第2話 旅行先で…

お盆初日で人が多い…それに夏だからすごく暑い…そしてなによりも眠い…何せ昨日ずっとボディタッチくらってたんだもん!お腹周りとか足とか…やめてって言ってもやめてくれないから南雲さんの方を向いたら爆睡してるし!なに!?無意識でやってるの!?っておもったわよ!バスの揺れで気分が少し悪いし…そんなこともつい知らず私の方を見た南雲さんが心配そうにしている。


「しんどいかな?どこかで休む?」


「ううん…大丈夫…あと南雲さんは抱き枕を買うこと…」


「だ、抱き枕?なんで?」


「いいからっ!」


そして気になっていた旅行の内容を聞こうとすると…ここだよ!と言われて降りた。いや、バスに乗ってて海沿いばかり走ってるなぁって思ってたけど…


「海ぃぃぃ!?」


「そ、海だよ。」


「なんで海?」


「海デートしたこと無かったなぁって思ってさ。」


確かに映画をみにいったり山を登ったり、ショッピングしたりはあったけど海はなかったかな?


「水着も借りれるらしいからさ…どうかな?」


「え!?水着!?」


いやいやいや!こんな四十代のおばさんが水着なんて着てたら周りから変な目で見られるわよ!!


「着よう!」


「着ないから!」


「着よ…」


「着ない」


「着…」


「着ない!!」


ーー

「……」


「せっかく着たのになんの感想もないの?」


「あ、ごめん!すごく似合ってて可愛い!まさか黒のビキニとは思ってなくて…」


「こ、これしか無かったの!私自身が選んだわけじゃないからっ!」


「南雲さんもよく似合ってるわよ。」


「ありがと、じゃあ行こっか。」


こうやって自然と手を握ってくれるところ…若い時から全然変わってないなぁ…

それからしばらく浅瀬で水をかけあったり浮き輪を借りて深いところに行ったりと歳も気にせずに遊び呆けた…数時間たった時お腹がなったのでお昼にした…海の家の焼きそばってなんでここまで濃いんだろう…と思いながらも何故か箸が止まらない…不思議なものだ。


「ちょっとお手洗い行ってくるね。」


「うん。」


食べて少し休憩した…あ、かき氷ある!南雲さんにも買っていこうかしら!財布を持って並んでいると…


「ね、お姉さん!」


「ひゃっ!な、なんですか?」


「うわっ、可愛い…お姉さん俺たちと遊ばない?」


男二人組に声をかけられてしまった…これってナンパ!?海と言えばだけど私みたいなおばさん狙う普通!?


「ごめんなさい…私、夫とデートしてるの。」


「え〜!旦那より絶対俺たちの方がいいって!」


少し強引に肩に手を回されてぐいっと男の方に寄せられた!その際自分の胸が男の胸板にあたって思わず「んっ♡」って変な声が出てしまった…男の人ってこんなに力あるんだ…ってそんなこと言ってる場合じゃない!


「…私四十過ぎのおばさんよ?声をかける人には気をつけた方がいいわよ?」


「四十!?全然見えないんだけど!?」


「てか、むしろ四十って聞いてさらに遊びたくなったわ!」


逆にエロくね?と言われていて…そういうのって私に聞こえないように言うもんでしょうが…


「もう、お世辞をいってもついて行かないわよ?」


「いや、お世辞じゃないですって!」


そろそろしつこいなぁ…それにさっき肩を掴んでた手が腕に回ってスリスリされてるし胸ばっかり見てるし…ハッキリ言わないと!


「おい、うちの奥さんに何やってんだ?」


大声で叫ぼうとすると後ろから南雲さんがやってきた…今まで見た事がない怖い顔をしていた。さすがの男二人も後ずさった。


「お、おい…いこうぜ」


「お、おう。」

ーー

「ご、ごめんなさい…」


「佳奈美は何も悪くない…俺が一人にしたせいだ。」


「ち、違うの…私…こんなおばさんになったけど若い人に四十に見えないって言われたから…もし本当にそうなら少しは南雲さんに振り向いてもらえるかなって…」


「佳奈美…」


「な、南雲さん!?」


ガシッと手を掴まれてシャワールームへ連れていかれて壁まで追い詰められた…昨日と同じくらい心臓がドキドキしてる…


「どうしたら佳奈美への気持ちが伝わるんだろう…」


「南雲さん…?」


「昨日も言ったけど、俺我慢してるから…いや、我慢してるから佳奈美が自信をなくしてしまっていたのか…やっぱり強引にでも昨日しておくべきだった…」


「南雲さん…えっと…」


そう言うとよしとなにか決心したように真剣な顔で私の顔を見てきた。


「佳奈美…いい?」


「ええっ!ここでは…」


「もう我慢できない…」


ええっ!というか水着越しでもわかるくらいたってるし!!どうしよう…このままだとここから出られないし…こんなところでしてたら絶対周りに声聞かれる!


「南雲さん!」


「は、はいっ。」


「…えっとホテルでいっぱいしてあげるから…それまで我慢して…」


「う、うん…」


そういえば若い時もあったなぁ…男子トイレまで連れていかれて…その時もこう言ったら収まってくれたし。


「す、すみません…こ、怖かったですよね!」


まるで会社でミスをしたみたいに綺麗な九十度謝罪を見てびっくりしてしまった!


「い、いえ!私こそごめんなさい…。」


その後海に戻ろうとも考えたがまたナンパされたら嫌だしこれ以上他の男に佳奈美さんの水着姿を見せたくないということでそのままシャワールームで土や汚れを流すことに…


「んっ♡もう!南雲さん!」


「す…すみません…。」


腕を洗うのを装って私の胸に触れていたので思わず怒ってしまった。別のシャワールームを使えばよかったのだが南雲さんにどうしてもと言われたから…。


「まぁ、私も嬉しいからいいけど…」


「なんかいった?」


「なんでもない。」

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