して、シリアスに逃げ込もうとしたけど、遅かった。
タクトは僕に気が付き、声を掛けようとして固まり、それから必死に笑いを堪えて口を開いた。
「…………あ、ラディっ、…………んぷっ、今は、ディアラって呼んだ方が、……良いか?」
「ぶっ殺すよ?」
「なんでだよ! 我慢しただろ!」
「我慢出来て無いんだよなぁ……」
漏れてんだよ、笑いが。
一応、僕が自分からプリプリなロリ衣装を着た訳では無いと理解して貰う為に、事情を全部話した。
するとタクトはキラッキラの目で僕を見て、こう言った。
「俺も乗せて☆」
「条件が有る」
タクトもバイオマシン同士のバトルとか超見たいってはしゃぐので、僕は条件を儲けた。
「…………なに?」
「タクトも女装」
「断る」
「じゃぁ乗せない」
「なんでだよ……!」
当然だよねぇ?
僕はVRバトルするのにシリアスから女装を定められてるのに、タクトだけ無条件とか、不条理が過ぎるってもんだ。
「ちなみに、意思は硬い」
「マジかよ……。俺なんて女装させても、仕方ねぇだろ」
「僕も自分ではそう思ってたよッ! でも自己評価と周りの評価が一致しないんだよ!」
「いやだってお前可愛いもん」
「タクトだって女装したら可愛いかも知れないだろ!」
「んな訳ねぇじゃん」
僕はシリアスを見た。
シリアスは大きな体で頷いた。つまりはそう言う事だ。
「…………えっ、嘘だよな?」
「本気だよ」
『任せて欲しい』
「いやいやいやいや、待て待て待て待て! 俺だぞ!?」
「だから、僕も自分ではそう思ってたんだって。シリアスが本気で演算した女装させ
乗るか、反るか。二つに一つだ。
…………このハードボイルドな要求の中身が、女装なんだよ? 信じられる?
ちなみにおじさんは、僕らのやり取りを見て腹を抱えて笑ってる。ちくしょう、何時かおじさんにも女装させてやる……!
「道連--……、女装するなら、乗せる。しないなら、乗せない」
「いま道連れって言った? なぁ道連れって言ったか?」
「…………死なば諸共!」
「一人で死ねやぁッ!?」
なんて事言うんだ。
「…………クソっ、ガチのマシンバトルとか、早々見れるもんじゃねぇし、しかもコックピットからっ」
「ちなみに補助席ね。シリアスがホログラムダミーで複座に座るから」
「なんだそれ」
「オリジンだってバレると僕が身バレして女装ネット配信が全国に披露されるから、僕のサポートをするオペレーターが居るって設定」
「マジか」
「それと、なんかディアラちゃんって人気出てるらしくて、タクトが男のまま乗るとファンに何されるか分からないよ」
「え、こわっ」
「もっと言うと、道連れ云々は別にしても、タクト繋がりで身バレするかも知れないから、やっぱりタクトには女装して変身して欲しい」
「いや、それ、変装なら女装じゃ無くても良いんじゃね?」
「タクトは、シリアスが施す別人レベルの女装を上回る変装が出来るの? タクトの変装が失敗して身バレしたら、シリアスでグループ拠点乗り込むからね」
僕は本気だ。
こっちは身バレ怖くて機体の色まで変えてるんだぞ。タクトの不注意でバレたら本気で怒る。
「……………………クソォ! 分かった! でもアレだぞ! 画像に残したり、ウチのメンツに教えたりすんのはナシだからな!」
「それは勿論。僕、別にタクトをイジメたい訳じゃないもん。ただ不公平だなって思ってストレスが凄いから……」
と言う訳で、シリアスの演算力が迸る。
そして三○分後。
「…………嘘じゃん」
「うん、僕も毎回それ言ってる」
「………………いやマジ嘘じゃん」
当たり前だけど、シリアスが本気出したら、元の顔が綺麗なタクトが女装出来ない訳が無いんだよ。
今僕の目の前には、灰髪の美少女が立っていた。こう、僕とはベクトルが違う女装だ。
やっぱり僕やコックピットのデザインに揃えて、タクトもゴシックな装いだ。そう、ゴシックなんだけど、タクトのはロリータを排してカッコイイ感じのゴシックドレスだ。
「いやぁ、超似合ってる」
「おう、似合ってるぞ!」
「ラディアもおっさんも煩い! 早く始めようぜ! この格好で外に居たくねぇ!」
機体の中でしか着ない前提なので、僕もタクトも帽子の無いファッションだ。
可愛いゴスロリの僕とシリアス、改めディアラとリアス。可愛いより麗しいって表現が似合うカッコイイ新人、タクト。いや名前どうしよう?
