第10話 どこまでも足フェチ


(よし、リラックスしたな。あとは……)


「ここに横になって」


 王妃は、まだ口にクッキーを頬張ほおばり、もぐもぐとさせていたが素直にベッドに入った。


 その、よいしょとベッドに登る姿も、もぐもぐと動くほっぺたも、完全に完璧に変態王の好みだった。


 王妃はクッキーのついた指をめながら大人しく待った。


 王はその仕草しぐさにたまらなくなる。


「うひょひょ〜!」


 今まで、けっして少女たちをけがさないように、傷つけないようにと、聖人君子せいじんくんしのように接してきた王は初めて人前でローブの中に手を入れた。


 鼻の下を伸ばしに伸ばし、初夜で行うべき大切なことをすっかり忘れて、自分の趣味に没頭する。


 王妃は幼いながらも、これはなにか違うと気がついた。


 王がなにに夢中になっているのかわからないが、やっと触れて来たと思っても、足首を持ち上げ、足の裏の匂いをぐだけだった。


 変態王は満足気に今日は閉店ガラガラだと、呆然とする幼い王妃を残して部屋の外で待つ家臣に声をかける。


 そして、自分は湯浴ゆあみに行ってしまった。


 王妃を迎えに来た侍女と、念のため初夜が無事に行われたか確認に来た家臣は、ベッドの上で寝巻きも下着もつけたまま横たわる王妃に絶句ぜっくした。


 そして、翌日も王は王妃を寝所しんしょに呼ぶように命令を出した。


 家臣は今度こそは子作りをと念を押す。


 王は「そうだった」と、頭をかきながら、プレゼントを用意したが喜んでもらえるだろうかと、まるで初恋のように頬を染める。


 王は40過ぎた立派なオッサンだが、小さくて可愛いモノをでる乙女チックな心の持ち主だった。そして、けがれを知らない体と心は、王に少年のような印象を与えていた。


 家臣はプレゼントを考えついたとは素晴らしいと褒める。


「あまり高価な物ではないが」


 プレゼントはシルクの靴下だと言う。


 完全に、足フェチの自分のためのプレゼントだった。


 王は、あのモチモチとした足に靴下をかせ、そして、くびれのない足首にリボンが揺れると思うと、それだけで鼻の下がでろ〜んと伸びた。


「お、王様。絶好調ですね!」


 家臣はグッと親指を立て、今度こそは真の夫婦になるだろうと期待した。


 しかし、王の変態度は家臣の想像の斜め上どころか、はるか上空を超えていた。


 夜というには、まだ早い時間に王妃は薄い寝巻きで王のベッドに横たわっていた。


 例のごとく王は幼い王妃にクッキーをくわえさせる。


 そして、少し内股の可愛らしい足の甲を見ながら、プレゼントを取り出した。


「気に入ってくれると良いのだが。その……いてみてくれ」


 そのシルクの靴下は純白で、総レースで作られた手の込んだ物だった。足首にちょこんと結ばれる白いリボンが可愛らしい。


 王妃はなぜ靴下なのかと思うが、王の気遣きづかいは嬉しかった。


 素直にありがとうと笑顔でこたえ、体を起こしてプクプクとした短い指で靴下をつまみ、片方ずつ足をとおしていく。


 ほおはクッキーでモグモグと動き、小さな手は不器用にレースの靴下をつまみ、モチモチの足はシルクのレースをまとう。


 王は膨張ぼうちょうを感じながら、純白の靴下をいた足首をまじまじとながめた。


 ふいに、王妃が片方の足でもう片方の足の甲をいた。


「くすぐったい」


 シルクのリボンがくすぐったかっただけなのだが、その声と仕草しぐさに、王は始めて自分に触らずにてるという離れ技を成し遂げた。


 そして興奮のあまり、また大切な行為を忘れる。


 王妃を横たわらせたまま、王はドアの外に声をかけた。


 満足気な王に呼ばれた家臣と侍女は、またかと再び絶句ぜっくする。


 王妃は王がなぜ触って来ないのか不思議に思うが、侍女も家臣も説明できなかった。


 理由が分からないまま、王妃は侍女に手を引かれて寝所しんしょをあとにした。


 家臣は王にひとこと言わなくてはと、湯浴ゆあみを終わらせた王をつかまえる。


「恐れながら王様。このままでは子をすことはできません」

「ああ、そうだった。すっかり忘れていた」


 王は、スッキリとした顔で頭をかく。


 そして、夕暮れの雲が遠くにいってしまった空を見上げて「彼女たちは、帰ってしまったか?」と、聞いた。


 家臣は信じられないと、あんぐり口を開けて王を見る。


 王の言う“彼女たち”とは、巨大な温室ハーレムで遊ぶ美少女たちをさしていた。


 あれだけ鼻の下を伸ばして満足しただろうに、まだ、所望しょもうするのか。


 これだけの精力を穴にそそぐだけで、〇〇さん家の大家族並みに子宝に恵まれるだろう。ああ、なんと勿体もったいない。


 家臣は、その気持ちを正直に話した。


 王は、うーむと腕を組んで考える。


「穴ねぇ……穴はのぞくモノであって、そそぐモノではないのでは?」


 そそぐんだよ、バカ! と、家臣はあやうく職を失いかねない言葉を飲み込む。


「王妃のおかげでひとつ気がついたことがあってな」


 家臣は、隠れてコソコソと少女をのぞくよりも、生身なまみの女性に触れる快感に目覚めてくれたのかと期待した。


 しかし、グルメを極めた者がゲテモノ喰いに傾倒けいとうしていくのはよく聞く話だが、変態が変態を極めても、さらに上の変態に変化へんげするだけだと家臣は知った。


 実は、家臣は王妃のパンツを無理やり脱がせていたのだが、王は純白のパンティがチラ見したほうが良いと言う。


 せっかく女性に慣れて来たのに、下着だけに興味を持つような救いようのないド変態になってもらっては困る。


 家臣が、あわあわと止める理由を考えていると、王はハーレムに明かりをともせと命令を出した。













《あとがき》

 あれ? セーフだよね……R15守れているよね? 不安……

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