第36話

2035/11/25(日) 深夜三時二十五分 邸宅・客室ロビー 長良ながら・ウィル・ラウ


 軽攻撃ヘリを落としてから少し静かになった、邸内に進入できない状態にあるというのも、功を奏しているように思えた。


 庭の側もウチの者のほうが優勢でことを進め、庭の中央に侵入者を追い込んでいる最中である、という連絡も入って来ているのだ。


「アレで終わりだと思うか?」と俺が聞いた、ラウが答えた「まだじゃないかな、奥の手を見てないからな」と暗に妖魔あやかしを見ていないといった。


 検非違使けびいしも突撃中だと思えた、ただ作戦開始からほぼ三時間半がたとうとしている、成果は上がっているはずだった。


 その時加藤さんから連絡が入った「検非違使はミッション自体が終了したが一匹、堕天使の取り逃しがあるそうだ各位注意せよ!」とのことだった。




2035/11/25(日) 深夜三時五十分 邸宅・客室ロビー 長良・加藤かとう折神おりがみ・ウィル・ラウ


 妖魔の気配がしたほうを見た、堕天使だった、ただ片翼が見えない、静寂がその場を支配した。


 俺はその静寂を払うべく、「霊視!」と術を唱えた、もう片方の黒翼が見えた。


「そいつは飛べるぞ」と伝達しながら霊太刀を左片手で抜いてフダを右手で持った、皆がそれぞれ武器を構え固まらずに散りながら包囲した。


“ガラガラ”といわし、壁の穴を拡張しながら入って来た、だが包囲陣は張られている。


 そいつは余裕があるようだった、だが逃げればいいのに、なぜここに来たのかが分からなかったが、自爆覚悟の報復……ソレしか考えられなかった。


 皆に伝わったのか、皆自身の得意位置に移動していく、ラウが前進し加藤さんと折神が後退した、ウィルは後退しながらC号室の扉前を確保、ガードした。


 俺はどの位置でも行けるので、ラウと反対側に太刀を構えながら展開した。


 ツートップスリーバックの態勢だ、堕天使はラウを気にかけながら俺のほうを向いた。


 青龍刀と銃だけだなと思ったのだろう、俺は自身に雷をまとった、堕天使が若干後退する。


 ラウのバックには加藤さんがモーゼル新旧二刀流で構えている、俺の後ろには折神が黒と銀のM29二刀流だ、その後ろにウィルがPDWを構えているそんな状況だ。


 ラウは気を練り上げている、いつでも行けるぜとチラリと視線が飛んできた。




2035/11/25(日) 深夜三時五十分 邸宅・客室ロビー 長良・加藤・折神・ウィル・ラウ・慎悟しんご


 邪魔が入った、「コレでもくらえ!!」という声と共に慎悟が北側から357マグナムで撃ちかかったのだ、二連射して前進してくる、その姿は痛々しい包帯だらけだ。


 堕天使に当たるも鉛弾であるためか、気にも留めない堕天使。


「てめえは寝てろ!」と俺はいいながら堕天使に「八雷招来ハチライショウライ!!」と打ちかけた、だが素早く飛んで回避した上、慎悟のほうに滑空し、ダブルキックを慎悟に見舞ったのだ。


 とんでもない膂力りょりょくだと思った。


 慎悟が北側に吹き飛んで壁に叩きつけられズルズルと座り込んだ、俺らは展開位置を北側に変え攻撃を開始した。


 折神が撃ち込んだ一発づつ、流石にそれは痛かったのか、表情が憤怒の形相に変わった、それを見たラウと俺が突っ込んだ互いに逆方向から斬り込む。


 堕天使はそれを、それぞれの手で留めた、だが受け止めた先で青白いスパークを放っている、効いてもいるのだ。

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