「タクト、名前どうする? 間違ってもその格好でタクト呼びされたシーンがネット配信とか嫌でしょ?」
「…………任せる」
「シリアス?」
『タクトの名前を捩り、ラディアのディアラ呼びと揃え、ターラ、を提案する』
じゃぁそれで。
僕とタクトはシリアスに乗り込んだ。
タラップを踏んで中に入ると、早速ホログラムプロジェクターが作動してシリアスの擬人化ダミーホログラム、リアスが現れる。めっっっちゃ可愛い。サラサラの銀髪銀眼が素敵過ぎる。
「おわっ、おぉぉ、…………シリアスか?」
『肯定。しかし、呼称をリアスと改めて欲しい。そして、機体名はゴシックシリアなので、重ねて注意を要請する』
「お、おう。気を付けるわ。…………いや可愛いな?」
「でっしょ!? 僕のお嫁さん可愛いでしょ!?」
「おう。シリアスの中身がこれって言うなら、もうなんの比喩でも無くストレートに羨ましいわ」
「何言ってるのタクト。じゃ無くてターラ。シリアスは外も中も可愛いんだよ」
「あ、うん。お前はそう言う奴だよな」
まったくぅ。そこを間違えちゃいけないよ。
シリアスは本体も最高に可愛くて、なんと中身は天使だって言うのが素敵なんじゃ無いか。
「さてさて、じゃぁ複座はリアスが乗るから、ターラは補助席使ってね」
「…………補助席だとあんまり試合が見れないじゃん。俺、女装までした元は取りたいんだが」
『安心して良い。ホログラムプロジェクターの性能が良いので、ホログラムを利用して擬似モニターを補助席の周辺にも展開し、メインモニターの映像を出力する』
「流石シリアス! じゃなくてリアス!」
「…………ターラ、ホントに気を付けてね? 身バレしたら道連れだからね?」
僕はメインシートに、リアスはサブシートに、ターラはサードシートに座り、パイロットシステムを起動してセーフティロッドを降下する。
ホロバイザーも起動して、メインモニターも展開。完全にシステムが立ち上がったら、リアスがVRバトルのプログラムを実行してネットワークにアクセスを開始する。
『ログイン完了。同時に各種モジュール起動』
「よーし、ディアラちゃん暴れちゃうぞ☆」
「何そこのこッ……、声ぇッ!? え、俺の声もッ!?」
説明して無かったので、タクトが慌て始める。
取り敢えずボイスチェンジモジュールの効果で、これも身バレしない為だと説明する。タクトは遠い目をしていた。
「…………身バレ防止に気合い入れ過ぎだろ」
「それくらい嫌なんだよ。ターラも、嫌でしょ? それとも、名前で呼ぼうか?」
「悪ぃ、俺も気を付けるから、勘弁してくれ」
そうして、僕もターラも、きゃるっきゃるする事に。いやターラはそうでも無いけど、寡黙なゴシック美少女を演じ始めた。
ベースがカッコイイと寡黙になれるのズルくね?
