第23話  体育祭 その7


 結局、女子の騎馬戦は黄団が優勝となった。


 個人戦の時から黄団は強いと思っていたが団体戦になると、さらに異常な強さを誇っていた――倒された騎馬が15騎中2騎だけだったのだ。


 同じ黄団の一年女子がここまで頑張ってくれたのだ、

 午後1発目にある一年男子の騎馬戦では勝てる様に頑張ろうと思う。


 ちなみに僕は、騎馬の右翼を担当する。

 同じチームメイトいや、騎馬メイトは朝に話しかけられた例の3人だ。

 なんだかんだで最近関わることが多いような気がする――この3人となら、うまくやれそうだ。



 その前にお昼を挟むので、柚花が作ってくれたお弁当を僕は楽しむことにしよう。




 お昼が終わり、騎馬戦の時間がやってきた。


「岡、さっきはあの情報教えてくれてありがとうな!」


「「ありがとうな!」」


 騎馬メイトと合流した僕が先程のアドバイスについてお礼を言われてしまった。

 この感じだとうまくいったのだろう――よかったと思う、だがなんだろうこの感じ……一人がセリフを言って後の二人が繰り返すところ、小さい頃に見たかいけつゾロリを思い出してしまい笑そうになってしまった。

 丁度名前もわからないし、今度から心の中で呼ばせてもらおうと思う。


「力になれてよかったよ。騎馬戦よろしく」


「こちらこそ、上頑張るから下よろしくな」


「「よろしくな!」」


 ……やばい、まじでかいけつゾロリにしか見えなくなってきた。

 笑そうになるのを堪えながらも、男子とこういう風に話すのは久しぶりだなと思った。


 先程は柚花だけでもって思ったけど、僕がすぐ諦めてしまうだけで、案外友達になってくれる人はいるのかもしれない……まぁ、この人達以外とは話したことすらないんだけどね。





 男子の騎馬戦は午前中の女子とは少しだけ試合の形式が違う。


 午後はプログラムが少ない代わりに種目の内容が濃くなるのだ。

 男子の騎馬戦もそれは同様である。


 個人戦は勝ち抜きとなっていて、全てのチームが負けた場合、個人戦は終了となる――もう、個人戦と言えるのかもわからなくなってきているが……。


 団体戦は鉢巻を取った合計本数で勝敗が決まる。

 大将は3本分と加算される。



 ……足、絶対痛くなるだろうな。



 そう思いながら僕は騎馬戦に望むのであった。






「あ〜痛い……」


 騎馬戦を終え席に戻ってきた僕は足の裏をさすりながらつぶやいた。


 騎馬戦の順位は2位、惜しくも1位には届かなかったが試合中騎馬メイトと一丸となっている感じが僕的には楽しかった――さらには、少しだけ3人とも距離が縮まった気がするのだ。


 友達がいるのは、やっぱり悪くはないかもしれない。




 騎馬戦も終わり、自分の席でダラ〜としていたら背後から頸の辺りをツンツンとされた。


「なんだよ〜柚花」


 僕にこんなことをするのは柚花しかいない。

 今はやめてくれ〜と思いを込めて言う僕。


「何をそんな呑気に座ってるんですか……障害物競争の招集とっくにかかってますよー」


「あ……忘れてた」


 今更ながら、プログラムまで確認した上で種目を選べばよかったと後悔した。


「やっぱり……ほら行きますよ」


「はーい」


 僕と柚花が集合場所に行く時には種目に出る人が入場をしようとしていた。

 まじで危なかったんだな……。


「頑張りましょうね!凛くん」


 耳元で囁く柚花――少しだけ疲れが取れた気がする。

 柚花の声にはリラックス効果まであるのかもしれない。



 その後障害物競争ではリラックス効果が効いたのか、なんと一位を取ってしまった。


 自分のことの様に喜んでくれる柚花、席に戻ると褒めてくれるゾロリ達、褒めてくれるのは嬉しかったがその理由が柚花に耳元で囁かれたとは誰にもいえなかった。








 この体育祭は、僕が日頃気付けていない気持ちを気付かせてくれている気がする――もしかしたら今日限りかもしれないけど……。


 それでも、柚花に対して独占欲を感じていること、ゾロリ達と話すのに楽しいと感じていること、これは紛れもない事実だと思う。


 ……今度一人でしっかり考えてみようと思う。何か答えが出るかもしれない。



__________________________________________

23話読んで頂きありがとうございます!


次かその次で体育祭編が終わります。

体育祭を経て二人の心境がどのように変わったのかを理解していただけたら、私的に腕が上がったのかなって思います!


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