四十二着目『激闘!紅茶テスト追試編、聖闘士リョーマVS中間管理職オールバックくそスチュワード』

 鋭い目つきと殺気に満ちたオーラで、吉野執事が研修室に入ってくる。


「ほう、お前ら先程と顔つきが違うな……流石にこれで最後にして貰おう」

(吉野執事は、悪役のセリフが良く似合う)


「クッ、冥王ハーデスめ……」

 完全に聖闘士になりきってるのは、リョーマ君。


「?」

 事態の掴めない吉野執事。


「あっ!スミマセン、スミマセン……なんかリョーマ君。ヘンなスイッチはいっちゃったみたいで……」

(僕は、表向きは遜った態度を見せつつ、内心は『くたばれ、中間管理職オールバックくそスチュワードめ!』と心の中で毒づいた)


 何はともあれ、二人の思いは一つ。

 ここにきてワンチームになった。


「では、追試だ」


「燃えろ!オレの小宇宙コスモよ!!」

 室内に響くリョーマ君の雄たけび。


「ハッ?」

 事態の掴めない吉野執事。


「スミマセン、スミマセン……」

 平謝りの僕。

 でも、内心は……『くたばれ、中間管理職オールバックくそスチュワード!』

 リョーマ君と同じくして、心の中で雄たけびをあげた。


 そして、戦いの火蓋は切って落とされた。


「うりゃあああ!スカーレッド・ニードル!!あなぁざーでぃめんしょん!!!」

 リョーマ君は、己の全小宇宙コスモを燃やし、紅茶テストに挑んだ。


「ハッ??」

 事態の掴めない吉野執事。


「スミマセン、スミマセン……」

 ウン、自分でも判ってる。紅茶テストに小宇宙コスモは関係ないし、燃やす必要もない事を。

 でも、疲労と長時間拘束で、変なHiスイッチに入ってしまい、この状況に興奮している僕がいる。

 でも、ちょっと冷静な自分もいて、同時に『オタクってやだな』とも思った。


 ――追試終了――


「ふむ……90点合格!!」


「おっっしゃーー!」

 ガッツポーズで喜ぶリョーマ君。


「ダリぃ~」

 僕はというと、やっと張り詰めた糸が解けて全身に脱力感が一気に来た。

 何はともあれ、道が開けた安堵感でホッとした。


「夕太郎君に勝ったぜ」

(あー、ムカつく元気もねぇ……相変わらずのお調子者め)


「勝ってねーよ」

 僕は、冷たく言い返した


「アテナエクスクラメーション!」

 尚も興奮気味のリョーマ君。訳の分からない事を口走る。


「はっ?」

(何だよ、めんどくせぇなぁ、もう帰らせてくれ……)


「アテナエクスクラメーションで大勝利だっ!」

 リョーマ君は、僕と吉野執事の手を取り、再度歓喜の声をあげた。


「必殺技の名前だよ。アテナエクスクラメーションは、聖闘士三人で力を合わせないと繰り出せない技なんだ。要するに彼は、三人で力を合わせて勝利したと言いたいんだよ」

 リョーマ君の思いを解説して下さる吉野執事。

(チッ、コイツもオタクか……そっか、吉野執事は、聖闘士星矢世代なんだろうな~。と言う事は……リョーマ君の想い人は、その世代ってこと?!年の差ヤバッ)


「てか、わかりずれー」

(感動の友情とか、もうどうでもいいから、もう帰らせてくれ……)

 満身創痍の僕にとっては、感動の名場面に浸る余裕なんてなかった。


「では、お二人とも試験お疲れ様無事“一発合格”出来ましたね」

 ニコニコ笑顔の吉野執事


「はははっ」

(何が一発合格だよ)呆れて物も言えない。


 しかし、ここまで来て吉野執事は全てをひっくり返す衝撃の言葉を今まさに発するのであった。


「私は、試験の点数ごときでフットマンの適性を図れるとは全く思っておりません」

(アレッ?どっかで聞いたことあるセリフ……嫌な予感しかしない……)

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