第5話

 その日の捜査会議では、希実たちの得た情報が一番の話題となった。


「その川本という少年と、小西という男の関係についてもう少し聞き出せないか」


 刑事課長が依田に向かって尋ねる。依田は窓から差し込む西日に少し目を細めながら、若干難しいかと思います、と答えた。


「川本陸雄君は、警察に対してあまりいい印象は持っていないようで、もう一度話を聞きに行っても答えてくれるかどうか……。むしろ家族や陸雄君の目撃情報などの周囲から攻めた方がいいかもしれません」


 一方で他の手がかりを追っていた捜査員からもいくつかの報告がなされた。


 歯の治療痕は相変わらず有力情報に繋がってはいないらしい。不審車両の目撃情報についてもほとんど何の役にも立たなかった。そもそもこの車種は市内でもやはり登録台数が多すぎてとても一台ずつ調べるわけにはいかない。


 捜査会議が終わって自分のデスクに戻る頃には、外は薄暗くなり始めていた。なかなか進展が見られないことに対して、依田などは苛立ちを隠しきれない様子だった。それでもこのところ働きづめだったこともあり、今日は定時で帰っていい、と言うので希実はありがたく帰らせてもらうことにした。勤務時間が終わるまでの数十分でどのくらい報告書が進むだろうか。そんなことを考えながらパソコンを開いたところで電話が鳴った。電話の向こうでは、交換手が「市役所から刑事課にお電話です」と告げていた。


「日岐?市役所の杏です。送ってもらった被害者の写真のことなんだけど、俺たぶん見たことあるわ、この人」

「ほんと⁉」


 尊の第一声を聞いて、希実は思わず椅子から立ち上がった。


「うん、さっき写真を見てて、どっかで見た顔だなと思ってたんだけどね。思い出したよ。瀬田区のあたりだ」

「瀬田区?瀬田っていうと、東小のへん?」

「そう。下條区との境に下條橋って橋があるんだけど、そこから東へ少し行って、坂を登る途中のところ」

「ちょっと待って。地図見るから」


 そう言って希実はデスクの抽斗から市内の地図を取り出して広げた。地図の中で下條橋はすぐに見つかった。不審車両の目撃情報があった周辺である。


「あった。下條橋。ここから東へ行ったあたりっていうとリンゴ畑が続いてる辺?」

「そうそう。リンゴ畑があって、道沿いにはぽつぽつと家が並んでるだろ。そのうちの一軒で樋口っていう家があるんだ。住所でいうと豊川町六四二〇の一かな。そこに仕事で訪ねたときに見た。見たっていうか、声を掛けられたんだ」

「声を?なんて?」

「俺が訪ねたとき、その樋口さんの家は留守だったんだけど、敷地を出る時にその人が上の方から坂を下りてきたんだよ。それで、『樋口さんの家族の人ですか』みたいなことを聞かれたと思う。俺が違う、樋口さんは留守みたいだ、って答えたらそれでそのまま行っちまった」

「じゃあ顔ははっきり見たんだね」


 希実は急いでメモを取りながら言った。


「うん。正面から見たよ。その人、サングラスしてたんだけど多分間違いない」

「他には何か気づいたこととかない?」

「そうだなあ……ああ、だいぶ酒臭いなとは思ったな、すれ違うときに」

「わかった。それで、それはいつのこと?」

「ええとちょっと待ってね……ああ、十月二十七日だな。確か昼過ぎだったと思う」

「ありがとう。ちょっと有力情報だわ。あの辺聞き込みしてみる」

「役に立ったならよかった。しかしそうか、あのおっさん、亡くなったのか……。しかも日岐たちが捜査してるってことは単純な事故でもないんだろ。殺されたってことかな」

「おそらく、だけどね」


 希実は少し迷ってそう答え、それから尊に他にも情報があったらまた連絡してほしい、と頼んで自分の携帯の番号を伝えておくことにした。このところ捜査で出歩いていることが多く、署に電話されても出られない可能性が高い。


