ためしにかじょうがきを
ためしに、きょう一日を箇条書き風にして振り返ってみる。
朝、滞在先の宿で目覚める。
窓の外から光が差し込む。
快晴である。
宿で朝食をいただく、固い麺麭である。
麺麭を暖かい飲み物で充分に、ふやかして食べる。
宿代を清算し、宿を出る。
その町にあった竜払い協会の支部へ向かう。
竜払いの支部で、金銭面の手続きを行う。
竜払いの支部で、次の依頼の確認を行う。
依頼内容を確認し、支部を出る。
依頼先の現場へ向かう。
町を出て、街道を進む。
晴れている。
横切った麦畑はまだ青い。
しばらく歩き続ける。
昼になり、木陰に腰をおろす。
そこで昼食をとる。
固い麺麭である。
ふやかす手段はない。
がんばって食事を終える。
剣の素振りをする。
移動を再開する。
街道を歩く。
ふと、地面に白い蛇をみつけた。
大人の二の腕くらいの長さの蛇である。
にょろりんとしている。
けれど、よく見ると、それは蛇の脱皮の後の皮である。
つまり蛇本体ではない。
蛇本体はどこへ。
そういえば、蛇は大きくなるたびに脱皮すると聞いた。
脱皮して大きくなるか。
まてよ。
脱皮すると、むしろ、身体の皮の外周の厚みが薄まるのではないか。
むしろ小さくなるのではないか。
けれど、それでもな、脱皮すると大きくなるという。
なぜ、脱皮で大きくなる。
にょろりんと大きくなる。
脱皮にょろりん。
にょろりんりん。
りんりんにょろりん。
にょろりんりん。
脱皮ってなんだろうか。
蛇にとって脱皮とは。
よーし、さあ、今日は脱皮するかあ。
で、脱皮できるのか。
やるか、脱皮。
いくぜ、脱皮。
で、脱皮できるのか。
その意志で自在に制御できる仕組みなのか。
脱皮にょろりん。
にょろりんりん。
りんりんにょろりん。
にょろりんりん。
わからない。
どうして、脱皮で大きくなる。
むしろ、ひとまわり小さくなるのでは。
蛇。
彼はもしかして、物理の法則を超越しているのか。
物理にょろりん。
にょろりんりん。
りんりんにょろりん。
にょろりんりん。
そんなことを考えている間に、現場に到着して、竜を払った。
気づけば夕方である、今日も終わった。
いまこうして振り返ると、今日は主に蛇の脱皮について考えることに脳をつかっていたとわかる。
途中、もはや、歌っている。
なんだ、あの完全にいまいちな歌みたいなのは。
そもそも、なぜ、箇条書き風で、今日を振り返ろうとたのかは、いまとなっては、にょろりんである。
いや、この箇条書きにより、人として、ひと皮にょろりんした気がしないでもない。
気迷いの可能性もあるが。
まあいい、もう寝よう。
たくさん寝て、忘れよう。
眠ろうにょろりん。
にょろりんりん。
りんりんにょろりん。
にょろりんりん。
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