第31話 物語の栞 8 - 7(バチカン関係編)

□バチカン(こちらも脚色やら、色々とフィクションが入っています。)


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□ローマ教皇、クレメンス11世(故人)→トルコとの戦争の大勝利のときに教皇帽(※よくカトリックの教皇が被っている先のとんがったアレです。)をオイゲン公にプレゼントしてくれた。


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□ローマ教皇→今現在の教皇、猊下。ローマ弁、もとい、なまりがキツイ。もちろん、ラテン語は★★★★★(流暢)


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□マルコ枢機卿→財務責任者。なんだかお金の臭いに、ひどく執着のありそうな人。


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スイス衛兵 Guardia svizzera pontificia→今現在もバチカンで護衛任務についているスイスの傭兵。過去のいざこざで、ハプスブルグ家とは、少し引っかかりがある様子。


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聖ヨハネ騎士団Order of Malta→赤に白い十字が走る大団旗と、八つの角のある十字架が大きく配置された黒いマントが目印。地政学上、彼らの拠点であるマルタ島は、オスマントルコとの戦いでの被害も多く、数百年前には、騎士団の八割を失う程の激戦が繰り広げられていたので、戦わずして、トルコを引かせた、に、総長から騎士団全員が興味津々。


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ドイツ騎士団Teutonic Order→正式名称は、『ドイツ人の聖母マリア騎士修道会』(※こちらは、白地のマントに大きな黒十字が特徴)なんだかんだあって、オーストリアに流れ着き、今現在はカール6世の個人的な騎士団。


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□テンプル騎士団→数百年前のフランス王と、巻き込まれ教皇の陰謀で、異端裁判により解散させられ、国によって、逮捕されたりされなかったり、拷問の末に火あぶりにされたり、されなかったりしていたで、ど金持ちな騎士修道会。細々と営業中だった?


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〈 小話:プリンツオイゲン一代記:7 〉


 1686年、勝利をおさめたハンガリーでは、今度は、司令官同士の小競り合いと、罵倒合戦が頻発し、オイゲンのお陰で、なんとかひもじい生活から、一時的に脱出していた、彼の連隊の騎士たちは、「早く司令官帰ってこないかな?」そんなことを願いつつ、あきれるしかなかったが、ブダで激しい戦闘の間、教皇特使として、不眠不休、「疲れを知らない説教師」と呼ばれたマルコ・ダヴィアーノの説教をもってしても、それは収まる気配もなく、やがてオイゲンが送った食料もつきはじめ、またつつましくなった、ひもじいハンガリーの軍隊へ、ようやくオイゲンが戻ると、彼は、司令官の中でも、特に、軽々しくわがままで衝動的、そんな評判であった男の下で、再び迫りくるオスマントルコと、戦うはめになっていた。


「あちゃー司令官、今度は、思いっきりハズレましたね……」

「最善を尽くそう……」


 そうして、ハンガリーのブダは、再び戦火に巻き込まれ、竜騎兵を率いていたオイゲンは負傷するも、部下たちには「イェニチェリYeniçeriには、いかなる情を、かけるべからず!」そう厳命し、果敢に奮戦していた。


 キリスト教徒であったにもかかわらず、改宗してオスマントルコの兵士となった彼ら「イェニチェリYeniçeri」は、オイゲンや、その他キリスト教徒たちにとって、許されざる存在であった。


 血で血を洗う……もはや、そんな様相にすら見える、凄まじい戦いがようやく終わり、皇帝軍の勝利のあと、生き延びたイェニチェリYeniçeriは確認できず、見つかった他のトルコ兵たちも、皆殺しにされた。これは非情な行為に思えるが、当時としては、当然の処分であった。


 ブダでの勝利のあと、皇帝軍は、勝利に勝利を重ね、オイゲン自身はドナウ川を下って、ハンガリー南部まで進撃し、初冬を迎える頃、ようやくウィーンへ帰還していた。大勝利である。


 しかしながら、それからも、オスマントルコや、時代によって、様々に変わる敵との困難な戦いは続いたが、オーストリアに従軍して以来、彼は決して敗北しなかった。


『オイゲン・フランツ・フォン・サヴォイエン=カリグナン』


 パリで、母の愛も得ずに生まれ、わずかな路銀を手に、親友とフランスを脱出し、ボランティアで、オーストリア軍へ、なんとか仕官させてもらった。


 そんな、冴えない風貌の青年は、ありとあらゆる苦難と試練を乗り越え、賄賂など決して受け取らず、清廉潔白なまま、実力で出世に出世を重ね、ついにはオーストリア軍の頂点まで上り詰め、いろいろと増えた収入をコツコツと貯め、いつしか芸術の保護者にもなり、ヴェルベデーレ宮殿も建てていた。


 彼は、今現在も独身ではあるが、先々代、先代の皇帝に引き続いて、現在の「神聖ローマ帝国皇帝」オーストリア大公、カール6世にいたるまで、三代に渡ってハプスブルク家に仕え続け、このお話では、無事に育ち、自分の後継者でもある、たったひとりの近しい血縁にある甥と、その家族に包まれるように、暖かい家庭を手に入れ、未来の希望、ハプスブルク家の次期後継者、「マリア・テレジア・ヴァルブルガ・アマーリア・クリスティーナ・フォン・エスターライヒ(改)」を教育し、育てているのである。


「若い者には、まだまだ負けんよ!」


 それが口癖の彼であったが、窓からぶら下がって降りた先には、いつも心配そうな顔で、甥のザヴォイエン公子、そして甥の妻フェリスが、騎士たちと一緒に、こっそり見守っていた。


「叔父さま、一体、いつまで、あんなことを続けるおつもりかしら……」

「…………」


 心配になって、しょっちゅうヴェルベデーレ宮殿へ通っている甥夫婦は、彼の乗る馬のあとをつけ、オイゲン公が、無事に帰ったのを確認してから、自分たちが暮らす、リヒテンシュタイン宮殿に帰って行った。


「御伽噺の王子さまには男の子」は、いつの間にか、「欧州の影の皇帝」となっていた。


 彼の戦いは、先行きの分からないままに、まだまだ続く……。そして、本編のお話の中では、なぜかまだ58歳である。


 影の皇帝は、知らぬ間に、時の女神ですら、従えていた……。

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