 尊との電話を済ませて受話器を置くと不意に真横に依田が立っていることに気が付いた。どうやら漏れてくる会話に耳を澄ませていたらしい。


「日岐、すぐ出られるか」


 有無を言わさない口調の依田にはい、と答えると、希実は聞き込みの準備を始めた。



 車の中で住宅地図を確認しながら、希実と依田は目撃情報のあった樋口の家へと向かった。珍しく依田が運転している。車酔いしやすいから、という理由で地図を見るのを希実に任せた格好だった。


 希実は地図を見ながら、そう言えばここは先月地上げ行為に関する相談があったあたりだ、と考えた。あれからパトロールを強化するよう地元の交番に依頼をしたが、その効果があったのかそれ以来特段の被害情報は届いていなかった。


 地図上に樋口マサトと書かれた家の敷地に車を入れ、依田と希実は玄関へと向かった。依田がチャイムを鳴らすと、しばらくして中年の男が顔を出した。目つきが鋭く、かなり大柄に感じられる。尊と同じ系統の見た目だが全体的にワンサイズ大きくしたようだな、という第一印象だった。


「すみません、樋口さんですかね」


 依田が尋ねると、樋口はあからさまに迷惑そうな顔をした。


「そうですが。何の御用ですか」

「我々は梓警察署の刑事課の者です。ちょっと事件の捜査でこのあたりを聞き込みしているんですがね」

「事件?なんの事件ですか?」


 樋口が聞いたが、依田はそれには答えず被害者の写真を取り出した。


「この男性、見覚えはないですか」

「いや、ないですね」


 樋口は渡された写真を見ると、すぐに答えた。


「よく思い出してもらえませんか。実は樋口さんが留守のタイミングで、この男がこちらのお宅を訪ねているのが目撃されているんですよ。お知り合いではないですか」

「こんな人は知りませんよ。うちに来たんですか?いつのことです?」

「先月の末ごろです」


 希実が依田に替わって答える。


「そう言われてもね、留守の間に来たなら私にもわかりませんし。どうせ何かの勧誘か、セールスだったんじゃないですか。そもそも名前はなんというんですか」


 樋口は写真を依田に返すと、絆創膏が何枚か貼られた右手で頭を掻きながら面倒そうに言った。


「それが名前も判然としなくてね。一応、小西と名乗っていたらしいんですが」

「小西ねえ。私の知り合いにはいませんね」


 取り付く島もない、とはこういうことを言うのだろうか。警察が余程嫌いなのか、さっさと会話を切り上げようというように樋口はばっさりと否定した。


「わかりました。では何かもし思い出しましたら、警察まで連絡をいただくようにお願いします」

「思い出さないと思いますがね。まあわかりました」


 樋口はそう言うと、希実たちが振り返るより早く玄関を閉めてしまった。おまけに中から鍵をかける音まで聞こえる。


 希実は依田と顔を見合わせて肩をすくめ、それから車へと戻っていった。何か知っているのかもしれないが、とにかく警察とは関わりたくない、ということだろうか。以前に何か警察の世話にでもなっているのかもしれない。あるいは公権力を感じさせる機関が嫌いなタイプか。


 希実たちは車を少し移動させ、若干道路が広くなっているところで路肩に寄せて停めておくことにした。樋口の家より少し上、つまり東の方から順に聞き込みをしていく。しかし在宅している家自体がそれほど多くなく、なかなか情報は集まらなかった。


