4.男の運命
「提案、だと?」
「ああ」
黒フードは下卑た笑いをしながら、続ける。
「俺は腕に自信は無いが、逃げ足には自身のある「Dランクの魔術師」だ。このクエスト、俺と組んでパーティで受けないか?」
「・・それに、どんなメリットが俺にある?」
男は不信感あらわに尋ねる。
「剣士の兄さんと魔術師の俺が組むんだ。勝つ見込みは少しは上がるだろう?」
「そしてもし、それでも兄さんがやられちまった場合。悪いけど俺はとっとと逃げて、兄さんの勇敢な最期をそれっぽくギルドに伝えてやる。
そうすれば保険金も上がる可能性が高い。」
黒フードはなんてこと無いように言う。
「ちなみに俺が関わるメリットは、さっき言った保険調査員の仕事が楽になるからだ。目撃証言には見返りが出る。そういうことさ」
なかなかに愚劣極まりない話。だが、何でもないような口調は逆に信用できた。行動の是非はさておきだが。
「あ、それに達成した場合の報酬は、俺の方がランクが高いから6:4・・と言いたいが、こちらから言ったことだからな。
今回は特別に5:5にしといてやる。それでいいだろ?」
達成時の取り分まで勝手に決める黒フード。だが、それはあり得ない事と男は考えず、
「・・・本当に、その方が多くの保険が手に入るんだな?」
疑われる形で念を押された黒フードだが、逆に心持ち満足そうに返した。
「いいねぇ、怪しいからと切って捨てず、しかしすぐには信じない。今更かもだが、兄さんいい冒険者になれるよ?」
「茶化すな。答えろ」
全てを賭けている男は揺るがない。その姿勢に、黒フードも真剣に返す。
「・・悪かった。保険調査員の中には、真偽を見抜けるレア魔法を持つ者もいると聞いている。」
「だから、嘘をつけば俺も罪を問われる。兄さんが真剣に戦いに挑む限り、その最期をできうる限り忠実に伝えることを約束しよう」
「・・・自身のために?」
「ああ、俺自身の保身のためにだ」
黒フードはきっぱりと、自分の身を守るためと言った。
もしこれを、少しでも黒フードにとっての「見知らぬ男のため」などと言おうものなら、男は取り合わなかっただろう。
だが男は、「自分が儲けるため」と言った。それが逆に、
(これもまた、俺の運命なのかもな・・・)
「・・・わかった。あんたの提案に乗ろう。」
「・・・・・俺と言う剣士の最後を見届けてくれ」
「・・・ああ」
剣士と魔術師は、Cランク級の魔獣のいる元へ向かった。
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