閑話⑥ いけないことをしたら、ちゃんとあやまらないとだよね☆

 これは私――。

 前世ではごく普通の女子高校生な佐藤 美咲で、今世では乙女ゲー『つるりん卵肌なキミに恋したい☆』のメインヒロインだった・・・パール・ホワイト――な私が顔に傷を作って、クソ皇太子にトルネードパンチをお見舞いした翌日のお話。


 ***


 ロザリアたんといっしょにクソ皇太子もとい皇太子殿下のところに謝りに行くと――。


「ぎゃーーーーーー!!!!」


 いきなり皇太子殿下が悲鳴をあげた。かと思うと、カエルのように床に這いつくばって土下座し始めた。

 クライヴくんたち親衛隊はというと剣を構えている。頭を抱えて床に這いつくばる者、床に正座して手を合わせる者、剣を抜こうとしてつかに手を置いたところで泡吹いて気絶する者などなど。いろいろといるけれど、クライヴくんはちゃんと剣を構えているから〝剣を構えた〟で間違ってはいない。


「この度のパールの行動はわたくしを思ってのことなのです。どうか寛大な処分を……ほら、パールも。ちゃんとあやまって!」


 ロザリアたんの言い方、まるで子供を叱る母親のよう! これはこれで幸せ!! ……なんて思いながら、私は土下座姿勢でぷるぷる震えている皇太子殿下を見下みくだし……もとい、見下みおろしてあやまった。


「……ごめんなさーい」


 うん! ロザリアたんの言う通り、ちゃんとあやまった☆


「わわわわかった! わかったから、さっさとそのバケ……彼女といっしょに部屋を出て行ってくれ!!!」


 と、いう感じで――。

 ロザリアたんの説得と私の真摯な謝罪を、皇太子殿下はそれはもう快く受け入れてくれたおかげで、今回の一件は大事にはならずに済んだ。


 もう一度、頭を下げて部屋を出ようとしたところで――。


「……ところでロザリア。そ、そのバケモ……彼女とは今後もルームメイトとして付き合いを続けていくつもりなのか?」


 皇太子殿下がようやく床から顔をあげて、震える声でロザリアたんに尋ねた。


「もちろんです、殿下。……ダメ、ですか?」


「あ、あまり彼女と仲良くするのは……いいいいいいいえ! なんでもございません!!」


 ロザリアたんの困り顔とその後ろでにっこりと微笑む私の顔を見て、皇太子殿下はこれまた快く私とロザリアたんがルームメイトでいることを認めた。……私とロザリアたんの仲を引き裂き、愛の巣を壊そうだなんてふざけた真似しようとしてんじゃねえよ、空気読めないクソ皇太子☆

 なーんて思いながら、私は改めてクソ皇太子にーっこりと微笑みかけた。クソ皇太子もとい皇太子殿下に私の気持ちはきちんと伝わったらしい。

 皇太子殿下はビクーーーッ!! と、体を強張らせたかと思うと再び、いきおいよく土下座姿勢に戻った。


「ささささ差し出がましいことを……もももも申し上げまして……たたたた大変申し訳ありませんでしたっっっ!!!」


 震える声でそう言う皇太子殿下を見下みくだし……もとい、見下みおろしてにっこりと笑いながら私は思った。

 そうそう……。


「いいえ、これからも末永くロザリアたんと仲良くさせていただければと思っております☆」


 いけないことをしたら、ちゃーんとあやまらないとね☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る