 樋口宅の東隣では、老婆が、おや、今度はお巡りさんかい、と驚いた顔で対応してくれた。訳を聞くと、つい先日も市の職員が訪ねてきたのだという。


「なんの話でした?」


 と希実が世間話程度に聞いてみると、老婆は、


「いやあ、そっちの樋口さんとこのせ、昔の所有者が誰か知らねえかいって、そんなことをせってたな」


 と答えてくれた。


「なんだかえらくおっかねえ兄さんだったじ。おら最初やくざもんかと思ったわ。そんでも話してみたらそうでもなかったで安心しただけども」


 それで希実は、それはおそらく尊のことだろう、と見当をつけた。樋口の家を訪ねたときにでもついでに近所に話を聞いたに違いない。


「しかしお巡りさんが来たってことは、もしかして役場の人じゃなかっただかい?」

「いや、大丈夫ですよ。それ本物の市役所の職員です。私も知ってる人ですから」


 不安そうに尋ねる老婆の言葉を否定しながらも、やっぱり私以外にもそう見えるんだ、と希実は可笑しくて仕方がなかった。


 被害者の写真については、さあて見たような気はするけどねえ、という曖昧な返答だった。しばらく前にこんな感じの人が通りを歩いているのを、庭の掃除をしながら見たかもしれない、という。


 それから何軒か聞き込みを続けていくと、西へと坂を下るにつれて何軒かから歩いているのを見たと思う、という情報が出始めた。その日付は十月の二十七日を中心に、前後二日くらいずつの開きがある。つまりその期間だけ、小西と名乗るこの男はこの周辺に出没していたと考えられた。


「死亡する直前もこの周辺にいた可能性はありますね」


 希実は次の家に向かいながら依田に言った。依田も頷きながら足早に希実の斜め前を歩いている。住宅地図をペンライトで照らして見ると、次の家には石川登紀子という名前が記載されている。地上げの件で以前に尊が警察に連れてきた女性だった。


「あら、刑事さん。その節はどうも。あの後変な電話は来てないんですよ。相談してよかったわ」


 石川は希実が前に対応してくれた刑事だとわかると、嬉しそうな様子で話してくれた。


「それはよかったです。ただ、実は今回はそれとは別の件で来たんですよ。この人を探してまして。この周辺で十月の終わりころに目撃されているんですけど、石川さん見たことないですか」


 希実が写真を手渡すと、石川はしばらくそれを見つめて考え込んだ。


「この人、何かしたんですか」

「いえ、そうではないんですが、実はこの方が亡くなりましてね。事件の可能性があるもんで調べているんですが、何しろ身元がわからないんですよ。小西と名乗っていたようなんですけど」


 依田が説明する。石川は口の中で小西さん、と呟きながら尚も写真を見つめていたがおもむろに口を開いた。


「この人、ちょっと太めで、サングラスかけてたりしませんか」

「体型はそうですね、おっしゃるように少し太り気味です。サングラスも、かけていたという目撃情報もありますので、かけたりかけなかったりということのようですが」

「それじゃあ見たことあるかもしれません。前回の回覧板を届けた時だから……そうそう、十月の三十一日だったと思います」

「本当ですか。どのあたりで見たんでしょうか」

「この道沿いの、少し上の方ですね。ほら、うちの隣、空家になっているでしょう。それでその向こうの家も隣組に入ってないもんですから、回覧板を届けるのにちょっと上まで歩くんですよ。それでその時も回覧板を持って二軒向こうの家まで歩いて行ったんですけど、その時ですね。上の方から歩いて来て、サングラスをかけてたからちょっと怪しい感じだったんです。もう夕方も遅い時間でだいぶ暗くなってましたから」

「ほう、夕方にサングラスですか」


 依田が相槌をうつ。


「なんだかまるで顔を隠しているみたいで。それで私は道のこっち側を歩いてたんですけど、その人も同じ側を降りてきたんです。ほら、あんな電話があった後でしょう。怪しい感じだし、すれ違うときに怖いな、なんて考えてたんですけど、結局すれ違う前にその人がどこかの家に入ったもんでほっとしました」

「どこの家に入ったかなんて覚えてませんかね」

「あれは……多分樋口さんの家だと思います」


 希実は手帳にメモを取っていた手を止めて考えた。石川の言う日付が正しければ、これまで出てきた情報の中では小西が目撃された最後になる。その時に小西は樋口の家に入っていったというのか。