「まぁ良いや。今日はどうしよう? クエストかな?」
『クエスト推奨。現在のディアラとリアスの知名度では、野良バトルは危険』
「ちょっと有名ってだけでムービーのネタに粘着されるんだもんなぁ」
初参加の日から、まだ二回目の休日。けど狩りに出た日も夜は暇な時間にVRバトルにログインしてたので、数日分の経験はある。
その際、例の動画のせいで都市内でもやたら他の機体から接触を受けたり、都市から一歩出ただけで攻撃通知を受けたりして、ちょっと辟易してる。
戦いは良いのだけど、動画を見てから僕の機体に対する有効な装備を揃えまくってから来る人とか居て、あんまり楽しくない。
こう言う対策をガチガチにするプレイを『メタ』って言うらしいけど、僕をメタって来たプレイヤーが二回連続で来た辺りから、僕はクエスト無しで都市から出るのを止めた。
その時は一回勝って、一回負けた。けど、なんか得るものが無い戦いだった。
勿論、対策して来る人との戦いも重要な経験何だろうけど、なんと言うか、その二人は違う人だった。
ムービーのネタにさえ成れば良いって感じで、魂がヒリ付く様な熱さも無ければ、クソみたいな戦術に徹しようって言う冷たさも無かった。
マジでつまらなかった。一人目は対策を食い破って肉薄したらアホみたいに慌てるし、二人目は僕が絶対に敵わないレベルのガチガチ強機体に仕上げてあるのに、煽る為にわざわざキルゾーンに出て来てアホみたいに被弾したり、それでブチ切れて引き撃ちし始めたり、ゴミみたいな試合でムカついたから
「…………なぁなぁ、戦わないのか?」
「今日は戦うつもり何だけど、その前にもう少しだけ稼いで、一気に装備更新してからランクマッチ行くんだ」
今、ゲーム内通貨だからこそ稼ぎ易いバトリーを三○○○万くらい貯めてて、もう少しで予定のカスタムが全部出来る額に届くのだ。
シリアが初期に課金してた分の一五○○万も大きいけど、数日で四桁万稼げるってゲーム内凄いなぁって思う。
「このゲームさ、カスタムのお試しする為に始めたから、シリアでやりたいカスタムが最優先なんだよね。ゲーム内で勝ち易い流行りとかは全部無視してさ」
「あー、そうか。ゲームだとそう言うのも有るのか」
そう。僕って別にゲーム内でチャンピオンに成りたい訳じゃないし。
あくまでシリアスと楽しく戦って、オマケに装備の体験まで可能だからって始めたんだ。だからそっち優先するよ。
「まず
『本当なら、バーニア機関も入れたかった』
「入れたいねぇ。シリアスの弱点が機動力って分かったのは、あの引き撃ちクソ野郎のお陰かな?」
演算による砲撃予測線のお陰で、弾を避けるのはまぁまぁ出来たんだけど、引き撃ちクソ野郎の足に追い付けなくて結局勝てなかった。なので、本当は機動力を上げるためにバーニア機関を機体の底面に入れて、背中の後方にジェットブースター、脚には機動制御スラスターを入れたかったんだけど…………。
「その足周り揃えるだけで、もう三○○○万掛かるからねぇ」
「バイオマシンのカスタム沼過ぎるだろ…………」
『肯定。しかも、この計画でもセレクトした装備は中堅』
「怖すぎる」
今の機動力でまた引き撃ちクソ野郎の同類に遭ったらどうするのかと言えば、長距離砲で装備品ぶっ壊して行く予定だ。
その時は、もう手加減などしない。あんなクソみたいな戦闘を僕に強要するなら、こっちもシリアスの演算フル活用して超精密狙撃で装備品ぶっ壊してやる。
射撃武器を丸裸にすれば引き撃ちもクソも無いだろう。砲口にピンホールショット決めて裸の王様にしてやる。その後延々と追い回して撃ち殺してやる。
「ほい、クエスト完了!」
「アッサリだな」
「現代のAIが制御する擬似野生機とか、僕とリアスの敵じゃないよね」
ゲーム内の輸送任務を終えた僕は、報酬を貰って都市に帰る。クエスト中はインスタンスフィールドなので、野良マッチはしない。
「ほい、ほい、ほい! カスタム完了!」
「これまたアッサリ」
「ゲーム内で換装一週間とかやってられないよね」
『時間短縮もゲームで武装試射出来る利点』
予定通り、武装の換装とコンシールド増設でカスタム終了。
うひゃぁ、装備の切り替えで頭が混乱しそう!
