第28話

2035/11/25(日)  午後三時三十一分四十秒 邸宅・テラス 長良ながらアイ香織かおり折神おりがみ加藤かとう・ウィル・ラウ


 俺は鬼神で止めを刺しに行った、鬼神の手刀で斬った。


 一撃で斬れ、ぬえの胴が前後に分かれた。


 それを式の目で確認すると、不動陣の集中を解き、式神をフダに戻した、鬼神を維持するのは疲れるのだ。


 折紙は空薬莢やっきょうを落として、スピードローダーで新たな弾を入れていた、折神も弾は尽きたらしい。


 ラウも空になった弾倉を引っこ抜いてポケットに納め、M11A2を元の位置に納めた。


 香織は剣をナイフサイズまで戻しシースに入れたようだった。


 ウィルもナイフを拭ってシースに入れたようだった。


 加藤さんも九ミリ弾を上から五発入れて、モーゼルを収納したようだった。




2035/11/25(日)  午後三時三十一分四十一秒 邸宅・テラス 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 血臭がもの凄い、私はあまりの血の匂いに眩暈めまいがして、立眩たちくらみがしふら付いたところを長良さんに抱き留められた。


 天を見ると、空は群青色に戻っていた。


 空を見たのを最後に、私は意識を失った。




2035/11/25(日)  午後三時三十二分 邸宅・テラス 長良・藍・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


「血臭で気を失ってしまったか、無理もない少しやりすぎたかな?」と俺は藍を抱き留めたままつぶやいた。


「あれはやりすぎよ、でも一撃で止めが刺さってくれたおかげで、助かりもしたわ」と香織が背後に来ていった。


 その時だったメイドが近くまで来ていった「義之よしゆき様、門の前に血だらけの人が倒れており、これを義之様にと渡して気を失われました。今ドクターが、傷の具合を見に行ってます」といってVDを二枚渡された。


「俺も行こう、怪我人のところに案内してもらえるか?」と加藤さんがいった。


 そのメイドが「こちらです」と加藤さんを足早に案内していく。




2035/11/25(日)  午後三時三十四分 邸宅・門前 加藤・ドクター


「こっちのもかなり血が匂うな、ドク手伝おう」と私はいった、ドクがいう「派手に血が出る部分しか斬られとらんが、止血をせんと不味い」と。


「私がやろう」といって近づいて傷の上に手をかざし大治癒ビッグヒールと静かに唱えた。


 私が手をかざした部分の傷が消えていく一応表側と背面側を治療した。


「ドク、輸血パックと他の感染症対策を頼んだ、それとコイツの部屋は病室で頼む」と私がいうと、ドクはいった「相変わらず、すごうございますな、先生の御業は」といわれてしまう。


 少々くすぐったい感覚が沸くが、メイド二人が担架を持って来てその上に寝かすと、病室側にドクとメイド三人が行った。


 私も皆のところに戻るべく、部屋のほうに行った。


 ロビーに皆集まっていた、藍と香織がいないだけだ、部屋にでも入っているのだろう。




2035/11/25(日)  午後三時四十分 邸宅・客室ロビー 長良・折神・加藤・ウィル・ラウ


「長良、藍の様子は?」と加藤さんから聞かれた、それに「香織に追い出されてしまいました」と答えた。


「香織が見ているなら、大丈夫だな」と返答が返った。


 折神がいった「アイツはなんだったんだ獣のように感じたが」という、ウィルもそれに乗った。


「あれが有名なぬえだ、俺ら倒した奴らに数えられちまうぜ」といって口角を吊り上げた。


 そして検非違使に加藤さんが電話して、解析一班と回収一班が動員され、邸宅の庭は元に戻った。




2035/11/25(日)  午後五時五十五分 邸宅・客室B号室 藍・香織


 私はかすかにお香の炊かれている部屋で目覚めた。


 部屋は私の客室だ、私の隣に香織さんの心配そうな顔がある。


 声を出そうとしたが、声にならなかった。


 夢は見たような覚えがある、でもどんな夢なのか思い出せなかった。


 私の顔を見て香織さんの表情が和らいだ、そして呟いた「よかった」と。


「私は……」とようやく声が出た、時計は五時五十五分を示していた。

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