第二話 状況把握は重要だよね☆

 前世の記憶を生かして思春期ニキビをあっさり撃退した私はパールとして年を重ねていった。

 つるタマのパールはゲーム版、小説版どちらも開始時点で十六才。貴族の子息令嬢ばかりが通う学園の高等部二年生という設定だ。


 そして、私もついに十六才になり、高等部二年生になった。


 前世の記憶はよみがえったものの、本当にここがつるタマの世界なのか。ずっと半信半疑だった。だから、確証を得るために学園中の生徒や先生の情報を中等部の頃から集めていた。

 小説版つるタマは皇太子とその婚約者であるロザリアが転校してくるところから始まる。二人以外のキャラクターがいつから学園に在籍していたのかは不明だ。

 攻略男性キャラはもちろんのこと、ライバルキャラ、サブキャラ等々。つるタマに出てくるキャラが在籍していないか、入学してこないか、転校してこないか。私は記憶にある限りのキャラクターについて調べ続けた。


 結論から言えば、つるタマに出てくるキャラクターは誰一人として学園にはいなかった。


「……なんだ。つるタマの世界に転生したなんて、ただの妄想だったかぁ」


 ほっと安堵して、ちょっとだけがっかりし始めていた高等部一年の終わり頃。それこそ二年にあがる、ほんの一週間前。突然に学園が騒がしくなった。

 一部、例を挙げると――。


「魔法学のおじいちゃん先生が実験に失敗して急逝したとかで、急遽、新しい先生が来たそうよ!」

「きゃーーー! イッケメーーーン!」


「隣のクラスに昨日、転校してきたヤツ! 転校初日で生徒会長選に立候補して生徒会長になりやがったぞ!」

「きゃーーー! イッケメーーーン!」


「二年に転校してきた先輩! 今週末だけで全運動部の練習試合の助っ人をした挙げ句、全運動部の部長に頭下げられて、全運動部の部長になったらしいぞ!」

「きゃーーー! イッケメーーーン!」


「中等部三年に転校してきた子! 転校して早々に高等部の演劇部入団テストを受けて、圧倒的顔面偏差値の高さと演技力で主役の座を射止めたらしいぞ!」

「すでにファンクラブができて、学園内外の女の子数百人が会員になっているらしいわよ!」

「きゃーーー! イッケメーーーン!」


 攻略対象男性キャラだけでこれだ。

 他にも悪役令嬢ロザリアちゃんの取り巻きである赤髪縦巻きロールと紫髪縦巻きロールが家の事情で休学してたけど戻ってきたみたいな雑な設定で登場したり。

 情報通設定のサポートキャラがふさふさパンチパーマの学園長と清楚系保健室の先生の不倫現場をすっぱ抜いて新聞部の部長に収まったり。


 ちなみに代わりにやってきたつるりんハゲ頭の学園長とグラマラス保健室の先生も間違いなくゲーム版つるタマに出てくるサブキャラ……って、どんな超展開だ!

 ただでさえ盛りすぎなキャラクターとキャラ設定を、たったの一週間で回収してんなよ! 数年に及ぶ私の地道な調査はなんだったのか!!


 わずか一週間で出揃ったつるタマキャラクターたちを確認し、私は学園長室前のつるりんとした床に四つん這いになるとガンガンと拳を打ち付けたのだった。

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