第4話
『箒よし!
摩希は自宅古民家で点呼をとっていた。
なおローブとは黒のロングコートを差している。
白磁の葡萄の
摩希は後者を選んでいる。
逆に失敗した場合、摩希が目をつけられる可能性がある。
(どうせ世間では
そんなに言うならなってみせようではないか!
摩希は毛染めを手に持つ。
数日間張り込むだろうと想定し、チョークタイプの毛染めを選んだ。
日中は人間に戻る為だ。
カラフルなチョークから迷わず黄色を選ぶ。
髪の毛にごしごしと色付け、目には水色のカラーコンタクトを入れた。
ローブもとい黒のロングコートを羽織り付属のフードを
コートのポケットにスマートフォンを入れ、箒を持ったら『魔法使い☆摩希』の完成だ。
ただし飛ぶことしか出来ないが。
(我ながら結構恥ずかしいな)
痛い。心が痛い。まさか成人してからこのようなことをするとは思わなかった。
背に腹は変えられない。我が葡萄の君の為だ。
摩希はキッと前を見据え、竹箒を持ちながら外に出た。
外に張り込むこと数時間。
眠そうになる頭をぐっと持ち上げること数回、摩希は葡萄園全体を見守っていた。
(ここで寝たら確実に死ぬ──!)
もし居眠りをして犯人を見逃してしまったら精神面でそうなるが、物理的な面でもそうだった。
摩希は今高い杉の木の
手にはサークル時代に使っていた
『
がっくりしながら呟いたその時──。
一台のトラックが静かに葡萄園の横に止まった。
暗視ゴーグルで見てみる。
そのトラックにはナンバープレートがついておらず、見るからに怪しかった。
『あれか…!』
(あれが麗しの君を曇らせる諸悪の根源ー!
必ず討ち取るべし!!)
摩希は決定的な証拠を掴む為、根気強く待つ。
数分後、静かに葡萄園から男たちが出てきた。
(いち、
どうやら窃盗団は二人組らしい。
慣れているのか静かに素早く葡萄を運ぶ。
この時点で誰か人を呼びたかったが勘づかれたらおしまいだ。
摩希も静かに機会を
荷を詰め終えたのか、やがてトラックは静かに発進した。
箒に跨がり摩希も発進する。
(絶対に証拠を掴んでやる!)
この時摩希は闘志に燃えていた。
一方、走行中のトラック内にて、
『やったな!今年も上手くいったぜ。ほんと学習しないやつらで助かる』
『そうだな。ここの地域だとあと3ヵ所か?また明日の夜にでも行ってとっとと終わらせるか』
へへっと男二人が笑っている。
『葡萄とあとは梨と豚か。次は馬も良いかもな。この調子で──おい!ちょっとバックミラー見てみろ!』
『何だよ!急に騒ぐんじゃねえよ!』
『いや、ちょっと見てみてくれよ!ひぃっ!』
『おい、何なんだよ──うわっ!』
大の男二人車内で震え上がる。
それもそのはずだ。
バックミラーには箒にまたがり暗闇でも浮かび上がる長髪を振り乱し、鬼の
その幽霊こと摩希は必死だった。
何せこんなに速く飛んだことはない。
今までは優雅にふよふよ浮かんでいただけなのだから。
(追い付け──!!)
見失わないよう必死になる余り、バックミラーのことは失念している。
(急にどうしたの?車内で祝杯でもあげてるとか?)
この時摩希はまだ気付いていない。
よもや幽霊騒ぎで車内が
必死に目をこらし足裏に力を入れる摩希、対してどんどん運転が危うくなっていくトラック。
決着はすぐについた。
右カーブのところ、トラックは気付かず真っ直ぐに走ってしまい杉の群生に突っ込んだのだ。
真夜中の静寂に盛大な音が響き渡る。
摩希は箒から降り恐る恐る車内を伺った。
車内では男二人が失神していた。
『よし!』
心の中でガッツポーズをする。
何故か解らないが、向こうから自滅してくれたのだ。
これなら後は通報するのみになる。
そう思いポケットからスマートフォンを出そうとしたその時──。
『何だなんだ?事故か?』
(まずい!近くの民家の住人が起きたんだ!)
摩希はまだ魔法使いのままである。
不審人物極まりない。
慌てて再び箒に跨がり
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