「それ以外には見かけませんでしたか」

「あの一回きりです。私その時は回覧板を届けた先の家で五分ばかり立ち話をしたんですけど、帰りにも見なかったです」

「わかりました。ありがとうございました」


 希実は手帳をポケットにしまった。それから他に何か思い出したら連絡してほしい、とお願いして石川の家を後にした。


 少しずつではあるが、前進してきた感覚がある。やはり男は死ぬ間際、この近所を訪れていたのだ。ただ、それが何のためなのかがわからない。この近辺にはアパートはほとんどない。どこも一戸建ての住宅ばかりである。アパートに住んでいるらしい、という情報とは一致しない。


 希実たちは少しずつ寡黙になりながらも、一軒ずつ訪ねながら坂を下って行った。気温は下がり、気づけば住宅地図を持つ手がすっかり冷たくなっていた。まるで亡霊を追いかけているようだ、と希実は少し身震いした。


 やがて坂が終わり、リンゴ畑に田んぼが混じるようになった。この辺まで来ると少し家々もまばらになってくる。


「あと三軒、向こうの十字路まで聞いたら今日は上がりにしよう」


 依田が両手をこすり合わせながら言った。


 右手に見えてきた、立派なバルコニーを備えた洋風の家の前に来たとき、庭で突然けたたましい声が聞こえた。一瞬驚いて二人の足が止まる。どうやら庭に犬がいるらしい。玄関までのアプローチを辿っていくと、犬の鳴き声も益々大きくなった。自動で玄関灯が点灯する。玄関の脇に犬小屋があり、そこに真っ白な犬が繋がれているのがわかった。


「えらいところに繋いであるもんだな」


 依田が苦笑した。依田は犬があまり好きではないと以前聞いたことがある。なんでも刑事課に異動になる前に勤務していた交番で、迷子の犬を保護したときに手ひどく咬まれたことがあるらしい。それ以来犬や猫などの通報にはできるだけ関わらないようにしてきたというから、これだけ吠える犬を目の前にするとどうにも気後れするようだ。


 玄関までは鎖が届かないようになっているが、それでも今にもとびかかろうというばかりの勢いであった。何度も鎖を鳴らしながらこちらに来ようともがいている。希実たちはできるだけ犬から遠い方の端を歩きながら、どうにか玄関まで無傷でたどり着いた。


 表札には東海林とある。しょうじ、と読むのだろうか。希実がチャイムを鳴らすと、すぐに玄関が開いた。犬の鳴き声で誰かが来たことがわかるのだろう。そういう意味では番犬としては完璧な犬ともいえる。


 顔を出したのは、中年の陰気そうな女だった。


「こんばんは。夜分にすみませんね。我々は梓警察署の者です」


 その日十数回目の同じセリフを言いながら、希実たちは警察手帳を取り出す。女は曖昧にはあ、どうも、と聞こえないくらいの声で答えた。もっとも普通の声だったとしても犬の鳴き声で聞き取りづらかっただろう。


 しかし希実が被害者の写真を見せた途端に女はうろたえ始めた。


「この人を知っているんですね?」

「ええと、いや知らない人ではあるんですが、その……」


 明らかに嘘とわかる答えを口にしながら、女は口元に手をあてた。そして希実が更に畳みかけようかと口を開いたとき、


「やっぱり何か通報があったんでしょうか」


 と女が観念したように言った。


「通報?どういうことですか」

「この人が通報したから来たんですよね?」

「いえ、我々は違う方からの情報で来たんですよ。この男がこの辺で目撃されたものでね」


 依田が答えると、女はしまった、という顔をし、それから少しうなだれて肩を落とした。


「この人、先月の終わり頃、うちを訪ねてきたんです」

「訪ねてきた?ということはお知り合いですか?」

「いえ、そうではないです。何というか……この家を売ってほしいということでした」


 希実は思わず依田と顔を見合わせた。僅か一メートルほどの距離にいる犬は、十秒おきくらいの間隔でまだ吠えている。よほどよその人間が嫌いなのだろうか。


「でもご覧になればわかるように、うちはまだそれほど古くはありません。建ててから二十年も経っていませんから。それで、売ってくれと言われてもまだまだここに住む気だし、そのつもりはないです、とお断りしたんです」