「よーし、都市マッチ行くぞー」
『ランクマッチは初参加。マッチングレートは最低。初心者と当たる可能性が高いと予測される』
「これも初心者狩りって言うのかな☆」
都市のマッチング専用ホールに移動して、マッチング申請。
初めて使うけど、マッチングすると勝手に機体が専用アリーナへ転送される仕組みだ。
「お、マッチングした。…………フィールドに参りマース☆」
「テンション高いなぁ」
「あははっ、僕ってほら、戦うの好きだからさ」
「いや、『ほら』とか言われても知らねぇよ。そんな『皆さんご存知の通り』みたいな顔すんなや」
『ターラ、ディアラ、そろそろコックピット内部も記録される。態度に気を付けると良い』
「「りょーかい」」
マッチングしてシリアスがキュイーンって転送され、アホ程広いコロシアム型のアリーナに飛ばされる。
見れば、一キロ程離れて対戦相手の機体が見えた。あれはウェポンドッグかな?
「ウェポンドッグは小型中級の汎用戦闘機。シリアと同じサイズだけど最初っから立派な戦闘用として作られた機体だね。…………どっちだろ ? 実機持ち? ライドボックス?」
『戦えば分かる。そろそろ通信開始』
パッと見はノーマル機に見えるけど、ノーマルでもウェポンドッグは戦闘機だ。油断すると危ない。
『よ、よろしくおねがいします!』
「あ、はい。よろしくおねがいしまぁ〜す☆」
『わぁ、可愛いです! ポロン以外にも女の子居たですかっ!?』
対戦相手とホロ通信が繋がり、対面する。相手はなんと、同い歳くらいの女の子だった。
クリーム色の髪がふわふわしてる女の子で、笑顔が非常に初々しくて可愛い。服も良く見るタイプの白いパイロットジャケットなのだけど、着こなしなのか、それとも実はジャケットが特注品なのか、凄く良い所のお嬢さん感が滲み出てる。
マジかぁ。その、戦闘機に乗ってるギャップが凄い。なるほど、セルクさんが言ってた人気云々も、ちょっと分かる気がしてきた。
確かにこんな女の子が頑張って戦ってたら、そりゃ応援の一つもしたくなるだろう。
対戦前のホロ通信は時間が決まってるのか、三○秒ほどで一旦切れる。けど、すぐにローカル通信で繋がるから会話は可能だ。
なんか、凄い自惚れた考えだけど、あの子がライドボックスで参加してるなら、実機持ちの現役傭兵がゲーム内の恩恵使ってフル武装してからあの子を襲うって、こう、弱いものイジメ感がヤバい。
なので、僕は予め、一応の予防線として女の子に声をかけた。
ちなみに、まだ機体は動かせず、今はバトル開始のカウトダウン中だ。一○カウントから始まる。
「えと、対戦相手の…………、ポロンさん?」
『はい! ポロンです!』
「あの、僕、実は実機持ちで、戦闘機免許も持ってるんですけど、その、本気とか出しても、大丈夫ですかね……?」
『わぁっ!? す、凄いですっ! 戦闘機の免許って、すっごく難しいんですよねっ!? 尊敬するです!』
僕から話し掛けたとは言え、カウントが終わっても女の子は動かず、お話しが続く。
な、なんだこれ。
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