四十一着目「聖闘士の魂と使用人の志」
「ヤレヤレ……」
同期の真似をして呟いてみた。
あの時、同期は一体どんな気持ちだったんだろう……?
ふと、疑問に感じたので、自分の胸元に手を当て、心の声を聴いてみた。
『もう……リョーマ君は、僕が居ないとダメなようですね』
なんとも、僕らしくない心の有り
まるで、執事のようなセリフだ……
「フフッ」
僕は、思いがけないセリフに、こそばゆさを感じ、微笑を浮かべた。
「やろう、二人で!」
僕は、直立で軽く拳を握った仕草を見せた。
「えっ……」
あれだけ、罵声を浴びせ続けた僕から意外な言葉が出て、リョーマ君はキョトンとした様子だ。
「じゃぁ……紅茶の水に関する問題です。日本の環境では、紅茶を淹れるのに適した水は、水道水orミネラルウォーターどちらが適しているでしょう?」
僕は、リョーマ君の力試しに一つ問題を出した。
ちなみに、これは吉野執事が授業中に蘊蓄の一つとして紹介した事があるので、二人とも既に知っているはずの内容だ。
「そんなの“ミネラルウォーター”に決まってるだろ!バカにすんな!わざわざ高い水買って、マズくなるわけないだろ!」
「フム……。やはり、正攻法ではダメか……他の方法を考えなきゃ」
(ちなみに、バカはお前の方な……)
僕は、改めてテスト用紙に目をやった。
「あっ!これなら、付け焼刃でイケるかも……!」
一つの法則性に気付いた。
「ねーねー、リョーマ君。ココの解答群、選択肢を〇で囲って線で繋ぐと『北斗七星』に似てない?ほら、北斗の拳とか分かる?」
「んー……」
リョーマ君は、いまいちピンと来ない様子。ちなみに僕も“北斗の拳”世代ではない。
「はっ☆」
リョーマ君の目が急に輝きだした。
「ネッ!ネッ!気付いた?柄杓みたいな形してるでしょ?今から知識を詰め込むのは無理だから、カタチで覚えていこっ☆」
「違うよ!これは、スコーピオのミロだよ!!」
リョーマ君は自信満々に答えた。
(また訳の分かんない事を……めんどくせぇ)
「知らないの?聖闘士星矢だよ!前の店長が大好きだったんだ~。だから、オレ、何度も何度もアニメも漫画も観て超詳しんだ!
その精神性は、ココの執事喫茶にも通じる所があると思うんだよね~。
お嬢様の為なら、どんな苦労や鍛錬も怠らない。そんなフットマンになりたくて、僕はここを受けたんだ!
ほらっ、一縷さんはまさに聖闘士を体現したような人だろ?」
リョーマ君は、興奮気味に早口で説明した。
「ぉ、おう……(チッ、また一縷の話かよ。てか、リョーマ君の初恋の人って幾つだよ?僕よりも年上だろっ)」
(お前は、まず紅茶テストという鍛錬を怠ったから、いま僕を巻き添えにして、迷惑してるけどな……)
「本当だ!凄いよこの発見はこれならオレでも出来そう!」
メンヘラリョーマは、波に乗るとめっぽう強い。普段、気分の起伏が激しいだけに上に突破すると、誰にも止められない。
「そ……そうなんだ。まあ、こんな感じでこじつけで覚えられる所は、覚えていこうよ」
(聖闘士星矢も微妙に世代じゃないんだよな……)
「オッ、すげぇー!ココにはジェミニのサガがいる!!」
僕の心配をよそに、今までペンが進まなかったのが嘘かのように高速でペンを走らせるリョーマ君。
ナレーション風に言うと……
『満身創痍のリョーマが遂に、聖闘士の魂に目覚めた』
とでも言った方が良いのだろうか……
正直、僕にはサッパリだ……
(やっときゃよかった公文式、ならぬ、読んどきゃよかった聖闘士式か?)
聖闘士の魂に目覚めたリョーマ君は、後にこれを“
「えーーい、もーーーおぉ、破れかぶれだっ!」
僕も覚悟を決めた。
「いざっ!オールバックくそスチュワードと勝負だっ!!」
『次回、激闘!紅茶テスト追試編、聖闘士リョーマVS中間管理職オールバックくそスチュワード』
君は
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