第27話 友達になってから その2
5月初めの日曜日、青園さんと友達になった。
今まではただの隣人としか思っていなかった相手が、急に友達となるのだ……不思議な気分になる。
そう思いながら、僕は湯船に浸かっていた。
一日で5本の映画を見た僕と青園さんは同じ帰り道という事もあり、一緒に帰ることになった。
横並びで歩いているが、僕の頭の中は混乱だらけだ。
だって、今まで地味な人だと思っていたんだぞ……まさかあの地味な青園さんとこの美少女な青園さんが同一人物だなんて思うわけない。
この言い方だと、僕は地味じゃないみたいになるがそうではない。
そうではないが、そんな僕でさえ今まで見たことあった青園さんは地味だったのだ。
これだけは言っておこう、美少女の青園さんはもちろん素晴らしいと思うが、地味な青園さんが僕的には接しやすいと思っている……僕自身のキャラ的にな!
「岡くんは毎週どのくらい映画に行くんですか?」
一人で考えていると、静かだったことに痺れを切らせたのか、青園さんが質問をして来た。
「僕は、水曜日と土曜日、日曜日に行ってるよ。青園さんは?」
「私は、土曜日と日曜日に必ず行きます。平日はほとんど行きませんかね……。やっぱり一人暮らしだと自分でもお金を稼がなくてはいけませんから。逆に岡くんはよく平日一回だとしても毎週行けますね」
「その他の日は働いてるからね。あとは普通に時間が長い事もあって、週5日働いちゃうと一年の上限超えちゃうんだよね……」
「なるほど。でも週3日、いいですね。私も岡くんと合わせてもいいですか?」
まさか、そんな提案が来るとは思わず、内心驚いてしまった。
だが、不思議と嫌とは思わなかった。
「逆に申し訳ない。僕に合わせてもらうって……。一緒に行くとなると、何かしら連絡先交換した方が良さそうだよね。どうする?」
そもそも、こんなに話したのは今日が初めてだ。
映画を通しての性格は多少知っているがその他のことは全く知らない。
青園さんの方だってそれは同じ事だと思う。その中で、連絡先なんて交換してくれるだろうか……。
「いいですよ!LINEでいいですよね?はい、QRです」
あ、案外してくれるみたい。
「う、うん。ありがとう」
僕のスマホの中に、初めて女子の連絡先が登録された。
「うぅ、入りすぎた……」
湯船に長く浸かっていたことで、のぼせてしまったみたいだ。
明日も学校だし、とりあえずは寝ることにした。
次の週の水曜日から早速、青園さんと映画館へ行くことになった。
やっぱり考えることは同じなのか、見たい映画も同じだった。
青園さんと映画の趣味が合うのは確定みたいだ。
映画友達とでも言うのか、特別な友達が出来たようでなんだか嬉しかった。
友達なんて要らないって言ってたのにね……。
映画を見たら、同じ帰り道を歩きながら語り合う。1週間のうち3日も一緒にいるのだ。信頼関係は勝手に気付けていった。
映画を一緒に観にいくようになり2週目となると、苗字呼びから名前呼びに変わった。僕は柚花と、柚花は凛くんと。
2週目の土日となると、一緒にファミレスでご飯を食べながら、映画について語り合った。
最終的には、映画を見るマナーが悪い人の愚痴になったけどね……。
僕と柚花は、映画を通して仲を深めていった。3週目にもなると、映画を見に行くのが当たり前とまで言える仲にはなっていた。
だが、映画以外のことに関しては、最初のまま不干渉だった。
ファミレスでご飯を共にすることがあっても、水曜日、土曜日、日曜日以外は隣人に戻るのだ。
その時はその距離感が一番心地よいと思っていたのだろう……僕も柚花も。
5月の梅雨が本格的になった頃、2人の関係に変化が生じる出来事が起こった。
丁度、2人で映画を見に行くはずの土曜日で僕は熱を出してしまったのだ……。
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