第43話  夏休み (11)


次の日――


この間のような失敗をすることはなく、僕たちはバイトに間に合うことができた。


できたのだが……


「あれ、なんかこの間より距離近くない?あれ〜?あれあれあれ〜?もしかしてこれは、私が二人のキューピットになっちゃった感じかな?かな?」


そう……僕たちの距離感に変化があったらしく、美奈からの質問攻めに会っていたのだ。



「凛くんどうするの?」


美奈に聞こえないよう小声で僕に聞いてくる柚花。

どうするとは多分、この関係のことを打ち明けるのかと言う意味だと思う。


「伝えよう。ある意味、美奈のお陰でもあるんだからさ」


「ふふ、そう言ってくれると思った」


柚花も伝えるつもりだったらしく、代表として僕から伝えることになった。


「なんか一人で盛り上がってるところ悪いんだけどさ」


「お?なんだなんだ〜一人で盛り上がってるとは!」


「今日テンション高……僕たち付き合うことになった。なんだかんだで美奈に勧められた旅行が決めてと言えなくもないから伝えておこうと思って」


「え、本当に付き合ったの??」


先程とは一転して驚いた顔をする美奈は隣にいる柚花の方をみる。


まるで僕の言っていることが信じられないみたいに……。


「本当ですよ。前々からお互い好きではありましたけど、ね!。改めて美奈さんのお陰でまた一歩私と凛くんは関係を深めることが出来ました。ありがとうございます」


「そっ……か、本当なんだね……」


「なんだよ嬉しくなさそうじゃん」


「いやいや、そんなことはないよー。よかった、よかった。本当に私は二人のキューピットになっちゃった訳か!おめでとう!!二人とも」


いつもとは違い、美奈の空回り感が目立ってはいるが開店の時間が迫っていたため、お礼を言ってお土産を渡し、開店前の準備に僕たちは取り掛かった。


いつも通り、僕は着替える場所がないため奥にあるリビングで向かう。


その際、微かだが美奈の方からため息のような音が聞こえてきた……。




―――――――――




今は忙しいお昼を乗り越えて暇な時間帯。

柚花が休憩をしているためホールには僕と美奈の二人しかいない。


「そうだ。柚花ちゃんと付き合ったと言うことは凛のことも教えたの?」


多分この質問の意味は僕にしかわからないだろう。


側から見たら、付き合ってるんだから当然でしょと言う答えになるから。


「いや、まだ話してない。柚花のことを信用してないとか話したくないとかではなく、単純に話す機会がなかった」


「そう……柚花ちゃんも一人で暮らしいると言うことは何かしら凛に言ってないことがあるのだと思うけど、凛が話したいと思ったら話せばいいと思うよ」


「そうだね。珍しいじゃん美奈がそんなこと言うなんて」


「まったく、私をなんだと思っているのか。これでも凛のことを一番気にかけてるのは私だったと思うけどね。まぁ、今となってはどうかわからないけど」


「とりあえずありがとう。話すのが嫌なわけではないから、順を追って柚花には話していこうと思う」


「うん、そうしなさい!」


いつもは同い年、いや年下なのではないかと思うくらい美奈のことを年上だとは思っていないが、こう言う時だけは嫌でも美奈が僕よりも年上で、色々な経験を積んできた立派な大人なのだと思わされる。


思わされると言うか実際そうなのだが、見ての通り日頃の言動からは立派な大人とは思えないわな。


「ねぇ〜、今私のことでなにか悪く思ってたでしょ」


「い、いやそんなことはこれっぽっちも……」


こう言う時の鋭さも一応は持っているらしい。



―――――――――



バイトが終わった後、柚花と帰路を共にしながら、先程の美奈との会話で思ったことを思い出していた。



僕はなぜ今まで、柚花が一人暮らしをしているのか疑問に思ったことすらなかったのだろうか。


僕自身が一人暮らしをしているからとも取れるが、だからといって僕と同じ理由で一人暮らしをしているとは柚花を見ている限り思えない。


付き合ったことだし、いずれかはお互いがお互い話せる時に自分の過去を話すだろうけど、少しだけどんな話がされるのかドキドキしてしまう自分がいた。


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43話読んで頂きありがとうございます!


そろそろカクヨムコンテストが始まりますね!

去年、この作品は文字数が足らなく断念しましたし、今年は出してみようかなという感じです!


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