第31話

2035/11/25(日)  午後九時 邸宅・客室ロビー 長良ながらアイ香織かおり・ウィル・ラウ


 ウィルが「久しぶりに、味気ない夕食から逃れられました。ありがとうございます」と、俺にいった。


「気にすんなって、できるやつがいたからやってもらっただけだから」と答えを返した、ここのコックたちは、擬体料理・調理許可証を取得しているのである。


 ようは、コックとしての特殊免許を持っているのだ。




2035/11/25(日)  午後九時 邸宅・客室ロビー 藍・長良・香織・ウィル・ラウ


 ウィルさんが嬉しそうに「久しぶりに、味気ない夕食から逃れられました。ありがとうございます」と、長良さんにお礼をいった。


「気にすんなって、できるやつがいたからやってもらっただけだから」と返したが、普通にやって出来る事ではない、仲間のことを考えていなければ見過ごしてしまう様な細い穴なのだ。


 それができるからイケメンなのかもしれない、そう思った。




2035/11/25(日)  午後九時 邸宅・車寄せ 加藤かとう折神おりがみ


 検非違使けびいしの装甲バンが三台、真ん中の車両が邸宅玄関の車寄せにつけていた。


「これが封鎖地区の内部地図だ」と私はいって、二班班長衣笠きぬがさに運搬トランクを渡した。


「三時間後の突入作戦に、使わせてもらいます」と衣笠は私に向かって敬礼した、そして装甲バンに乗り込んでいく。


「頼んだぞ!」と私はその背中に声をかけた。




2035/11/25(日)  午後九時十五分 邸宅・客室 藍


 色々あったけど一日が終わろうとしている、私は風呂に入るべく準備を整えていた。


 ふと窓の外に気配を感じた、黒翼が見えた、私は逃げたロビーに向かって。




2035/11/25(日)  午後九時十五分 邸宅・客室ロビー ラウ・藍


 偶々ロビーには、俺が行水を終えて休憩していた。


 B号室のドアが荒々しく開いた、そして藍が飛び出て来た、ただそれ以外に妙な気を感じた。


 その奇妙な気配は、藍の後から現れた黒いスーツの男から出ていた。


 藍は俺のほうに向かって来て「黒い翼がっ」といった、そいつを見たが俺の目では捉えられなかった。


 つまり妖魔あやかし絡みらしい、俺は藍とそいつの間に入り、挑発を試みた“俺にかかってこい”と手で来い来いといったのだ。


 そいつの気配が変わった、俺に気配を向けて来た、やる気らしい。


 気を両の拳に込めた。


 そいつが殴り掛かってくる、が動きは格闘技は素人だなと思い、そいつの拳を右に体だけスッとかわしながら黒服のアゴを右の手で左頬を突いた。


 その瞬間黒服が左に吹き飛んで壁に激突した、俺はまだ黒服と藍の間に居て、構えを解いてない。




2035/11/25(日)  午後九時十五分 邸宅・客室ロビー 藍・ラウ


 偶々ロビーには、ラウさんが休憩していた。


 私はラウさんのほうに走り込み「黒い翼がっ」といった。


 ラウさんが察したのか私と黒い翼を持つ黒服との間に入ってくれた、そして手で来い来いといったのだ、挑発を受けたのかその黒い翼を持つ黒服は私から視線を外しラウさんのほうを見た。


 ラウさんが構えた。


 黒い翼を持つ黒服がラウさんに殴り掛かった、次の瞬間黒い翼を持つ黒服が左に吹き飛んで壁に激突した“ドガッ”と派手な音を立てた、ラウさんはまだ黒い翼を持つ黒服と私の間に居て、構えを解いてない。




2035/11/25(日)  午後九時十五分 邸宅・客室A号室 長良


 俺は行水を終え、部屋で冷えた強炭酸無糖を飲んでいた。


 外でロビーから“ドガッ”という派手な音が聞こえた。


 俺は傍に置いてあった、姫鶴一文字の摸擬刀(霊刀)を持ち部屋から出た。


 藍とラウが見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る