第30話

2035/11/25(日)  午後六時二十五分 邸宅・客室ロビー 長良ながらアイ香織かおり折神おりがみ加藤かとう・ウィル・ラウ


 俺たちがA号室から出ると、ロビーのソファーで親し気に会話する香織と藍が目に入って来た。


「無事のようだな」と折神がいった。


 こちらを見つけて藍が駆け寄ってくる、香織はこちらを向いた。


「さっきはありがとうございました、倒れてしまってごめんなさい」と藍はいった。


「いや、アレは初めての人には辛いもんなんだ、こちらこそすまない、加減が出来なかった」と俺はあやまった。


妖魔あやかしの血臭っていうのは、軽い毒に近いものなんだ、慣れているものには、ただの臭いだが……」と俺は語尾を濁した、できれば藍には慣れてもらいたくないそう思ったが、それは……。


 と思っていると、ラウに肩を叩かれた、ラウは目で語った“仕方ねえよ俺らとは住んでる世界が違う”というふうに。




2035/11/25(日)  午後六時二十五分 邸宅・客室ロビー 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 私と香織さんは昨日よりも近い距離で話せるようになっていた。


「無事のようだな」と声が聞こえた。


 A号室の前にいる長良さんを見つけて、「お礼言ってくる」と香織さんにいって長良さんに向けて少し走った。


「さっきはありがとうございました、倒れてしまってごめんなさい」と私はいって思った、真剣に命を懸けて戦ってくれた人たちの前で気を失ったのだ。


「いや、アレは初めての人には辛いもんなんだ、こちらこそすまない、加減が出来なかった」と長良さんはあやまった。


妖魔あやかしの血臭っていうのは、軽い毒に近いものなんだ、慣れているものには、ただの臭いだが……」と長良さんは語尾を濁した、何かあるのかな? と思わせた。


 長良さんの後ろにラウさんが来て肩に軽く手を乗せるように叩いた、そして長良さんとラウさんが少し目を合わせたようだった。


 男同士の会話といったふうだったが、ラウさんは何もいわなかった。




2035/11/25(日)  午後六時三十分 邸宅・ダイニングホール 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 三分前にはメイドさんが夕食だと呼びに来て、私たちはダイニングホールに通された。


 食卓は角型ではなく大きな楕円形だった、下座のお誕生日席にウィルさんが楽しそうに座った。


 私の左隣は香織さんで正面は長良さんだ、私は上座に座らせてもらっている、はす向かいに加藤さんが座っていた、その右隣は折神さんでその向かいがラウさんだ。


 長良さんから説明があった、フォーマルなフレンチとのことである、何がフォーマルなのかは分からないが凄そうだ。


 アミューズといわれる突き出し(お通し)が出て来た、スモークサーモンのようである。


 薄くはなく厚く切り出してある、ソースがレモン味だった、すごく美味しい。


 今までに味わったことのない味が、口の中を支配していく。


 前菜・オードブルが来る、鶏むね肉のテリーヌが出て来た、これも味わったことは無い味だ。


 スープはかぼちゃのポタージュで秋らしい一品となっていた。


 魚料理・ポワソンは舌平目のムニエルで美味しい。


 口直し・ソルベにソーダのシャーベットが出て来た、新しい感覚だシャーベットが溶けると同時にはじける。


 肉料理・アントレが和牛フィレ肉のレアステーキだった。


 ソースが絡んで美味しい、お肉も柔らかい。


 デザート・デセールとしてクレームブリュレが出て来た、これも美味しい。


 カフェ・ブティフールにデミタスコーヒーとタルト・タタンが出て来た、これも私の語呂力では表現しきれないがとても美味しい。


 そうして夕食の時間は終わった、私も楽しくて美味しかったが、ウィルさんが楽しそうに夕食を食べているところを見れた。

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