第26話 カレン
「こんの、変態ヤロー!」
いつもは蚊の鳴くような声の、王妃の
王妃の代わりに侍女が白雪に駆けよった。
「恐れながら王様、白雪姫は昼食のお時間でございます。なので……失礼致します」
侍女はスカートをへそまで
片手で白雪を抱き、片手で王妃を支えて部屋を出て行った。
扉の外では家臣が気を
王妃をベッドに寝かせ、家臣が立ち去ったあと、侍女は白雪の衣服が汚されていないか確認した。
「お父さま、このカボチャパンツより白いほうが、にあうって言ってた」
白雪は再びバッとスカートをへそまでめくる。
「ああ、そうでしょうね。あの人は純白が好きだから……」
王妃は、嫁いだ日から変態王に見られていた日々を思い出し、
そして、やはりカボチャ柄にして正解だった、自分は正しかったと強く思う。
(あの人はお父様とは違う。お父様は私を唯一の存在として愛してくれた。娘を、その他、大勢と同じ扱いをするなんて……)
この日から、王妃は少しでも白雪の姿が見えないと声を
「白雪! 白雪はどこ⁈」
すぐに愛する我が子の無事を確認しないと半狂乱になった。
勉強の時間だからと言っても、王の元にいるのではないかと疑い、自分の目で確認すると言ってベッドを降り、そして数歩、歩いては力つきる。
王妃が床を
穏やかで優しい、かつての母の姿は消え失せ、
それでも白雪は
「お母さま、明日は遊べる?」
「ええ、遊びましょう」
「……お母さま、大好き」
「私もよ。私の白雪」
しかし、心の平穏を失った王妃の体は、回復の
食べ物を受け付けなくなり、天井を見る日が続いたある日、侍女がこんな話を持ちかけた。
「王妃様。王妃様の
「護衛は王の命令には逆らえません。白雪と2人きりにしろと命ぜられれば……」
「いいえ、王妃様。王の命令には逆らわず、しかし姫を守れる護衛です」
「いったい……」
侍女は、王妃の前に双子の少女を差し出した。
その双子は、絹のような波打つ見事な金髪を腰まで伸ばし、淡いブルーの瞳は見えない部分まで見抜く力を持つような錯覚を覚えさせる。
歳は10歳だと言う。
「美しい子たちね……」
「はい。姫の遊び相手として側に置きましょう。そして、王が姫に近づいたら……」
「この子たちを寝所に送ると言うの⁈ そんなこと!」
王妃は愛する我が子のためとはいえ、他の少女を犠牲にするのは違うと訴える。
侍女はそう言うと思っていましたと前置きをして、2人のうち、ほんの少しだけ背の高い少女を指差した。
「この子、男の子なんです」
「ええ⁈」
美しい双子は二卵性双生児の兄と妹であった。
神々しいほどの美しさに親が髪を切るのをためらい、この姿になっていた。
「王はパンティを脱がせません」
「男の子を
「そうです。年齢的にもドンピシャですよね?」
「そうね……男の子ならば……」
ベタベタをかけられるだけならば、女の子よりは心の傷は浅く済むのかもしれない。
「白雪姫にも、そろそろ同じ年頃の友達が必要です。王が姫に近づいたら、この子が相手をかって出ればいい」
「でも、万が一、気づかれたら……」
「その時は妹と入れ替わればいいんです。王の勘違いですと言い張って、パンティを下ろされることさえ避ければ、姫を守れます」
“姫を守れる”
この一言で王妃は承諾した。しかし、やはり、妹は家に帰そうと侍女に言う。
美しい兄妹を2人とも城に
そんな相手を気遣う言葉に、以前の優しい王妃が残っていたと侍女は目頭を熱くした。
美しすぎる少年は名を問われ、その長いまつ毛を上げて王妃を真っ直ぐに見る。
そして「カレン」と、答えた。
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