「それだけですか。他には何か言ってませんでしたか」

「言っていたというか……そんな話をしている間に、その人がうちの犬に近づきすぎたんです。それで、その……手に咬みつきました」

「犬が咬みついた……」


 希実は検死の報告にあった情報を思い出していた。確か全身の擦過傷などに交じって、右手の甲に歯形のような傷があったと言っていた筈だ。だとすればここでつけられた、犬の歯形ということか。


 じっと考え込んでいる希実を前にして、東海林は困ったように依田の方を見た。しかし依田は依田で、やはり咬むのか、といった具合に犬の方を見て顔をしかめている。それでもう一度希実の方に視線を戻したところで、希実が言った。


「咬んだのはどのあたりですか。右手の小指側ではないですか」

「そうです、その辺でした。あの、やはり私、逮捕されるのでしょうか」

「逮捕?なぜです?」

「いえ、犬が咬みついたから……ケガをしたみたいですし」

「ああ、それなら大丈夫です。少なくともこの人は被害届を出せる状態ではないですから」

「どういうことですか」

「この方、亡くなったんです」


 希実が言うと、東海林は目を大きく見開いた。


「まさかそのケガで――?」


 希実はそれを聞いて吹き出しそうになり、慌てて咳払いをして誤魔化した。後ろを振り返ると依田も困ったような笑いを浮かべている。


 仕方なく、状況を最初から説明することにした。男の死体が川で発見されたこと、その身元を特定するために聞き込みをしていること、男の手には歯形のような傷が残っていたが、既に塞がっていたこと……。話が進むにつれて、東海林は落ち着きを取り戻したようで、次第に元の陰気な表情に戻っていった。


 説明が終わると、改めて希実は、他に何か言っていませんでしたか、と聞いた。


「そういえば、不動産会社の名前を言っていたように思います。売る気になったらなんとか不動産に電話してくれ、って。その直後くらいに犬が咬みついたもんですから、それからは犬を引き離したりして大騒ぎで。去り際には、うちの犬に向かって『このクソ犬、いつかぶっ殺してやる』とか、かなり汚い言葉で罵っていました。それくらいです」

「なんという不動産会社だったか覚えていないですか?」

「ええと、なんだったか……アルファベットだったと思います。TPSとか、KTSとか、そんな感じの三文字くらいの。何しろ犬の騒ぎがあったもんですからあまりよく覚えていなくて」


 するとそれを聞いていた依田が、後ろから、


「ATS不動産ではないですか」


 と尋ねた。


「ああ、そうかもしれません。そういうところがあるんですか」

「ええ、市内では確か高山駅前に支店があったと思います。本社はどこだったかな。どこか市外だったと思いますが。売る気になったらそこに電話するように、とのことだったんですね。他に何か脅すようなこととかは言ってなかったですか」

「そういえば……最初は普通に話していたんですけど、私が売る気がない、と言った後に、このあたりの土地はなんだか廃棄物が埋まっているところが多いとか、今に病気になりますよ、とか言っていました。ただ私も全く話を聞く気がなかったもので、はいはい、と聞き流していたんですが……」


 東海林は目を細めて思い出すようにしながら、ゆっくりと話した。時々犬がそばから合いの手を入れるように吠えていた。


「わかりました。最後に一点。この男は名乗りましたか」

「名乗っていましたよ。ええと……小西とか西田とかなんとか、西が付く苗字でした。多分小西じゃなかったかと思いますが」

「ありがとうございました。何か他に思い出したことがあれば連絡してくださいね」


 希実たちが踵を返そうとすると、東海林は恐る恐るといったように問いかけた。


「あの、それじゃ私は逮捕されないんですね?」

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