第21話  体育祭 その5



 私が抱いているこのモヤモヤはなんなのでしょうか……。





 100m走を終え、席に戻るもさくちゃんの姿はなく、辺りを見回したところ凛くんと話しているのを見つけました。


 その時からです――私の中にモヤモヤしたな何かがで始めたのは。

 一瞬、仲間はずれにされたことに怒りを覚えたのかと思いましたが少し違う気がします。


 考えれば考えるほど分からなくなっていくこの感情が次第に凛くんから裏切られたと思うようになりました。


 女子と話す凛くんを見て、女子となら誰でも話すのかと思ったからです……。








「まず、柚花の件に関してだけど、何か勘違いをしているよ。柚花が100m走に出ている時に桃崎さんから呼ばれて、どういう関係なのかを問い詰められていたんだ――だから決して僕から話そうと思って話しているわけではないからね。どっちかって言うと、もう立ってるのがクタクタで早く戻りたいと思ってるんだからさ」


 そうだったのですか……私は裏切られていた訳ではなかったようですね。


 凛くんと桃崎さんの所に行き、質問したら凛くんはしっかりと答えてくれました。

 あまり早とちりをするのは良くないですね。


「そんなに嫌がらなくたっていいじゃん……それに今、柚花って呼び捨てにしたし」


 さくちゃんはさくちゃんで何かいじけているみたいですが、先程の質問に私があやふやに答えたことが全ての原因だったみたいですね。


「さくちゃん、さっきも言ったけど私と岡くんは今日が始めって会ったの。話が盛り上がったのもたまたま趣味があっただけだし……」


「そんなこと言っても遅いからね??ね?柚、さっき凛くんって言ってたし、岡くんも柚花って呼びに捨てにしてたじゃん。もう誤魔化されたりしないんだから、正直に吐きな」


 うわぁ……私はやってしまったみたいですね。

 チラッと凛くんを見ても溜息をつき首を横に振っていました。

 余程、さくちゃんの攻めが効いたのでしょう。


 これはもう正直に言わなくてはいけないかもしれませんね。


「さくちゃんこれは絶対内緒にしてほしいことなんだけど、もしこれ他の人に言ったりしたら友達やめるとらね」


「は、はい……」


 私は凛くんと出会ってから今までのことを話す事にしました。

 さくちゃんは私のことが大好きなので言うこともありませんし。



 ――――――――――――――――――


「そんな事が……じゃ〜今日も途中まで一緒に?」


「う、うん」


「なるほど……そうだったのか」


 どうにか柚花の誤解を解いた僕は、桃崎さんのことについて解決しようとしたのだが、柚花が諦めたのか僕たちのことを話すことにしたみたいだ。

 丁度今話を全て聞かせ終わったところだった。


 桃崎さんなら他の人に言わないと思う。

 言われたとしても、今の生活を変える気はないし僕は気にしないけど――。


「僕はもう戻るよ。話も終わったことだし」


 まだ体育祭始まって1時間経ってるか経ってないかぐらいなのにもうクタクタだよ。


「凛くんありがとうさくちゃんに言わないでくれて。あと……勘違いしてごめんね」


「ん?あーいいよ別に、言うのであれば柚花からだと思うし……。

 勘違いについてはよく分からないけど、僕が?あり得ないって感じだねっとだけ言っておくよ」


 1人が好きな僕がそんな容易く友達を作れる訳ないじゃないか――あり得ないよ。


 そう思いながら、僕は念願の椅子に向けて歩き始めた。



 ――――――――――――――――――


「あり得ない……か」


「あり得ない?なんのこと?」


「うんん、何でもないよ。私たちも席に戻ろう」


「そうだね」


 凛くんが言いたい事は私にはわかりました。

 私以外、友達にするつもりはないよ――あり得ないですよね。



 あ、そうだ……


「ねーさくちゃん」


「なに〜柚」


「さっきね、凛くんとさくちゃんが話してる時とてもモヤモヤしたんだけどこれって何かわかる?」


「あーそれは嫉妬だよ、嫉妬」


 さくちゃんは何事もなくそう言って、席へと戻って行きました――ですが、私はそれどころではありません。




 …………私が嫉妬??凛くんに。

 これが……嫉妬。


 顔が徐々に熱くなるのを感じます。

 私は凛くんに嫉妬をしてしまったみたいなのです。


 もしかして私、凛くんのことを…………いや、彼は友達です。

 少し特別な友達以上の存在ですが友達です!


 なら、この気持ちはなんなのでしょうか。



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